40. 真夜中の死闘
ロデンブルグに向かうために鉱山の洞窟を抜けてきた私たちは近くの街『エルランド』の街にたどり着く。しかしそこはすでに魔物の襲撃を受けて廃墟と化していた。
とりあえず私たちはこの『エルランド』で休めるところを見つけ一晩明かすことにした。街の周りには罠を仕掛けた。これで万が一魔物の襲撃にも備えられるだろう。
「エステルさん。どうぞ。暖かいスープです」
「ありがとうレミーナさん」
「エステル。良く食べて寝ておけ。見張りはオレがやってやるからよ。キルマリアとリーゼも食べて早く寝ろ。」
「ほーい!」
「うん!一緒に寝ようねエステルちゃん!」
「……リーゼと一緒は勘弁してほしいかな……。」
「えぇ!?なんで?」
リーゼと一緒に寝たら寝ぼけて骨とか折られそうだし……。私はそう思いながら目の前に置かれたスープを口に運ぶ。暖かくて美味しい。野菜や肉の入ったスープはとても優しい味がした。
これだけ美味しい料理が作れるんだからレミーナさんも『妖精の隠れ家』で作ればいいのに。
そして私たちは交代で眠りについた。見張りはゲイルさんとレミーナさんだ。私とキルマリア、リーゼは先に眠らせてもらった。疲れていたのかすぐに眠ることができた。
それからどれくらい時間が経っただろうか?ふと目が覚めてしまった私は水でも飲もうかと思い起き上がる。すると隣ではキルマリアとリーゼがまだスヤスヤと眠っている姿が目に入る。二人を起こさないようにそっとベッドから抜け出すと私はキッチンへと向かう。
「あぁ起きたのか?」
「あっいえ……少し喉が……」
そんな時、街の外から大きな轟音が鳴り響く。これは……私が仕掛けた罠魔法だ。どうやら何かが引っかかったようだ。
「ゲイルさん!」
「レミーナ。キルマリアとリーゼを起こしてこい。」
「はい!」
私は急いで索敵をする。すると私のスキルに魔物の反応が現れる。かなり数が多い……それにかなりの大物もいるみたいだ。
「どうだエステル?」
「かなりの数。魔物の大群が来ます!!おそらくこの街を襲った魔物たちかもしれません!急いで準備しましょう!」
起きてきたキルマリアとリーゼに状況を説明する。そして私たちは急いで戦闘の準備を整え、外に出る。ちなみにレミーナさんには中で待ってもらうことにする。というかこんな真夜中、しかも極寒の寒空の中に来なくても……とか魔物に文句を言っても仕方ないけど。
「ったく。こんな真夜中なのによ。まぁ前哨戦と行くか、作戦はエステル、お前に任せる。」
「ゲイルさん戦えるんですか?」
「オレの事は気にするな。お前の作戦通りには動いてやる」
「分かりました。作戦を説明するわ。私たちがいるここが最終ライン。ここを突破されればレミーナさんも危ない、ここを死守する。前衛はキルマリアとリーゼ、私が罠魔法を仕掛けるから足元には注意して動くこと。ゲイルさんは2人のフォローをお願いします。」
「任せなさい!」
「了解だよエステルちゃん!」
「おう」
私は魔物が来るであろう方向に何ヵ所か罠魔法を展開する。これでしばらくは持ちこたえられるはずだ。
そして大きな地響きとともに魔物の軍勢が押し寄せてくる。その数はゆうに100を超えていた。これが全部魔物なのか。私はゴクリと唾を飲み込む。
しかしここで怖気付いてはいられない。私は深呼吸をして気持ちを整える。
「さぁ……みんな行くわよ!」
こうして真夜中の死闘が始まるのだった。