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第6話 冷酷王と私

「まぁ、素敵ですわ!」


私の姿を見て店員は両手を合わせて喜ぶように言った。


「有難うございます」


今の私は落ち着いた淡いパステルカラーの青にミニ丈のドレス。

肩には同じ色のレースのケープで髪を後ろでアップに纏めてブルーサファイアのイヤリングを身に付けていた。


「思ったとおり、貴方様にはこちらのドレスが良くお似合いかと思いましたの。やっぱり私の目には狂いが無かったわ」


「こちらのドレスって見ないタイプですね。もしかして新作のドレスなのでしょうか?」


この国の令嬢達のドレスは裾が長いものが多く、またデザインも美しいものがある。

だけど私が今着ているものは、初めて見るものだった。


「お目が高いですわ。こちらは今隣国で人気のミニドレスというものになります。ドレスは美しいですけど少し歩きにくいでしょう?こちらのドレスは華やかで動きやすさをコンプセプトなのですよ!」


「確かに動きやすいです。腰周りもキツくないし、コルセットを付けなくて良いのも魅力的です」


「そうでしょう!きっとこの国でも流行ると思いまして。ちなみにこのドレスはうちの店でしか取り扱いしていないのですよ。あっそういえば…ちょっと待ってて下さいね!」


店員はハッと何かを思い出しながら、慌ててその場を後にした。

一体どうしたのだろうか…?

そう思い、暫くの間待っていると店員に連れられてクライド様がやって来た。


クライド様は私の姿を見た後、私から視線を逸らしたあと素っ気なく言った。


「悪くない……」


私の格好が見苦しかったのではないかと不安になってしまう。

しかし、良く見るとクライド様の耳が赤くなっていた。

もしかして彼はただ照れていただけなのかもしれない。


「これも頼む」

「かしこまりました」


当たり前のように注文をするクライド様に私は慌てて言った。


「クライド様。私はもう大丈夫です」


遠慮する私に彼は平然とした態度で答える。


「王妃となる者が何を言う。これは必要な経費だ。王妃になればお前は私と視察や、他の仕事を手伝って貰わなければならないからな」


クライド様は追加で宝石、アクセサリーも注文をする。

こんなに買って貰って良いのだろうかと言う気持ちと王妃として必要だと言われてしまえば、そうなのかと納得するしかない。

嬉しくないと言えば嬉しいはずだ。

ただ今までこんな風に誰かに尽くして貰うことは初めてで、どうしていいのか分からない…。


ブティックで買い物が終わったあと。

私はクライド様に連れられて初めて美術館や観劇へと赴いた。

絵画は昔父親が趣味で集めていたが、初めて目にする観劇に私は夢中になっていた。

本以外でここまで心揺さぶられる娯楽は初めてで、また観劇の内容が男女の身分違いの恋で悲恋の物語であった為、気づくと私は感動して涙が止まらずにいた。


観劇が終わったあとも涙が零れる私にクライド様は何も言わず黙って傍にいてくれた。

それだけで私は嬉しかった。


「どうだった?」


劇場を出て馬車を待つ間。

クライド様は私に訊ねた。

最初は緊張した。

私は彼に見初められて貰うほど器量良しでも美人でもない。

ただの平凡な女性だ。


だけど今日一日クライド様は私をエスコートしてくれた。

口数は少ないが、少なくとも私を楽しませようとしてくれていたのだと分かった。


「はい。素敵な一日でした」

「そうか…」


私の言葉にふっとクライド様は満足した表情を浮かべた。


(やっぱり…綺麗だわ…)


彼の笑った顔に思わず美しいと思ってしまう。

きっと同じ異性でもそう思ってしまう程に。


「何をするんですか!やめてください!!」


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