聞き覚えのある声が聞こえた。
「お、佐竹くん。先程ぶりだね」
「今羽さん……?」
これは、僕が見ている夢なのだろうか。寝た気がするから夢ではあるんだろうけど。何で今羽がいるのだろう。
「君って案外顔に考えが出るよね。そういうところ、いやなんでもない。何で俺が居るのか疑問かい?」
「それは……はい」
夢にまで出てくるということは、いよいよ帰りたいという気持ちが暴発しているのだろうか。それとも他に理由が? だとしたら見当がつかない。
「俺はね、少しずつだけど神力を取り戻せてる。だからこうして、君の夢に干渉することも可能になった訳でさ。勿論、遊びで夢に出た訳じゃない。伝えたいことがあるんだ」
「伝えたいこと?」
やっぱり見当がつかない。さっき伝え忘れたことでもあったのだろうか。
「君がこの時代に飛ばされた理由だよ。俺としてはもっと、別の時代に飛んでいてもおかしくないと思っていたんだけど理由が分かった」
「え?」
今羽は一度言葉を切り、再び語り出した。
「君は、佐竹晃生に会う必要があったんだ。時代を越えてでも、どんな関係性でも。神様がそう思ったから、君はここにいる。佐竹晃生は君とは正反対の性格であり、学ぶところもあったんじゃないかな?」
確かに晃生は僕と正反対だ。豪快で、皆の中心にいて。その明るさには、きっと沢山の人が救われているのだろう。あの家の使用人、家族、他にも誰かいるかもしれない。
「思い当たるだろ? 君にはないものばかりであるはずだよ。勿論、君は君でいい。君が居た時代においては、その方が普通なのかもしれない。でも神様は何を思ってか、それを良しとしていない。つまり君がこれからやるべきなのは、神様のご機嫌取りだ。俺も協力するから、出来れば毎日神社には来てほしい。参拝はしなくていいから」
それは神官の発言としてはどうなんだろう、と思ったけどやるべきことがはっきりしたのは収穫だ。相変わらず非現実的だけど……。いるかいないかわからない――恐らくいる程度の存在にこれ以上めちゃくちゃされるのはたまらない。この思考も罰当たりか、と思うけど僕も鬱憤が溜まっているんだろうな。
「わかった、通うよ。神社に」
「うん、いい返事だね。俺もあいつといつでも待ってるよ。……そろそろ目覚めてもいい時間だな。またね、光希くん」