6. 迷い ~アティ視点~
私とミーユさんは依頼の北のザルガン洞窟に向かって歩いています。でもミーユさんが歩くのが早くて少し困ってますけどね。
「アティ大丈夫?」
「待ってください~。ミーユさん歩くの早いですよ」
私は小走りで追いかけながら言うと、急に止まったミーユさんが振り返りました。
「私は普通だと思うんだけどな。まぁいいかゆっくりでも。というかそっちのほうが助かるかなぁ。早く依頼が終わると皇女探ししないといけないもんね……」
そういうミーユさんの横顔はとても寂しそうに見えました。私はパーティーの中では最後に加入したので皆さんとは付き合いは少しだけ短いですけど、皆さんの事を仲間だと思う気持ちは同じだと思ってます。
「あ!あれじゃない?北のザルガン洞窟って!」
ミーユさんの声にハッとして前を見るとそこには大きな穴がありました。その奥には光が見えています。
「ここを降りれば良いんですよね?」
「うん。そうみたい」
やっぱりこのままじゃいけない。私はミーユさんに聞いてほしいことがあるんです。私はその場で立ち止まる。
「ん?アティどうしたの少し休む?」
「ミーユさん。その何を迷っているんでしょうか?」
「えっ……?」
「私はミーユさんの事よく知りませんし、個人的な事は詮索することじゃないとも思っています。でも今のミーユさんはいつものミーユさんじゃない。何かに迷っていてとても苦しそうです。そんな時に仲間なのに力になれないのは悲しいです。もちろんエルンさんもブレイドさんもそう思ってくれているはずです。」
私はミーユさんに今の思っていることをぶつける。私がギルド冒険者になったのは困っている人を助けたいという気持ちから。それなら同じパーティーの仲間のミーユさんも救いたいと思うのは当然です!
するとミーユさんは目を大きく開いて驚いた顔をしていまいた。そしてすぐに下を向いて黙ってしまいました。でも少しの沈黙の後、私の想いを聞いたミーユさんは唐突に意外な事を話してきました。
「アティ。私ね……エルンと出会うまで私の事を認めてくれる人って
「ミーユさん……」
ミーユさんは目を瞑り服の中にいつも身に付けている、おそらくペンダントらしきアクセサリーを握りしめながら私に話している。それはまるで誰かを思い出しながら話しているように見えました。
「でもね……怖いんだ。まだ覚悟が決まっていないの。みんなの事は信じたいと思っているけど、そんなに簡単に話せるようなことじゃなくてね?なんかゴメン。私の事を思って話してくれているのに」
そう寂しそうな顔で私に笑いかけるミーユさんを見て胸が痛くなりました。
「いえ……誰にも話したくない事くらいあります。でもこれだけは知っておいてください。ミーユさん、私はいつでもミーユさんの話聞きますからね?頼ってくださいね!こう見えても私はミーユさんより2つ上のお姉さんですから!」
「ありがとうアティ。それじゃ目的のザルガン洞窟の中に入ろうか!」
そう話すミーユさんの笑顔はやはり寂しそうな顔をしていました。それは私たちの事を信じたいという気持ちと覚悟ができていない葛藤の中で感情を無理やり保っているようにも見えました。
でも……
今、私ができるのはこれだけ。
これはミーユさん自身の問題なのだから。私はその寂しそうな背中をゆっくり追いかけていくのでした。