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EpisodeⅠ

 §1


 子が親から最もしつけられることは、一体何だろう。好き嫌いせず食べなさい? 目上の人は敬いなさい? ただ、私の場合━━━


「ベルナデッタ、あなたはもっと手加減しなさい」



 また皿を、壊してしまった。







「嬢ちゃん、今日もここにある資材を作業所まで運んでくれ」


「わかった」



 私が運ぶのは、巨大な台車に所狭しと積まれた鉄柱。これを工場から作業所まで運ぶのが私の役目だ。普通の七歳児一人にこのくらいの重さのものを運ぶことは、当然不可能である。しかし、私は普通ではなかった。



 物心着いた頃から、私は周囲のものを壊し続けた。皿、椅子、扉など注意せず触れるとそれらはあっさりと原型を見失い、ガラクタへと姿を変える。当時の私はどうして自分の周りにあるものはこんなにもろいのだろう、と疑問に思っていた。しかし、それは大きな間違いだった。


「お前が怪力自慢のベルナデッタか。俺と勝負しろ!」



 二年前、私に勝負を挑んできた少年がいた。その子は人類種一の身体能力をもつドラコという種族で、少なくとも私の属するループスがパワーで敵う相手ではない。そんな力関係なのに、当時の私はやっと自分の全力が試せると歓喜していたように思う。そして、彼と腕相撲をするために手を握ると━━━



 私は彼の親指を、骨ごとへし折っていた。  



 幸いにも彼の指はドラコ自慢の生命力により完治したが、この出来事により私は否応なく理解した。周りにあるものが脆いのではない。私の力が強すぎるのだと。そんな私に任されたのが、このとても重いと言われている鉄柱の運搬である。というのも、これは国を挙げた一大プロジェクトであるようで、この鉄柱を使って線路という道を作るそうだ。これが国中に行き届けばブツリュウにカクメイ? がおこるらしい。



 私としても決まった道のりを散歩するだけでお金がもらえるし、工場からしても本来非常に大きな労力を割く仕事を私一人分の食事代で済ませることができるのでお互いウィンウィンなのだ。


 ただ一つ気になる点があるとすれば、線路という道を作っているので、日に日に運送距離が長くなっているということ。まぁ、その日のうちに帰れるなら、何でもいいんだけど。とにかくこのプロジェクトが上手くいけば、ドルディア国民の悲願である【魔術に頼らない社会】に大きく近づくことができ、みんなが幸せになれるらしいのでとても楽しみだ。








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