「ええ。でもあのパーティー何だか軍隊みたいで面白く無さそうなのよね。それに下心も見え見えっていうか、そもそもタイプじゃないのよ!」
「あ、なるほど。分かりやすいです」
エルフは大なり小なりはっきりした性格をしている人が多い。どうやらリュカと幼馴染と言うだけあって、アビゲイルもはっきりした性格のようだ。
「でもリュカも何度か声をかけられてると思うわよ? 言ってなかった?」
「いえ、そんな事一言も言ってませんでした……っていうか、知りもしない感じでしたけど……」
その人有名です? なんて言っていたが、リュカの事だ。誘われた事など山程ありすぎて、もしかしたら覚えていないだけという可能性もある。
「ああ、あの人興味ない人は覚えないものねぇ。トワイライトのパーティーはね、とにかく有名所ばかりを集めた超豪華パーティーなんだって。つまりハイランクばっかりの集団らしいんだけど、全然楽しく無さそうでしょ?」
「そ、そうでしょうか?」
ハイランクばかりだなんて凄いパーティーだ。よくそこにメリナは潜り込めたものだ。そんな事を考えながら苦笑いを浮かべた僕にアビゲイルは言った。
「そうよ。それならこっちのパーティーの方が絶対楽しそうよ。だってちぐはぐすぎて面白すぎない? リーダーのランクがRなのに魔王とSSランクとそれに匹敵するランクの人と見習い⁉ なにそれ! 楽しそう!」
「で、でも昨日は嫌だって……」
「昨日は昨日よ。ていうか、さっき改めてあの書類見せてもらったの。おまけの所にキメラって書いてあって吹き出しちゃった。これからよろしくね、ルーカス。それからキメラちゃんとはさっき契約してきたわ。今は魔界に戻ってもらってるから安心して」
「あ、ありがとうございます! こちらこそよろしくお願いします」
アビゲイルから差し出された手を取って僕は頭を下げる。まさかのSSランク召喚士の仲間入りに僕も身が引き締まる思いだ。
「ふあぁぁ。ルーカスぅ、起きたら居ないからどこに行っちゃったのかと思いましたぁ」
そこへアクビをしながらエミリオが階段を下りてきた。
「ごめんごめん。手紙置いてきたから大丈夫かと思ったんだ。朝食もうエミリオのも取ってきてあるよ」
「わぁ! ありがとうございます!」
「エミリオ、顔は洗ってきたか? 寝癖が直ってないぞ」
言いながら席についたエミリオの髪を鋭い爪で梳かしてやるラルゴ。そんな様子をアビゲイルが声を殺して笑って見ている。
「なんです、朝っぱらから親子ごっこですか?」
「おはよぉ~……何か胃の調子がおかしいんだけど、誰か胃薬持ってない?」
続いてやってきたのはリュカと胃を抑えたメリナだ。そんなメリナにリュカがポケットから胃薬を渡してやっている。
「観葉植物なんて食べるからですよ。どうぞ、胃痛と二日酔いによく効く薬です」
「あ、ありがとう。そんなの食べたかなぁ……?」
ビクビクしながらリュカから受け取った薬を持って下りてきたメリナは、エミリオの隣に腰を下ろした。その隣にリュカが座ると、途端にメリナの尻尾が膨らむが、それを見てリュカが意地悪に微笑んでいる。
「変なパーティー。で、これからどこ行くの?」
「西に向かうつもりです。何でもトワイライトのパーティーはずっと西に向かってるみたいなので」
そう言って僕はメリナから預かっていた地図を机の上に出した。それを覗き込むアビゲイル。
「この赤い丸の所を転々としてるって事?」
「はい。アビーさん知ってる所あります?」
「敬語いらないわよ、ルーカス。そうねぇ……ああ、このボンドって街は行ったことあるわ。ここのギルドに出るのが結構割が良くてね!」
手を組んでそんな事を言うアビゲイルを、リュカがサラダを食べながら鼻で笑っている。
「流石、賞金マニアのアビーですね。全く成長していなくて安心しました」
「うるさいわね。放っておいてちょうだい」
「なんだ、アビーは賞金の為にダンジョン回ってるのか?」
ラルゴの言葉にアビゲイルは目を輝かせた。キラキラした目でお金について語り始める。
「そうよ~! お金だぁい好き! お金が無いと老後も心配だし、欲しい物も買えないのよ⁉ それに何より――」
「お金って凄く大事なんですね」
まるでマシンガンのようにペラペラと金について語るアビゲイルを見てエミリオが、ほぅ、と感心したように息をつく。
「アビーは昔から何よりも筋肉と金が好きでね。それはもう有名でした」
「……お前は酒と女だろうが。大して変わらんぞ」
「それはそうと、どうしてあなた達魔王討伐なんて行ったの? 特にルーカスなんてランクRでしょ? 無謀すぎない?」