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5.オシッコ

その問題とはオシッコである。


前に少し触れたが、私は便意とともに尿意も感じにくくて、気づいた時には限界ギリギリだった時がしょっちゅうだった。特にそれが目についたのは小学校の下校時、学校を出る前にトイレに寄って行けば良いものの、尿意を置き去りにしている私が行くはずもなく、帰り道のど真ん中で膀胱が決壊寸前となり、戦う羽目になっていた。


学校から家までの距離は、約三十分。すでに出発して十五分くらいは歩いた所、ちょうど行くも戻るも地獄の中間地点でオシッコが根を上げてしまう。

同じ移動時間なら戻るより、家へ向かった方が良いに決まっている。もし、漏らしたとしても家の方がダメージが少ないのは誰が考えても明白だ。

オシッコを支える膀胱は焦っているのに、私の頭は冷静に状況分析しながらトイレへと歩き始める……が、たった十五分の道のりが尿意によって、永遠に続く果てしない道のりへと変貌させていた。終わりの見えない道を歩く姿は、刺激を与えないよう前屈みになって股間に力を入れヒョコヒョコと、まるで間抜けな鳥のようでなんともみっともない。

しかも家の団地は最上階、塗装が所々剥がれ蜘蛛の巣もあるきったない手すりを支えに必死で階段を登りやっとの思いで辿り着いて、ドアノブに手をかけ安堵あんどした時、膀胱の堤防は決壊し、大量の水が放出される…と言うのを、私は繰り返していた。


まあお漏らしなんて、子供の時なら一、二回あるものだろう。しかしながら私は、懲りずに何回も何回も、漏らした。その要因に加わったのは楽しみにしていた夕方放送のアニメを見たいがため先走ってしまったと言う、何ともアホな理由である。

だが言い訳させて欲しい、友達が一人もいないぼっちだった私にとって、テレビは友達で大親友、心の友だったと。


…言い訳出来たが、アホなのには変わりない。



しかもそのくせ、学校の尿検査のオシッコは提出できないのだから始末が悪い。

提出するオシッコは、必ず朝一番で出した取れたてでなければならない。なので朝食を食べた後いつものようにトイレに入り、入れる紙コップを尿道の前に構えたのだが…どうした事だろうか、オシッコは恥ずかしがり引っ込んでしまうのだ。

その時だけオシッコが便秘になったかのように、一滴も出なくなる。で、そのくせ学校の休み時間にトイレに行ったら平気な顔して出てくるのだ。


取るのを失敗してはいけないと言う緊張感のせいだろうか…、私はウンコだけではなくオシッコにも振り回されていた。


結局、尿検査には何日かかっても提出できない状態が続き、しびれを切らした母が紙コップを持ち、下腹部を上から手で押さえこんで、無理やり捻り出されたのだった。

まさか母も、子供の尿を取るのに手伝わされるとは思わなかっただろう。正直、家族にはいつも私のウンコでトイレを長く待たせたりなど、トイレにまつわる事に関しては申し訳ないとは思っている。



…………いい機会なので、ここで私の罪を懺悔をさせて欲しい。特にオシッコに関しては心からお詫び申し上げたいと存じます。



なぜなら、私はお風呂でオシッコをしていたのだ。


やっていたのは小学一、二年の頃。さっきも言ったが、前もってトイレに行っとけば良いだけの話なのだが、そんな簡単な事もできないのが私であった。

お風呂のお湯に浸かると温かくなって尿道が緩み、膀胱の堤防からドバドバと水を放出してしまったのだ。流石にマズイと最初は入浴剤を入れて誤魔化す事に成功するも、それがいけなかった。一度罪を犯す事に成功してしまうと、

人間と言う生き物は味を占めて罪を繰り返してしまう。そんな愚かな人間の私はその後も順調に罪を重ねて行き、遂に私は現行犯で逮捕される事となる。

逮捕の決め手は、ずばり湯船のお湯が黄色に変わっていたからだ。言うまでもなく、黄色はオシッコの色。私がお風呂に入ると入浴剤が切れているのに、色が変わる事に不審に思った家族が、私が湯船に浸かっている時を見計らい、突入。


こっぴどくボコボコに怒られて、私は罪を認めた。


はっきり言って最悪な黒歴史だけども、この経験をした事で何かをする前には、必ずトイレに行くようにしオシッコを漏らす事はなくなったので、結果的に私にとってはいい経験で出来たのである。


家族にとっては最低最悪の経験ではあるが。


そして一つ判明したのは、便秘だと腹に溜まったウンコが膀胱が圧迫し、オシッコが近くなる事。もしかして、オシッコもウンコに支配されているのかもしれない、と私はウンコに脅威を感じたのだった……。


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