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第19話 合同授業と新たなユニークレア

日のホームルームの時間、教室で俺達は先生から今日の予定を聞かされていた


「知ってる奴もいると思うが今日の実技の時間はFとの合同授業となっている。

基本的にデュエルは全員D対Fになるように組んであるから他のクラスにどんな奴がいるかしっかりと確かめてこい」


今の所集めることが出来た情報ではF組の中で特に強いのは2人


1人は昨日も話題に出たユニークレア持ち、もう1人はユニークレアこそ無いが召喚時効果のあるカードを軸に反撃重視の立ち回りを行う後出し型のデッキ使い


正直俺としてはユニークレア持ちよりも圧倒的に後出し型のデッキ使いのが面倒くさい


ユニークレア持ちに関しては別にメタるだけならいくらでも手段はあるのだが後出し型はデッキコンセプトの都合上かなり慎重な立ち回りをする為にこっちが用意した罠にはハマり辛い


今回のクラス対抗のデュエルをどのデッキでやろうか考えていると先生がニヤリとした笑みを浮かべながら俺へと視線を向ける


なんか嫌な予感がするんだが?


「それと今回の実技は実技棟地下にあるコロッセオ型デュエルフィールドのお披露目も兼ねてデモンストレーションとしてお互いクラスの代表者によるデュエルを行う」


ん?ちょっと待てまさか?


「浅麦、お前はこのクラスで一番勝率が高くユニークレア持ちだ。

最近は同じユニークレア持ちの久慈川も勝率を上げているが私としては今このクラスで一番強いのはお前だと思っている。

引き受けてくれるな?な?」


なんか断る事は断じて許さんと言わんばかりの圧力を感じる……


そして後ろからは何名かの射殺すような視線と憐れみの視線が向けられた


とてつもなく複雑な気分なんだが……


「はぁ……分かりました」

「宜しい!

あぁ、言い忘れていたが今回の合同授業で勝利数が一番多いクラスにはボーナスとしてクラス全員にバウンティポイントが通常より多く配られる。

そして先生である私にはボーナスとして給料が更に入るから何としても勝ってくれたまえ!私の研究費用の為に!!」

「「「ヲイ!?」」」


クラス全員から総ツッコミが入った……松戸先生ぶっちゃけ過ぎにも程があるだろ




授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、皆のタブレット端末へと入力する手が止まる


「っと……もう時間か。

それでは授業はここまでとする、今日の午後の事は聞いてるから今日の宿題は無しにしといてやる。

それじゃ午後頑張れよ」

「起立、礼」

「「「ありがとうございました」」」


午前の授業が終わり、昼休みに入る


午後の事もあってかクラス中の雰囲気がピリピリしている中、俺は久慈川さんと食堂へ向かい、昼食を捕りながら午後への対策を立てて行くことにした


「はむ……それにしてもクラス代表なんてすごいですね」

「ズズッ……その分また実力至上主義者からの敵意も増えたけどな」

「その……なんで浅麦君の事をそんなに目の敵にするんでしょうかね?

実力至上主義って言うくらいですから強い人こそが正義みたいな考え方のはずなんですよね?」

「単純に俺が正面戦闘を極力しないからだろ?

ユニットのパワーで戦うのは俺の職業上向いていないから基本的に俺のデッキの殆んどが絡め手ありきの物だしハマらなければほぼほぼ負ける。

理屈がめちゃくちゃな気もしなくはないがあいつらはどうにもその手の戦術を実力だとは認めたくないらしい……これ美味いな」

「今まで考えた事も無かったけどなんか変に矛盾してるよね……はむ」


まぁでもあいつらの理屈考えるとすると一番現実的な理由としては自分達が上の立場に立てなくて好き勝手出来ないからっていうのもありそうだがな。

あの手の連中は自分よりも上の奴を認めたがらないものだ


それにしても久慈川さんがパンを口にしている姿がやたらと小動物のようでかわいらしいな……


「浅麦君は今日はどんなデッキで行くつもりなんですか?」

「ん?あぁ、それなんだが少し迷ってる」

「迷ってるですか?」

「相手の構成はユニークレア持ちなだけあってすぐに情報が集まったからメタるだけならいくらでも出来るんだがそこまでやる必要性も感じなくてな」

「浅麦君のカード保有量とデッキの種類ホントに多いね。

どうしてそんなにいっぱいデッキ作れる程持ってるの?」

「ん?あぁ、単純な話だよ。

盗賊専用のカードは基本見向きもされないから捨て値で売られるなんてのはよくあるんだ。

だからそっち集めて職業共通カードは出来るだけ相性の良いのを探してる」


まぁ職業共通系のカードは全ての人に需要があるからその分高いわけだが……ネット大会とかも荒らしてたおかげで金だけはあるからなぁ


「F組の人はどんなデッキなんでしょうかね?

