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第6話

 お風呂、といっても現代日本の物とは異なるものだった。浴槽が縦に長い。初めての経験で戸惑ったが、何とか無事に入り終えることが出来た。

 お風呂から出ると、全員が僕を待っていた。

「ごめん、遅くなった」

「気にすんな、疲れていただろうし」

「そっか。ところで、この服大きさピッタリだよ。ありがとう」

「俺のおさがりで悪いな、お前の身体の大きさ的にこれしかなくて」

 僕が着用しているのは、水色の柄入り着物だった。どんな柄なのか形容するのは難しいが、鶴らしきものが描かれている。

「それにしても、よく水戸から持ってきてたね。何で持ってきたの?」

「今回見たいな不測の事態に備えて、だなー……」

 話題はその後の沈黙によって続けられなくなった。戸を開け、部屋に戻ると不思議なことに安心感が湧いてきた。

「僕、もう寝るね。おやすみなさい」

「おう、おやすみ」

 脳はここを、僕の家だと認識している様だ。本当は違うのに。脳は簡単に錯覚を起こす。

 一日で色々な出来事がありすぎたのか、身体も心もへとへとだった。

 布団を被る。冷え込んだ空気に晒されていた布団は、しばらくの間冷たかった。


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