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第11話 考えても分からない

 それから柊さんが戻ってくるまでテーブルに向かって服のデザインをしていればお風呂から戻ってきた柊さんに明日は朝早いんだから早く寝なさいと促されて早々に自室になる予定の部屋に戻った

 部屋に戻ればまた既に布団が敷かれており柊さんの仕事の早さに感嘆した

 布団に潜れば今朝柊さんに言われたことを思い出してしまう

 宝石の原石とか、魅力的な女性だとか

 それから……

(そこまで言うのなら一度、あたしに磨かれてみなさい!)

 というよくわからない啖呵

 布団のなかでもそりと寝返りをうつ

 一体私は明日、柊さんにどうされてしまうのか

 柊さんは何をするつもりなのか

 気になることは沢山あって、気にしないといけないことも沢山ある

 これから始めるルームシェアとか、その原因となったストーカーのこととか、それ以外にも沢山沢山私が気にして、考えないといけないことはある

「……やめよ」

 だが私は早々に考えるのをやめて瞳を閉じた

 考えたって疲れるだけで、何も解決なんてしないのだから


 朝、アラームの音で目が覚める

 柊さんに指定されたリビングへの集合時間は朝の7時

 普段起きる時間より少し早いが朝に弱いということもないので起きるのは苦ではなかった

「あら、ちゃんと起きれたのねー、おはよう、よく眠れたかしら?」

 洗面所で顔を洗ってからリビングの扉を開けば既に準備支度を整え終わっている柊さんがキッチンのほうでマグカップで何かを飲んでいた

 湯気もたっているからおそらくまたココアだろうか

「はい、今日もよく寝れました、おはようございます」

 実際昨日と同じように他に人がいる安心感からかぐっすりと眠ることが出来た

「今日はフルーツヨーグルトよー」

 言われて見れば机の上にはすでに二対のお皿が置かれていた

 ご飯は食べずに待っていてくれたようだ

「ありがとうございます、いただきます」

 私がお礼を言って椅子に座ればそれに習って柊さんも私の前に座ってスプーンを手に取る

「一応今日の予定だけれど、まずあたしの車であなたの家の昨日持ってきたものより大きいものとか、直近で必要なものとかこっちに持ってきちゃいましょうか、他の大きな家具とか……ベットとかね、そういうのは業者に任せて運べばとおもってたんだけど……ストーカー被害が収まったらいつでも家に戻れるようにこっちはこっちで家具を用意しようと思ってね」

 それから柊さんは考えていたのであろう今日の予定をあげていく

「あ、いえ、さすがに用意させるなんて……」

 だが確かにどれくらいの期間で家に戻れるようになるのかはわからないがそのために別途で準備させるなんてことは申し訳ない

 この数日間で一体何回柊さんに申し訳ないと言ったのかもはや覚えてすらいない

「あ、それは大丈夫よ、あたしね妹がいるんだけど、その子が使ってたベットとかが実家に残ってるからそれを持ってこようと思ってるの、お古がいやならまた別の方法にするけれど」

 だがまた何回目かすら覚えていない柊さんの説得に私はうなずくしかない

「……お古が嫌とかそういうのも特にないのでそれでお願いします……それより、柊さん車持ってらしたんですね」

 それから一つ気になったことを聞き返す

 柊さんはあの男から助けてくれた時もそうだが通勤は徒歩だ

 だから勝手に車は運転しないのだと思っていた

「それじゃあ早いうちにこっちの家まで移動させとくわね、で、車ね……そうねー、あたし一応免許も持ってるし愛車もあるのよ、ただ普段は健康のための運動がてら歩いて出勤してるだけ」

「そうなんですね……」

 相変わらすの健康意識の高さに感嘆するしかない

「さてと、冬は寒いから先に車暖めておくわ、あなたは……特に準備もないようだけど、準備が済んだら下の駐車場に止めてある青い車まで来てちょうだい、これこの家のスペアキー、ちゃんと持っておいてね」

 言いながら柊さんは可愛い犬のマスコットのついた鍵を机の上に置く

「あ、はい、ありがとうございます」

 お礼を伝える私のお皿にはまだ半分ほどヨーグルトが残っている

 毎回柊さんは私よりかなり早く食べ終わっては行動を始める

 元来食事スピードが早いほうなのだろう

「急がずゆっくり食べていいからねー」

 柊さんは手をひらひらと振りながらそれだけ言うと部家を出ていった

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