「俺自身で《宮廷鍛冶職人》に攻撃する。
セイヤッ!」
『ガフっ!?ただでは負けんぞ小僧!』
「っぐ!?ターンエンド」
《宮廷鍛冶職人》3/4→3/1
《浅麦 誠》HP26→25
《守護者の剣》3/2→3/1
俺はフィールドへと足を踏み入れ、手に持っている剣で斬りつけるがハンマーによる反撃を受ける
《守護者の剣》の効果により《宮廷鍛冶職人》の攻撃が直撃する前に軽くバリアが張られ、食らった際の威力は減衰しているためそれなりに衝撃は軽くなって入るがやはりそれなりの衝撃が来る
一先ずこの状況下なら《古の山賊王》に《宮廷鍛冶職人》の攻撃が来たとしても反撃で倒した上で普通に生き残れる。
更に『盗賊団の用心棒』の攻撃力は4の為例え武器で倒しに来たとしてもそれなりにキツイしっぺ返しが来る。
それに《古の山賊王》は一気に相手を削るアタッカーではあるが複数枚ことデッキに入っている為最悪捨ててもそこまで問題はない
このデッキには《古の山賊王》のようにデッキ外のカードを手に入れた枚数に応じて効果を及ぼすカードがいくつもある為に後半になるにつれてどんどんコスト詐欺か起こっていくのだ
早い話このデッキは大器晩成型とも言える
「クソッ!俺のターン!」
財前の奴はかなり迷う素振りを見せる
あの様子だと恐らく選択した相手に直接ダメージを与える類のアクションカードやユニットへの強化カードは持ってない、または効果が持続しない、強力だからこそ使いにくいと言った所だろう
そうなると財前のデッキは武器での攻撃主体でのウェポンデッキと呼ばれる類のデッキで確定だろう
このデッキのメリットとしては武器の強化効果を持つユニット等を出し続ける事によって武器による攻撃能力を強化し続け、プレイヤーによる攻撃で盤面を制圧、又はプレイヤーに致命傷を与える事を主題としたデッキであるという点だ
武器の強化は壊さない限り継続するのもあり、武器攻撃力が10を超えるのも珍しくない。
だが武器で攻撃し続ける以上はプレイヤー本人にもダメージが返ってくるため若干リスキーなデッキでもある
俺としてはそれだけ武器での攻撃にこだわるのであれば何故全体攻撃等のアクションカードを使わないのかがどうにも疑問なんだがな
ユニットのパワーが足りないのであればアビリティカードで補えば良い物を……それに武器を多く入れすぎている気がしている
「《宮廷鍛冶職人》をもう1体後列左側に召喚して残りのMPをアビリティポイントに回す!
持ったいねぇがアビリティポイントを16支払い職業アビリティ《鉄壁》を使用する!
次の俺様のターンまで俺様が受けるダメージはマイナス3される!」
《宮廷鍛冶職人》3/4
《炎の魔法剣》4/1→5/2
《財前 益男》HP25(被ダメージ−3)
むっ、時間稼ぎに来たか
武器メインな上にパワープレイが好きそうだから攻撃系なアビリティを選択していると思ったんだがハズレか
「俺様自身で《盗賊団の用心棒》に攻撃!オルァ!」
『がはっ!?』
「グッ!?ユニット死亡によって《炎の魔法剣》の効果発動!燃えろ!」
「あつっ!?」
《盗賊団の用心棒》4/4→死亡
《財前 益男》HP25→24
《炎の魔法剣》5/2→5/1
《炎の魔法剣》の効果発動
《浅麦 誠》HP25→23
「更に《宮廷鍛冶職人》でダイレクトアタック!」
『さっきのお返しじゃあ!』
「がっ!?」
《浅麦 誠》HP23→20
「ターンエンドだ!」
「俺のターン」
正直ここは盤面の展開を優先せざるを得ない。
プレイヤーへのダメージが3点も減らされている為、攻撃した所でまともなダメージが入らない以上プレイヤーへの攻撃は次のターンまで待つほうが賢明だ
「コストとしてMPを2支払い、アクションカード《卑劣な連携》を使用する。
後列左側の《宮廷鍛冶職人》に2点のダメージ!」
『ガハッ!?』
《宮廷鍛冶職人》3/4→3/2
《宮廷鍛冶職人》の背後に黒尽くめの何者かが現れてその手に持ったナイフで《宮廷鍛冶職人》を突き刺してから姿を眩ませ、俺の元へと1枚のカードが戻ってきた
「《卑劣な連携》の効果発動、このカードは使用後に《卑劣な連携・弱》となって手札に返ってくる。
そして《盗賊団のアジト》の効果によってコストを支払わず《卑劣な連携・弱》を使用する、前列右側の《宮廷鍛冶職人》に1ダメージ!」
『うぐぁ!?』
《宮廷鍛冶職人》3/1→死亡
手札に戻ってきた《卑劣な連携・弱》はデッキに入っていないカードの扱いの為これだけでも俺のデッキのカードシナジーとしてはとても良いカードだ
更に《盗賊団のアジト》の効果によりデッキに入っていないカード扱いの《卑劣な連携・弱》のコストは1コストではなく0コストとなる為かなり使い勝手が良い
そしてダメージを与えながらデッキ外からカードを持ってくるカードは他にもある
「コストを3消費してアクションカード《盗人の一撃》を使用!
