小さい頃から服が好きだった
お母さんに連れていってもらったブティックに並ぶ服を私は時間を忘れてずっと眺めていた
家では自分でお絵描き帳に色々な服をデザインして楽しんでいた
ピシッと決まったシャツも好きだしプリーツのたくさん入ったスカートも好き、ポンチョもワンピースもサルエルパンツもどれも大好きだったけど、何よりも私の心を射止め離さなかったのは、まるで童話の中のお姫様が着るようなフリフリの沢山ついたドレスだった
いずれは私もそういう服を着て、運命の王子様と結ばれるんだ、そう思って疑いもしなかった
しかし人生というものはそう簡単には出来ていない
私の家はスポーツ一家だった
休みの日はみんなでよく運動した
そんな環境にいれば自ずと肌は小麦色に焼けて、着る服はスポーティーなものが多かった
勿論Tシャツとジーパンとかそういう服も好きだったけど、問題はその後だ
年齢を重ねて私は恋をした
恋をした彼は私と同じ陸上部に所属していて休みの日にも遊びに行ったりなんてするぐらいには仲が良かった
私はその日、初めて化粧をして、服もいつもよりもおめかしして出掛けていき、そして彼に告白した
「ごめん、お前のことそういう目では見れない……っていうか何だよその服ー、お前そういうキャラじゃないだろ、似合ってないって!」
未だに一言一句忘れることなく覚えている
今考えれば友達としか思っていない相手に告白されて、その後のことも考えての発言だったのだろうと推測することは出来る
だけどその言葉と嘲笑は、若い私の心を強く抉った
それから私は化粧をすることを止めた
休みの度に服を眺めに行くことを止めた
乙女であることを、止めたのだ
それからはずっと、高校に入ってスポーツを止めても、大学に入っても、私は地味女子であり続けた
それでも服をデザインすることは好きだったしファッションデザイナーという憧れの職業を諦めることが出来ずにアパレル系の会社に就職した
それでも私は、可愛い服を着ることだけは出来なかった
アパレル系の会社なだけあって皆それぞれおしゃれな格好をするなかおしゃれもせずに化粧もしない私だけが目立って悪い意味で浮いている存在であることは理解していた
それでも昔の記憶が邪魔をして、どうしても出来なかった
憧れの職業についたはずなのに憧れのその中へ入っていくことの出来ない私はただ……
皆に、憧れ続けていた