──青年は眼前の風景に、険しい表情を浮かべた。
目にも涼しげな青々とした草原が拡がっている。背後には森があり、遠くに見える切り立った山々の
「夢──では、なさそうだ」
青年の名は、ベリル・レジデント。年の頃は外見からして、二十五歳ほどだろうか。
本人の口から傭兵だと聞かされても、にわかには信じがたいほど上品な物腰ではあるが、彼はれっきとした傭兵である。
観光で来たならば、それは良い景色だと感嘆するだろう。しかし、彼はここを訪れた覚えはない。何が起こったのかと、草原を見渡しながら記憶を呼び起こす。
──確か、リビングで効率の良い装備を思案しながら武器の手入れをしていた。
ここのところ要請が立て続けで、そろそろ長めの休暇でも取ろうかと思い、行きたい場所を考えていた。
ベリルにとっては、さして変わらない日常のはずだった。
手入れを終えて二杯目の紅茶を淹れようかと立ち上がったそのとき、唐突に視界が歪み、気がつけば見慣れない草原にいる。
昼前だったと思うのだが、視界の太陽は傾きかけていた。即効性の睡眠薬でも打たれ、見知らぬ場所に放置でもされたのかとも考える。
セキュリティ満載の家に警報を鳴らす事なく侵入しなおかつ、私に気付かれずにいられる者ならば、あるいは可能かもしれない。
「ふむ」
小さく唸り、改めて周囲を見回した。
背後にだけでなく、幾つかの森がある程度の大きさで点在している。肌から伝わる空気から、明らかに異質な気配が感じられた。
それは悪意や敵意といった、明確な違和感ではなく。ただ、「自分が生きてきた世界ではない」と思わせる漠然とした感覚だ。
とりあえず体を確認する。
グレーのミリタリー服にショルダーホルスターとバックサイドホルスター、そして両足のレッグホルスターには銃が収まっていた。
他にもナイフなど数種類の武器を装備している。足元には、特大サイズのバレル・バッグ。
因みに、ホルスターとは
「問題はないようだ」
これがシャワー中でなかった事に安心した。裸で草原に立ちつくす自分の姿は、想像するに悲しい。
どれだけ持てるかを再確認していたため、いつもより装備品は多い。予備の