5. 王家の秘宝と呼ばれるもの
私はあれから
「お前はオモチャを与えられた子供か?無駄に魔力を消費するなよ。考えればわかるだろう?もし何かあった時どうするんだよ。ったく危機感がねぇな?」
「その時はブレイドさんが戦えばいいのでは?何も私だけが戦うわけじゃないですよね?」
ムカつく!この人私がやることを絶対に誉めることないよね?私が誉められたのってアティを連れてきた時だけ。それ以外はいつも文句しか言わない。気に入らない!この
「ダンナいちゃつくなら店の外でやってくれよな?」
「マードックお前も眼鏡をかけろ。見えてないぞ。それよりそろそろ本題に入ってもいいか?」
「え?本題?」
「あのなエルン。バカみたいにはしゃいでる子供のお前に言っておくがその
うう~っ!また嫌み言ってきた!このおじさん、私でストレス発散してるでしょ!
「そのくらいにしてやれよダンナ。ライゼンバッハの皇女の件、ちゃんと調べておいたからよ」
「えぇ!?マードックさん?」
「オレは一応こう見えても少しは名の知れた魔法鍛冶屋なんだ。各国からお忍びでオレの武器を買ったり、魔法武器作成の依頼を受けたりしてるんだぜ?そしてライゼンバッハ帝国のお客様も多い。」
マードックさん。凄く侮れない。まさしく隠れた情報屋さんだ。そうかブレイドさんは昔からの馴染みだからマードックさんにお願いしてたんだ。
私はブレイドさんの事をチラ見する。過去の栄光も捨てたもんじゃないな。今はただの呑んだくれのおじさんだけど……
「エルン。お前、今オレに対して失礼な事考えてるな?顔に出てるぞ?あと言っておくが、お前はすぐ顔に出る。バカ正直者だから覚えておけな」
「正直者?それなら私はいい人じゃないですかブレイドさん!そんな人がそんなこと考えますか?」
そう言って私は思い切りブレイドさんを睨みつける。またバカにしてきたよこのおじさん!もう嫌い!
「あっはっはっ!言われたなダンナ。まぁダンナ達が仲がいいのは分かったから、オレの話を聞いてくれ。まず前提としてライゼンバッハ帝国の第三皇女は存在する。これは間違いない。」
そうか、依頼がデマである可能性はなくなったということか。その情報が得られるだけでも大きい。
「でだ。なんでライゼンバッハ帝国は今まで存在を隠していたはずなのに、その第三皇女を高額な懸賞金をかけてでも探さないといけないのかと言うとだな、どうやら
「王家の秘宝ですか?」
「ああ。その王家の秘宝は王妃から第三皇女に渡される由緒正しき聡明な物らしい。だから帝国側も必死になって探していると言うわけだな」
王家の秘宝か。どんなものなんだろう?ん?というかそういう物って第一皇女とかに渡されるのが普通なのでは?なぜ、その第三皇女に渡されたのだろうか……謎だ。
「ああ。それについては今から説明してやるよエルンちゃん」
え。……私何も言ってませんけど?私って心の声が漏れてるのかな……?それともブレイドさんの言う通り顔に出てたりして……嫌だ!ブレイドさんなんかに言われたことを認めたくない!
「その王家の秘宝は代々『
「なるほどな。大体分かった。それでその王家の秘宝って言うのは?」
「ペンダントだ。真ん中に大きな
そんな山奥の村にわざわざライゼンバッハ帝国の皇女様が?しかもこのローゼンシャリオに一体何のようなのか……それとももうライゼンバッハ帝国には居場所がないとか?
「まぁ今分かるのはそのくらいだな。あとはダンナたちが決めたらいい。」
「ああ。いつも助かる。お代はここに置いておくぞ」
「いや今回はタダでいいぜ。こんなに楽しそうなダンナを久しぶりに見ることが出来たからな。エルンちゃん、ダンナを頼むな。あとはメンテナンスがてら遊びに来てくれ。ダンナの恥ずかしい過去とか話してやるからよ!」
「ぜひぜひ!毎日でも来ますよ!」
私は
「エルン。もしゴーバーン村に行くつもりなら、お前がミーユを説得しろ。それもリーダーとしての務めだからな」
「分かってます!これは私のリーダーとしての務めってことぐらい!」
「お前は本当に口だけは達者だな」
また嫌みか。懲りないなこのおじさんは。……いいでしょう!それなら私にも考えがあります!実はさっきのマードックさんとの会話キッチリ聞こえてました。私はブレイドさんにおそらく聞かれたくないことを聞いてみる。
「あのブレイドさん。
「お前……聞こえてたのか。シャーリーは彼女じゃない、『閃光』の元メンバーでオレの仲間だった女だ。」
「え。……だった?」
私のその言葉に一呼吸おいてブレイドさんは答える。
「……死んだよ。オレのせいでな。」
えぇ……やばっ……私……聞いちゃいけないこと聞いちゃったかも。それを見たブレイドさんが私の頭に手を置きながらこう言った。
「だからエルン。お前は絶対死ぬなよ?」
「あっ……ブレイドさん……」
ブレイドさんは悲しい顔で微笑みながらそれだけ伝えると私の先をそのまま歩いていく。私はその言葉を聞いて、ブレイドさんが私にそのシャーリーさんを重ねている事が痛いくらいに分かった。
でもそれと同時に私の事を大事にしてくれていることも分かるのだった……