「うぐぐっ、鼻血を出してるのに顔を蹴るなんて酷いぞ」
「変態が悪いんです。比念は変態です」
「そうだぞ、釣枝。変態が全て悪いのだよ」
「そもそも誰のせいで鼻血を出してるのか説明してもいいかっ?」
※
むふふふふっ、わったしっの、靴下っに! 比念の鼻血がついたー!
ひゃっほー! きたよー! かみさまありがとーですー!
このお礼は比念の命令には絶対に従わなければならない権利で手を打ちましょうじゃないですかっ。いやそれってどう考えてもご褒美ですよね? ええそうですともっ、わたしにとっては特大級のご褒美ですからっ!
比念はわたしに何を命令するんですかっ?
オレの匂いを嗅げって言われるんですかっ?
勿論構いませんよっ! 嗅がせてっ! 比念の匂いを嗅がせて!
むしろ嗅いでっ! わたしの匂いを身体中余すところなく嗅ぎ回してぇっ!
でもダメですっ、そんなに顔を近づけたら恥ずかしすぎて真正面から比念の顔が見られなくなるじゃないですかっ! でもでもそれでも比念は嗅ぐんですよね? 無理矢理わたしの匂いを嗅ぐんですよねっ? ええっ、我慢しますよ! それが比念の望みなんですからっ! だから匂いはっ、わたしの匂いはっ、お気に召しましたかっ?
そしてわたしの体はお召し上がりになりますかっ!?
……はぁっ、はあ……っ、ふぅ……っ、興奮しすぎて体が火照ってしまいましたね……。
こんなわたしを見て、比念はまたよからぬ妄想をするんですよね? そんなことは想定の範囲内なんですからね。思う存分にわたしを使って妄想するといいですよ。そして妄想だけで我慢できなくなったらその時は遂にわたしに手を……手をっ、手を出すんですね!
今夜は比念が夜這いに来るかもしれませんからベッドに横になって待機! ということはつまり栄養のあるものをたくさん食べておいた方がよさそうですね、いろんな意味で!
鼻血を出したせいで鉄分が足りなくなるかもしれませんから、その代わりに私の真心と愛情と匂いがふんだんに込められた手料理で悩殺してやるです!
顔面を蹴るのはさすがにやりすぎかなーって思いましたけど結果オーライですよね?
だって比念は優しいはずだもん。わたしに対する感情も接し方も態度も全て全て全て特別だから問題ないですよねっ?
にしし、この靴下は洗わないで大事にとっておかなくちゃですね。お姉ちゃんに見つからないように、いつものあの場所に……っと、その前に、比念の血の匂いをまだ生暖かいであろう今のうちに嗅いで脳髄を刺激しておきたいですね。
お姉ちゃんは……よしっ、居ませんね。
わたしの部屋の中には勝手に入らないように言いつけてありますから一安心です。
これで思う存分に比念の血の匂いを嗅げるってもんですっ!
くん……くんくん……はすはす……あふぁっ、くんかくんか……っ。
……もう、だめ。……の、のぅみそが……溶ろけそう……です……んっ、あ……っ。
いかんです、いかんです、こんな素晴らしいことをしてる場合じゃありませんでした。
比念の匂いを堪能するのは寝る前になってからにしましょう。いやでも寝る前に堪能したら興奮して眠れなくなる可能性大なのが気になりますね。……ううっ、でも今はとにかく我慢です。今現在、わたしには比念をデートに誘うという人生最大級の試練が待ち受けているんですからねっ!
これで比念との距離をぐぐっと縮めて、手を繋いで、肩を並べて、はすはす……じゃなくてっ! わたしとの約束を思い出させてやるですよ!
待っててくださいです、比念ッ!
必ずや、わたしのことが好きで好きでどうしようもないほどの変態であった頃の比念を取り戻してみせるんですからねっ!
……くん……くんかくん、か……、……はっ!?