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第4話

 昨日と同じく、佐竹家はてんやわんやしていた。まだ産まれて間もない子どもがいるのだから、それはそうか。

「光夜様の元へ参りましょう」

 どうやら、産まれた赤ちゃんには光夜という名前がつけられたらしい。早足で歩く紬を、慌てて追いかける。

「秋奈様、失礼します。光夜様のご様子はいかに……?」

 秋奈は、昨日と同じく黒髪をおろしていた。まだまだ本調子とはいかないのだろう。顔が青白い。

「光夜なら、今は寝てますよ。だいぶ十和が相手してくれたので、疲れてしまったみたいです」

 確かに、寝息が聞こえる。今なら近づいても、泣き出されたりはしないだろう。そっと近づいて手に触れる。柔らかくて、温かい。生命の神秘に触れた気分だ。それはどうやら紬も同じだった様で、目が潤んでいる。

「晃生様も、本当に大事に扱ってくださって……。これからこの子がどうなるのか、今から楽しみです」

 佐竹家の跡取りということは、それなりの重圧があるはずだ。だけれども、それを乗り越えられるはずだと直感している自分がいる。何故だかはわからないけれど、この家は大丈夫なんだ。これから歴史の波に流されても、大丈夫だという確信があった。その確信がどこから来たのかというと、それは上手く説明できないけれど。

「きっといい子になるよ。何故だかわからないけど、そんな予感がする」

「だと、いいのですが」

 秋奈は物憂げな表情をしていた。まだ不安の方が大きいのだろうか。

「では、私たちはこれで失礼します。お大事になさってくださいね」

 紬が外に出るのと同時に、戸を閉める。光夜は寝ているし、やることが無くなってしまった。

「……茶屋で一休みしましょうか」

「そうだね……」

 お金を持って、僕たちは茶屋へと向かった。


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