私はユニークレア持ちとだけしか聞いてなくて……」

「俺も情報集めをしてみたんだが現状分かってるのは職業とデッキの傾向、ユニークレアの性能くらいだな。」

「それだけわかってれば十分なんじゃないですか!?」


久慈川さんはツッコミを入れるが万全な対策をするのであれば出来ればデッキの中身のカードをもっと知りたい所だ。

いくらエースカードだけ分かっていてもそれだけで勝負が決まるわけじゃない


俺だって戦術次第ではユニークレア自体をそもそも採用しないなんてのも珍しくはない


今回のデュエルでユニークレアを使わない選択もあるにはあるんだが……


「デメリットキツイのもあってまだ調整が終わってないがあれ使うか……」


俺は懐から1枚のユニークレアカードを取り出す


強力ではあるんだがあまりにもドギツイデメリット持ちの為カードショップの棚でそれなりに安値で肥やしとなっていたカードだ


この手のカードはユニークレアでもオークションにかければ結構な値段になるんだがどうも店主はこのカード自体に価値を感じなかったのか放置していたらしい


カードショップ巡りはこういう掘り出し物が見つかるからやめられない


まぁ肥やしになっていたとはいえ10万円は持ってかれたんだがな


「そのカード……!」

「久慈川さんも気付いた?このカードの魅力とリスクを」


俺は更に懐から複数枚の相性が抜群に良いカードを取り出す


すると久慈川さんは顔を引き攣らせる


「…………浅麦君って性格悪いってよく言われませんか?」

「褒め言葉だな」




昼休みが終わり、俺達のクラスは全員実技棟へと移動する


俺とF組の1人は先生達の指示に従い、それぞれ別の入り口から実技棟の地下へと入っていく


ただ相手のクラスの代表者が俺を見る目には明らかな敵意を感じる


例によって実力至上主義者かい……


なんかこの学園やたらとコイツラが多い気がする……後で情報集めとくか


俺は進んだ先にある控え室で先生達からの合図を待つ間に相手の情報を整理する


今回の相手は噂のユニークレア持ちで職業はギャンブラー


正直この世界は職業があまりにも多すぎて基本職を覚えるだけでも大変なんだがギャンブラーはその基本職の中でも特にマイナーかつ異質な職業だ


ギャンブラーの専用カードに多く含まれる能力は《ギャンブル》……つまり賭けるという能力


これは一部のカードの効果で手札に加わるトークンカード《メダリオン》を消費する事で発動し、複数設定されている効果の中からランダムに発動される。

ただこの効果は一部のカードの効果である《イカサマ》によって自分自身が選ぶなんてのもある為完全な運ゲーかと言われるとそうではない


もう1つ厄介な能力が《オールイン》


こっちは発動時に手持ちの全てのトークンを失う変わりに消費したトークンの枚数に応じて複数の効果を発揮する


わかりやすく例えるなら俺のアルセーヌグリードのような能力だ


ただ《オールイン》にはアルセーヌのような能力追加系も居れば消費した枚数分だけ能力が上昇するなんていうカードもある


それに調べた限り《古の山賊王》の《ギャンブル》をトリガーとしたようなバージョンのカードも確かあったはずなのであまり時間をかけ過ぎるのも良くはないんだがそっちは俺が今回持ってきたユニークレアが刺さっているので調子に乗って出してきたら一網打尽にするとしよう


ギャンブラーの職業アビリティは3つ。

・場にいる全員の《ギャンブル》効果の強制発動である『大盤振る舞い』。

・手札に《メダリオン》を4枚追加して手札にある全てのメダリオンに《ギャンブル》での消費時に効果を選べる《イカサマ》を付与する『マジック』。

・《オールイン》の効果を最大、上限が無い場合は5段階まで上昇させる『一点賭け』


今回の相手はなかなか楽しめそうだ



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