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第7話

 こうしてまずはメリナが所属しているパーティーを探す事になった一行は、ギルドに集まっていた人達に情報を貰って西に向かった。


「メリナはシーフなんですよね?」


 リュカの言葉にメリナはコクリと頷く。それを見てエミリオが首を傾げる。


「あのー、シーフって何する人ですか?」

「そっか。エミリオはまだそういう知識もないんだね。この世界の事は分かる?」


 僕の問いにエミリオは少し考えて言った。


「あ、はい、何となく。とりあえず魔族が住む裏側とそれ以外の人達が住む表があるんですよね?」

「そうそう。で、表側には色んな職業の人達が居るんだ。まずは剣士。剣を扱う人達だよ。ちなみに僕も剣士なんだ。それから神官。リュカがそうだよ。神官は主に白魔法っていうのを使って仲間を回復してくれたりするんだけど……リュカは魔導士の免許も持ってる魔法のエキスパートなんだ。危なくなったらすぐにリュカの後ろに隠れてね」

「ルーカス、聞こえてますよ。私が守るのは女性だけです。男は自分でどうにかしなさい」


 前を歩いていたリュカが振り返りもせずに言うが、僕は小声でエミリオに言う。


「ああは言ってるけどいざって時は凄く頼りになるから。あと、絶対にリュカに女の人みたいって言ったら駄目だよ!」

「わ、分かりました。キレちゃうんですよね?」

「そうそう。あの姿からは想像も出来ないぐらい人格変わるから気をつけてね」

「はい」

「で、次に戦士。ラルゴがそうだよ。武器とかはあんまり使わないんだ。大抵拳だけで相手をやっつけちゃうんだよ。でも未だに戦士ランク教えてくれないんだよね……。で、最後がシーフね。一言で言えばサバイバルの専門家かな。表の世界に沢山あるダンジョンと呼ばれる場所には危険な罠や鍵がかかった宝箱なんかがあるんだけどね、それを回避したり開けたりしてくれるのがシーフなんだ。他にも沢山職業はあるけど、ここに居る皆の職業はこれだけだよ。最後にエミリオの魔導士。これは魔法攻撃に特化してる人達の事なんだ」

「凄いんですねぇ! ここに居る仲間でどんなダンジョンもクリア出来そうです! その中にぼくも入れるなんて!」


 とてもキラキラした視線を向けられて僕は苦笑いを浮かべる。仲間だとエミリオは喜んでいるが、エミリオは魔王である。僕達にとっては討伐対象なのだから何とも言えない気持ちになってくるが、まぁしばらくはそう思ってもらっていた方がいい。


「ところで話は戻るんですが、メリナのパーティーメンバーのリーダーは誰なんです? どういう経緯でそこに入ったんですか?」

「えっと、その……勇者トワイライト様……だよ」


 それを聞いて僕は目を丸くした。思わずメリナの肩を掴んで激しく揺さぶってしまう。


「あ、あの有名な勇者トワイライト!? あそこに居たの⁉」

「有名なんですか? どんな人なんですか?」

「……トワイライトか……名前は聞いた事あるような気がするが……」

「私は全く知らないんですが、その人そんなに有名です?」


 驚いた僕とは違い、世間を知らないエミリオと世間ずれしているラルゴと世間に興味の無いリュカの反応は様々だ。


「有名だよ! めやくちゃ有名! むしろ何で知らないの!? 彼がギルドで募集をかけたら、一瞬でメンバーが集まるんだよ!?」

「そうなのか?」

「へぇ。で、具体的には何した人なんです? 勇者と言う二つ名がつくぐらいですからそれなりの功績があるのでしょう?」

「そりゃもう沢山あるよ! まずは2年ほど前に起こったダンジョン破壊事件で王の命を守ったって噂だし、そのダンジョンで姫様を助け出したのもトワイライトだって聞いてる。それからあの伝説の七色ドラゴンを狩ったのもトワイライトらしいんだよ!」


 興奮気味に言った僕にリュカは鼻で笑った。


「全部噂じゃないですか。それ、本当にトワイライトがやったんですか?」

「え、た、多分?」


 実際に目の前でトワイライトの戦いっぷりを見た訳ではないので詳しい事を聞かれると困ってしまう。


 首を傾げた僕を見てリュカはもう興味を失ってしまったようにまた歩き出した。


「まぁ何でもいいです。そのトワイライトとやらを探し出してさっさとメリナを抜いてもらいましょう」

「そうだな。エミリオ、メリナ、疲れたらいつでも言うんだぞ」

「はい!」

「う、うん」


 器用に目尻を下げて微笑むラルゴにエミリオとメリナはそれぞれの反応を返した。ラルゴは強面だが(何せ見た目は完全に虎だ)、心根はここに居る誰よりも優しい。


 しばらく歩いているとリュカが何かを見つけた。


「見てください、あのダンジョン。まだ踏破されていませんよ」

「ほんとだ。レベルはどれぐらいだろう?」

「ここからじゃ全く見えんな」


 僕とラルゴは目を細めてダンジョンの前の看板を読もうとしたが、生憎全く読めない。その時、後ろから元気なエミリオの声が聞こえてくる。

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