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終章

 翌日。僕は神社に行くことにした。神力の調整は無事終わったのだろうか。神社の前では、いつものように今羽が掃き掃除をしている。

「やあ、光希くん。俺の方は、もう準備ができてるよ。後は、君の心の準備だけだ」

 この時代に、さよならを。使用人の皆、紬、そして晃生。いい人ばっかりだったな。もう来ようとは思わないけれど、楽しい日々だった。僕がいなくなったら、皆また心配するかな。でも、いずれ忘れ去られていくんだろうな。むしろ、そうであってほしい。

「……名残惜しい?」

「そうじゃない、って言えば嘘になるけど……。現代にも、僕を待ってる人がいる訳だし。帰るよ」

「そうだね、君の時代で君を待っている人は絶対に存在する。だから俺も、本気でやるよ。さあ、目を瞑って」

 言われるがままに目を瞑る。すると、何やら呪文のようなものが聞こえ始めた。これが、現代に帰る儀式なのだろうか。正直、目を開けて確認したいけどそれは御法度だろう。

 浮遊感がする。気持ち悪い……。乗り物酔いはしないタイプなんだけどな。

「佐竹光希くん、じゃあね。もう迷い込まないように、気をつけて」


 目が覚めると、僕の現代の部屋の天井が目に入った。無事、帰ってこられてホッとするのと同時に喪失感に襲われた。しかし、いつまでもベッドで横になっている訳にもいかない。起き上がり、ドアを開け部屋を出る。

「……光希⁉︎ あんた目が覚めたんけ」

 母親に見つかった。

「い、いや〜これは僕にもよくわからないんだけど……」

 僕が事の顛末を話そうとした前に、母親からは

「まあ、無事みたいで良かったけど。ずっと眠っていたから心配したんさ」

 どうやら、精神だけ江戸時代に行っていた……みたいだ。理解の範疇を超えている話だが、そう解釈するしかない。

 そうだ、現代に帰ってきたらやろうと思っていたことがあるんだった。

「ねえお母さん、家系図ってどこだっけ?」

「それなら、倉庫にあると思うけど」

「ありがとう」


 倉庫は長いこと立ち入っていなかったからか、随分と埃っぽい。物が多くごちゃごちゃしていたが、お目当てのものはすぐに見つかった。重要そうに箱に入っていたからだ。

家系図を広げると、一番下に僕の名前。上へ、上へと目線をあげていくとその名前が目に飛び込んできた。

 佐竹晃生、佐竹秋奈、佐竹光夜。やっぱり皆、僕のご先祖様だ。一つの奇跡に立ち会った気がして、胸の中が複雑な感情でいっぱいになった。


 江戸も、悪くなかったな。


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