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第22話 文明の破壊神


《浅麦 誠》29→19



「ケホッ!ゲホッ!?」


なんつう衝撃だよ……肺の中の空気が殆んど吐き出されたぞ


「ターンエンド、この程度なのかい?」


あぁ……でも良いねぇ……いい感じに調子に乗ってる


現在のユニット死亡カウントは18、理想を言えばもう少し稼いでおきたかったが十分だ


「俺のターン」


俺は山札からカードを引き、フィクスシャッフルで仕込んでおいたこのデッキのエースカードを当てる


「クックックックッ……アッハハハハハ!」


俺は自分の手札と相手の手札の枚数を見て次のターンで一気に詰みまで持っていけることを確信して思わず大笑いをしてしまう


「な、何がおかしいんだい?

君はこの状況を覆せるなんて思っているのかい?」

「まだ分かってないみたいだな、お前は何で俺がこんなに数を出して時間稼ぎしてたと思ってるんだ?」

「何?」

「俺の持っているカードなら時間を稼ぐだけなら相手の攻撃力を下げるなりもっと体力のある《マインスネーク》や《シールドゴーレム》を使う手だってある。

だが今回の俺はただただHPも低く攻撃力も0な《プチゴーレム》を出し続けるだけで攻撃力も下げず罠も使わない」

「な、何が言いたいんだい?」


俺は邪魔なターバンを外して髪をかきあげて1枚のカードを表にする


「さぁ時は来た!コストとしてMPを2支払い後列中央に『文明の破壊神・ロストディザスター』を召喚する!」

『ーーーーーッ!!!』


《文明の破壊神・ロストディザスター》12/12


後列中央から虚ろな瞳を持った黒い巨人が現れる


一見のっぺらぼうにも見えなくは無いがその姿からは凄まじい威圧感が放たれており、幻影の存在であるはずなのに思わず相手のユニット達が後ずさるほどだ。


「な!?なんなんですかそのカードは!?そのコストでそのスタッツは明らかに可笑しいでしょう!?」


確かに普通ならありえない性能だ、だがこれにもしっかりとした理由がある。

ロストディザスターの本来のコストは20、アルセーヌと同じくコストがあまりにも重すぎて最大MPが限界まで上がっても召喚すら出来ないユニットだ。


だがこのカードが手札にある時、このカードのコストは戦闘中死亡したユニットの枚数分-1されるという能力がある、だがデメリットが無いわけではなかった。


「ロストディザスターの召喚時能力発動!

このユニットは召喚時自分の手札にある全てのユニットカード及び場に存在する自身以外のユニットの全てをゲームから除外する。」

『……………!!!!』


《伝説の大富豪・ルミナス=ゴールディ》7/7→除外

《ルミナスガード》3/2→除外

《ルミナスガード》3/2→除外

《ルミナスガード》3/2→除外

《ルミナスガード》3/2→除外

《ジャックポットミミック》10/10→除外


ロストディザスターが虚ろな口を開けて声にならないような叫びを出すと俺の手札にある全てのユニットカードと相手の場にある全てのユニットが消滅した


この除外効果の恐ろしい所は死亡扱いではない為死亡時効果は発動せず、なおかつゲームからの除外の為一部の例外を除いて消滅したユニットが復活することは無い。

例外である一部のカードに関しても自身のカードをひたすら除外するというデッキコンセプトでなければ使えず、正確には蘇生ではなく除外したカードのコピーの為にコレはスルーする


消滅したあらゆるユニットが光の粒子となってロストディザスターへと吸い込まれると俺の所へと黒い粒子が降り注ぐ


ロストディザスターのデメリット2つ目であり、"このユニットが場に存在する間自分の手札の全てのユニットカードのコストが+5される"


