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3.トイレ事情

実はもう一つ、私にはトイレに入りづらい、安心してウンコが出来ない特殊な事情があった。


一体どんな事情かと言うと、トイレの換気扇から音が漏れるのだ。トイレのドアの開閉音、オナラ・排尿・排便の排泄音、水洗の流す音、声、全てがトイレから聞こえるし聞かれてしまうのである。


私の住む家は、欠陥住宅ならぬ欠陥団地。トイレの換気扇は同じ階段の家同士で繋がっていて、兄がトイレで近所の友人と会話を出来るくらいに、場合によってはトイレの近くでケンカなんかすれば翌日には近所で話題になってしまうほど、音が筒抜けだった。

幸いトイレの種類は洋式だったが、便座ヒーターやウォシュレット、ましてや流水音が流れる消音ボタンなんて物は付いてるはずもなく、正真正銘ただの洋式トイレ。なので自分自身が消音ボタンとなり、出す前にいちいちトイレの水を流して音を消すという手間がかかる事に。


…この世のどこかの誰かは、トイレは落ち着いて安心できる居心地の良い場所だと言うが、私にとっては気が抜けず座り心地の悪い、簡単に言えば最悪な場所であった。


だってトイレに入ればいつも誰かの排尿・便の音がしたと思ったら、今度は自分が気を抜いてしまえば、間抜けな屁の音を誰かに聞かれる。こんなトイレはどんな人でもお断りだろう。


だけど人間はトイレでウンコをしなければ、生きていけない。生まれてまだ五年目にして、体の不条理を知り忌み嫌いながらも、今日も私はトイレに入るのだった。


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