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第5話

 この日の食事は、当たり前の様に豪華だった。鍋に、米を入れ最後雑炊として食すのは今も昔も変わらないみたいだ。

「秋奈様、お久しぶりです。体にいいものを、と思って雑炊にしてみましたけど……」

「優斗、ありがとうございます。こうしてここに出てこられるくらいには、回復しました」

 回復力が凄い。確かに少しの移動だけなら、産後数時間でも出来るのかもしれないけど……。皆が心配そうに秋奈を見つめている。当たり前だ。

「十和はどうしたんだ?」

「あの子は、赤ちゃんの様子を見てますよ」

「そうか」

 晃生の問いかけに、柔らかに返す秋奈。心なしか、晃生が大人しく見える。

「それにしてもめでたいなぁ、俺も明日からまた仕事頑張らねえと……」

 確かに。仕事を急に休んだと言っていたはずなので、明日からは頑張る必要があるだろう。

「ふふ、頑張ってください。一児の父になられたのですから」

「そうだな」

 夫婦仲良かったんだな、この二人。そう思うのと同時に、僕がこの家に居て良いのか増々不安になってくる。赤ん坊がいる家に、居候するのは申し訳ない。


——今夜、家を出よう。あの神社に厄介になれば済む話だ。雑炊の最後の一口を飲み込み、覚悟を決める。


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