これによって俺が出せるユニットは最大5コストのユニットまでしか出せないがそれを踏み倒す手段も存在している


「MPを6支払ってアビリティカード《エマージェンシーコール》を使用する。

このカードはデッキに《ゴーレム》という名の付くユニットカードが20枚入っていないとと使用できない。

前列の空いているエリア全てに3/3《挑発》持ちの《ゴーレム》を出す!」

『『『ハイジョ、ハイジョ、ハイジョ!』』』


《ゴーレム》3/3《挑発》

《ゴーレム》3/3《挑発》

《ゴーレム》3/3《挑発》


「MPをアビリティポイントに変換して職業アビリティ《隠れる》を使用する。

ロストディザスターに《隠れ身》を付与する!」


《文明の破壊神・ロストディザスター》12/12+《隠れ身》


「ターンエンドだ」


ロストディザスターに《隠れ身》が付与された事で全体攻撃や条件指定の対象ランダムの効果でない限りこのターンの間ロストディザスターに対して攻撃する事は出来なくなる


このデッキ自体はその大半を他の職業でも扱える共通のカードで構成こそしているが盗賊での運用をする際の最大の利点である《隠れ身》、これによって出した後に即死や単体への集中攻撃などで倒される確率は大きく下がり、《エマージェンシーコール》によってランダムな対象への攻撃の対象にされる確率は1/4となる


流石に貫通は食らってしまうのでそこの対処までは無理だが貫通を使ってくる類の相手には前列に出せば良いだけの話なのでそっちも問題はそこまで無い


唯一怖いのは対処ランダムの即死や一番高い能力のユニットにランダムに効果を与える類のカードだ


「お、俺のターン!」


相手の手札はルミナスの効果により全て《メダリオン》に変えられ、更にその《メダリオン》も使い切っている


手札を2枚引いては要るがこの盤面を覆すのは早々無理だろう


基本的にカードゲームは後出しジャンケンのような状況に陥る事が多い。


そうなるとプレイヤー側が考えるべきリスクは盤面を付く替えされた時のリカバリーが出来るかどうかになる


特に手札の枚数が少ない時程この手のリカバリーは難しく、ユニットの完全破壊なんかも結構えげつない効果を発揮する


正直ロストディザスターは誰でも扱える分あまりにも恐ろしい使い道があるカードだとは思う。

仕様条件が相手も含めた場のユニット死亡数の為合わないデッキというものが理論上存在しない


最後の手段としては最高クラスの性能だろう


「な、何か……あれを覆すには……!?」


相手は2枚のカードを見ながら何か無いか考えているがこの顔からは絶望感が溢れ出ている


「前列右側に《メダリオンガードナー》と前列左側に《富豪の使用人》を召喚してターンエンド!」

『ッ!』

『お覚悟を……!』


《メダリオンガードナー》2/6《挑発》

《富豪の使用人》5/4


「俺のターン、前列左右の《ゴーレム》2体で《メダリオンガードナー》に攻撃。」

『『ハイジョ!ハイジョ!ハイジョ!ハイジョ!』』

『ーーッ!?!?』


《ゴーレム》3/3→3/1

《ゴーレム》3/3→3/1


《メダリオンガードナー》2/6→2/3→死亡


「前列中央の《ゴーレム》と《文明の破壊神・ロストディザスター》でダイレクトアタック!」

『ハイジョ!ハイジョ!』

『ーーーーー!!!』

「ぐぁぁぁぁぁぁああああ!?!?!?」


《金田 カケル》HP24→19→7


「更に職業アビリティ《隠れる》を再度ロストディザスターに使用してターンエンド!」


「お、俺のターン!」


金田は山札から2枚のカードをドローする


だがしかし……


「こ、この手札では……降参する。」


金田が降参を宣言することによってフィールドのユニットが全て消失して俺の勝利を表示するプログラムがかなり大きく表示された。

デッキは使用前の状態になるようにカードそれぞれが浮遊して元に戻って俺の手元に来る


降参システム、このゲームは少しでも試合時間の短縮を可能とする為に試合中に降参するシステムが存在している


本当にこのカードが独立して浮遊する仕組みはなんなんだろうか?


『2人はコロシアムから出て1Fの講堂に来てください、その他の生徒は指示があるまでその場で待機していてください』


ん?俺たちだけ先に講堂で?


俺は少し疑問に思いながらコロシアムから出て行く、すると控室に戻った瞬間瞬時に俺の服装は制服へと戻った


「本当にこの世界の無駄に高い技術力は一体なんなんだ?

明らかに前世の世界がこっちの世界と同じ年代にまで進んだとしてもこれ程の技術力に到達するとはとても思えないな……」


そうなるとこの技術力の原因は一つか……


「本気で調べる必要ありそうだな……デュエル世界について」


俺はこの世界の技術力にそこはかとなく嫌な予感を感じながら講堂へと向かっていった




それにしても講堂でなにがあるのだろうか?



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