家から出るのもなんだかな、と思い自分の部屋で考え事をする。これも、神様が与えた試練とか? いや、そんなことはない。そんなこと、あってはならない。神が存在していたとして、何故僕にそんな試練を与えるのか。全く理解が出来ない。最も、理解できないから『神』や『超常現象』であるのだろうけれど。
「光希様、失礼します」
「紬……」
声に反応して襖を開けると、いつになく改まった格好の紬が居た。
「光希様は、秋奈様の様子はもう見に行かれないのですか?」
「ああ、うん。ちょっとね」
先ほど、晃生と間違われたことがフラッシュバックする。僕は本当にこの時代に居ても良いのか、そんな思いが頭に浮かぶから。
「もうすぐ産まれそうですよ、晃生様も急遽お休みになられて付き添われていらっしゃいますし……」
「僕はいいよ」
少し語気が強くなってしまった。まあ、これで紬も諦めてくれるだろう。
「いえ、良くありません。晃生様にも、光希のことは頼むと言いつけられております。光希様は、人の命が繋がる瞬間を見るべきだと、晃生様も仰られていました。行きましょう光希様、秋奈様のところへ」
紬は僕の手を取り、奥へと駆け出した。