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神社に着くと、今日は桜が掃除していた。巫女服がよく似合う。切り揃えられた黒髪が衣装映えしているのかもしれない。
「あら、光希くん。今朝ぶりね」
今羽と喧嘩していない時は優しいお姉さんだ。
「今羽に何か用?」
「あ、いや、用とかではないんですけど……」
桜は、勝手に何か察したのか「今羽を呼んでくるわね」と社務所へと向かっていった。
しばらくすると、今羽が出てきた。
「おはよう光希くん、ちゃんと佐竹家に帰ったの?」
「はい、凄く心配されました」
「だろうね。佐竹晃生は君のことを大切にしてそうだから」
今朝の騒動を改めて振り返り、悪いことをしたなと思う。
「そういえば、神力はどれくらい戻ったんですか?」
佐竹家の話題をするのは、どことなく後ろめたい。話題を変えよう。
「八割くらいは戻ったよ。後は、細かい調整ぐらいかな。もうすぐ君を元居た時代に返せると思う。今のうちに江戸を楽しんでね、もう二度と来ることはないだろうから」
確かに、二回も江戸時代に飛ばされたらたまったものではない。
「そうですね。じゃあ、今日は僕はこの辺で。また明日来ます!」
「うん、それでいい。またね」
僕は神社を出て、佐竹家へと戻る。まだ顔も見ていない、新しい命を見るために。