5. 水不足解消します
そのまま少し歩き、私とエイミーは村の中心にある広場にやってきた。ここは井戸があり、水汲み場にもなっている。他にも子供達がよく遊んでいる場所でもある。そんな場所になぜ私を連れてきたのか。そこには1人の男性がいた。
「おじさんお待たせ!」
「おおエイミーちゃん。その人がなんとかしてくれるのか?」
「うん!もちろん『なんでも屋』に任せてね!」
何も聞かされていないのだけど?ここは働き方がブラックですか?すると男性が私に向かって話す。
「お姉さん。あそこに大きな貯水タンクが2つあるだろ?最近雨が降らなくて、この村の水がなくなりつつあるんだ。助けてほしい」
なるほど。水を運んで来てくれということか。それならばできるかもしれない。
「あの水場まではどのくらい離れてるの?」
「かなり山を下らないといけない。だから困ってるんだ。大人の男複数人いても水場に行って戻ってを繰り返して、あの貯水タンクを満水にするには1週間はかかる」
「人手は多い方がいいよね?私と一緒に運ぼうアイリーン!100往復位すればイケるって!トマトみたいにパパっとやっちゃお!」
はぁ!?今なんて言った?100往復?しかもトマトのようにってどういうことよ!でも……やるしかなさそうだし……水がないのは危機的状況だろうし。でも待って?私は周りを確認して地面を触る。なるほど。これならいけるかもね。凄くやる気になっているエイミーに私は伝える。
「エイミー。張り切ってるところ申し訳ないんだけど、レイダーさんを呼んできてくれない?あの貯水タンクに水を貯めるわ。ついでにそこの井戸、あとはそこら辺にある水路にも水を貯めてあげる……魔法でね?」
これが私の初仕事になるのか。今まで魔法で人助けをしたことはないし役に立てるのなら悪い気はしない。自分のやりたいことか……そこには『なんでも屋』も悪くないなと思い始める私がいる。
そして、エイミーはレイダーさんを呼んでくる。私はそのまま合流し、2人と共に山を少し登り始める。しばらくすると、かなり開けた場所に出た。私は大きく深呼吸する。うん。ここならマナも豊富だしイケるわね。
「あのさアイリーン!水場は山の上じゃないよ?」
「知ってるわよ。あのレイダーさん、あそこにある岩なんですけど、持ち上がりますか?」
「ああ?あれか、ちょっと待っててくれ」
するとレイダーさんは近くにあった大きな岩を持ち上げる。軽く持ち上げたように見えたけど、かなりの重さがあるはず。本当に持ち上げたわ……すごい力持ちね……
「重さはどうですか?」
「問題ない。あともう少し重いのも持てる」
「分かりました。さて準備を始めるわ。2人とも少し離れていて」
私は解析魔法『サーチ』でその岩を調べてみる。うん。やっぱり思った通りだ。この山全体に薄くだが魔力が通っているようだ。これなら、あの魔法も使えるだろう。
私が準備を始めると、後ろから2人が覗き込んでくる。まずは地面に手をついて魔力を流し込む。そして、その手を中心に直径1m程の円を描くように魔法陣を錬成していく。
「おお!青い光が地面に刻まれてる!」
「これが魔法陣か。間近で錬成されるのは初めて見たな」
そして最後に魔法を発動する。するとさっきの岩と同じ大きさ、質量の水魔法の大玉がその魔法陣から浮かび上がってくる。
「おぉ~!!凄い!!」
「これは……これがアイリーンの魔法なのか?」
2人は驚いているようだが、説明する暇はない。今のうちに水球を大きくしてしまおう。さらに、5倍くらいの大きさにする。うん。これぐらいあれば大丈夫かな。
「すごいすごい!大きくなったよ!?」
「さてこれを運びましょう。あの貯水タンクの大きさから考えればこれをあと10個ほど作る必要があるから、2人は先に村へ運んでおいてくれないかしら?」
「運ぶって?こんなの持てないよ?」
「大丈夫。割れないように風の魔力の膜でおおっているから。転がしても問題ないし、レイダーさんは持てるように質量を調整してますから」
「すごいな。わかった。エイミー運ぶぞ!」
2人はその水魔法の大玉を運び始める。私はその後も魔法で水をどんどん作り出していく。私は自分の魔法で……村のみんなの為になっていることに、どことなく嬉しさを感じていた。