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第14話『人間で居てはいけない』

 ロロのエレフォルム装備が出来たのはそれから3日後だった。


「どうだ? 動けるか?」


 装備屋の店主がロロに問いかけると、ロロは腕と足を上げ下げして頷く。


「ありがとうございます。出来れば脇の辺りをもう少し詰めてくれると有り難いです。少し突っ張る感じがします」

「おお、そうか。どれ、脱いでみろ」

「よろしくお願いします」


 店主にしっかりと頭を下げるロロを指さして俺はスワローに言う。


「おい、見たか。礼ってのはああやんだよ」

「でもアエトスしない」

「俺はここの奴らと顔見知りだからな。それにしてもロロはしっかりしてんな」


 感心したようにロロを見ると、スワローが少しだけ眉を潜める。


「ロロは人間っぽい。駄目」

「別に良いじゃねぇか。人間なんだから。何でそんなに人間を嫌がるんだよ」


 不思議に思って尋ねると、スワローは真っ直ぐに俺を見つめてくる。


「人間は身勝手。利益でしか物事を考えない。だから戦争が絶えない。いつまでも同じ種族同士で争ってる。世界一愚かな生物。それが人間」

「お、おお……何か悪いな……すまん」


 確かにスワローの言うような一面はあるかもしれないが、そればかりではないと思う。


 けれどスワローの居た時代では少なくともそういう教育をされていたと言う事なのだろう。


「な~んか難しい話してるねぇ。バギー表に回してきたよ。ロロは何してるの?」


 バギーを取りに行っていたアウルがまだ装備屋で店主と頭を突き合わせて話し込んでいるロロを見て首を傾げている。


「何か改造してんぞ」

「は? 改造?」


 意味が分からないとでも言いたげなアウルと共に耳を澄ますと、ロロは店主に出来上がったばかりの装備を見せてあれこれ注文をつけていた。


「ここにこのベルトがあると、例えば斜め20度の角度から敵に不意打ちをされた時、振り返るとここで引っかかる訳です。なので、ここではなくて腰回りにもう少し柔軟性のあるゴムを使って――」

「ふむふむ、なるほどな。確かにここだと振り返ると太ももに鞘が当たるのか。だが腰回りには既にハンドガンのホルダーがあるぞ?」

「ですからホルダーにもう一箇所ナイフ用の物を付けるか、いっそ胸元に斜めにベルトを這わせてこう抜き取れるようにすれば――」


 そう言ってロロは胸元からナイフを抜く仕草をする。それを見て店主は頷きメモを取っていた。


「なんて優秀な装備屋なんだ」


 呆れながら言うと、アウルも苦笑いをして頷いている。


 装備屋と武器屋はいかにハンターが動きやすく使い勝手が良いかを考え抜いて毎度新しい装備や武器を作り上げる。


 それを半年に一度の品評会に出し、セントラリオンから合格が出なければ販売する事が出来ないのだ。その為に装備屋も武器屋も必死になって新しいデザインと性能を持った装備や武器を作り上げる。


 品評会に出して合格した物は全員のビオナに説明と必要な素材が送られてくるのだ。それを見て俺達は次の装備や武器を決める。


「はい、ロロそこまで。そろそろ出発するよ」

「もうそんな時間ですか? 仕方ありませんね……店主、今言った所は最低限の改善点です。次に会う時の装備を楽しみにしていますよ」


 にこりとも笑わずに淡々と言うロロに店主はゴクリと息を飲んでぽつりと「セントラリオンより厳しいじゃねぇか」と呟いたのを俺は聞き逃さなかった。


「えっとー……それじゃあまた」


 どちらかと言えば人懐こいアウルが苦笑いを浮かべて言うと、店主は手を上げてすぐさま奥に引っ込んでいった。きっとすぐにでもアイデア表を作るのだろう。


 俺達はバギーとバイクにそれぞれ乗り込むと、アイスピックを後にする。ちなみにスワローは寒いと言ってバギーを選んだ。


 しばらく南下して適当な所でバイクを止めると、同じようにバギーが隣に並ぶ。


 俺はバイクを下りてバギーに乗り込むと、後部座席から顔を出してアウルに尋ねた。


「さて、ここからどうする?」

「まずは俺達の疑似ビオナの入手をしないと。アエトス、ククルスに連絡取れる?」

「ククルス? 何すんだよ」


 ククルスはハンター界隈でも有名な裏社会に精通した女で、そのずる賢さというか狡猾さに皆から一目置かれている。


「彼女の仕入れる疑似ビオナが一番性能が良いって噂なんだよ」

「あいつに頼み事すると高いぞ?」

「でも信頼は出来る。彼女の指定した物さえ届ければ」

「それはそうだが……ちっ、仕方ねぇな」


 俺はビオナを取り出してククルスの名を告げると、すぐにククルスの連絡先と生体ナンバー、そして生体の身体的特徴と姿がビオナから浮かび上がる。


「へぇ、面白いですね。ホログラムですか」

「初めて本物見た。面白い」


 ロロとスワローはビオナから投影されるホログラムを見て喜んだ。

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