僕が帰ると、晃生に抱きしめられた。
「おいおいおい! 何処行ってたんだよ!」
「……心配かけてごめん」
それしか、言う言葉が見つからなかった。ここまで心配してくれるとは、彼はどこまで優しいのだろう。
「……何で出て行ったんだよ、何も言わずに」
「ちょっと思うところがあって……」
「思うところ?」
こんな感情、言えない。言えるはずがない。生まれたばかりの命に嫉妬していたなんて、見苦しいにも程がある。
「ううん、何でもない。心配かけてごめんね、もう出て行かないから」
僕が晃生を抱き返すと、相手も抱き返してきた。大柄な晃生に抱きしめられていると、大分息苦しい。
「他の奴にも報告しないとな。紬、行ってきてくれるか?」
「かしこまりました」
紬は一礼して、奥の部屋に去っていった。
「に、しても昨晩は何処で寝てたんだ? また野宿か?」
「ああ、まあ、そんなところ……」
神社で寝泊まりしたことは、言わない方がいい気がしたので伏せておく。第一あの神社は、佐竹家と関係ないらしいし。意味ありげな言い方ではあったけど……。
「なら、朝風呂でも浸かるか? 紬は忙しいだろうから……風花にでも頼むか」
晃生も奥の部屋に向かって歩いていった。一人きりになった僕は、とりあえず自分の部屋に戻る。昨日、布団から抜け出したままになっている。当たり前か。ということは、誰もこの部屋を捜索していないのか。それならそれで有難いけど……。
部屋の様子を見ていると、「風呂が沸いたぞー」と晃生の声が聞こえた。
「今行くよ」
と返事をし、風呂場へ向かう。