《宮廷鍛冶職人》に2ダメージを与え、相手プレイヤーのデッキからカードを1枚奪う!」
『ひ、卑怯な!?』
《宮廷鍛冶職人》3/2→死亡
どこからとも無く現れた吹き矢で動きを封じられた《宮廷鍛冶職人》はまた黒尽くめの盗賊に切り裂かれ、消滅していく
更に財前のデッキから1枚のカードが俺の手札へと加わった
これでデッキ外から得たカードの枚数は8枚、今回は相手が武器型だったからここまでスムーズに行けたがユニット主体だった場合はここまで上手くは行かない
ユニットの処理と盗むのを並行して運用するとなるとどうしても盤面が弱くなりがちの為このデッキは一気に複数のユニットを出されるとどうしても弱いのだ
まぁ事前にアイツが使うデッキはある程度調べはついていたからこのデッキを選んだのもあるんだがな
勝負は始まる前から既に決まっているとはよく言ったものだ
「更に1コストを支払い前列中央に《プチゴーレム》を召喚してから残りのMPをアビリティポイントに変換してターンエンド」
『ッ!』
《プチゴーレム》0/1《挑発》
このカードもユニットとして弱いという事であまり注目されていないカードだが1コストで使える《挑発》持ちというだけで俺はかなり強力なユニットだとは思う
確かに攻撃力もない上にHPは1な為序盤に出した所で時間稼ぎにすらならないだろうがこれは守りたいユニットがいる際の時間稼ぎとしてはかなり最適なカードだ、コストも最低の為こちらの動きも殆んど邪魔しない
とはいえ《盗賊団のアジト》の耐久値はあと1か……次のターンまでしか持たないな
「クソッ!なんで俺様がこんな雑魚カードなんかに煩わされなきゃいけねぇんだよ!」
「確かに盗賊はユニットのパワーやカードの効果はそこまで強くないのが多いさ、だが塵も積もれば山となるって言葉を知ってるか?
盗賊デッキの正しい運用方法はカードシナジーを噛み合わせる事なんだよ!」
「う、うるせぇ!俺様のターン!
コストを4支払い《熟練の鍛冶屋》を前列左側に召喚する!
召喚時効果で《炎の魔法剣》を更に強化する!」
『そら、大事に扱え』
《熟練の鍛冶屋》2/5
《炎の魔法剣》5/1→6/2
「残りのコストを使って前列中央に《ソニックバード》を召喚する!」
『ピーー!!』
《ソニックバード》3/1《先制攻撃》
「《ソニックバード》で《プチゴーレム》に攻撃!」
『ピーー!ピャァァァ!!』
『ーーーーッ!?!?』
《プチゴーレム》に向かって《ソニックバード》は空高くから急降下して貫通していく
「俺様自身で『古の山賊王』に攻撃!」
『オノ……レ……!』
「あぐっ!?」
《古の山賊王》3/6→死亡
《財前 益男》HP24→21
「ターンエンドだ」
「俺のターン」
《古の山賊王》がやられたのはかなり痛いが先程のターン開始時のドローで予定通りにこのデッキの切り札となるカードを引いた
だが最大効果を引き出すにはまだ少し足りない
こちらの手札の枚数は5枚、手札オーバーは起こさないな
「アビリティポイントを14支払いもう一度職業アビリティ《奪う》を使用する」
俺は更に山札から2枚を奪い、これにより俺がこのゲーム中に手札に加えたデッキ外のカードは10枚になった
「さぁピースは揃った……覆せるもんなら覆して見ろよ?」
俺は笑みを浮かべながら頭のターバンを外して髪を上げる
「仕上げだ!コストとしてMP8を全て消費し《強欲なトリックスター・アルセーヌ=グリード》を前列中央に召喚する!!」
『フハハハハハハハハッ!!』
「なっ!?ユニークレア!?」
《強欲なトリックスター・アルセーヌ=グリード》2/2
まるで嘲笑うような笑い声を上げながら前列中央の枠に現れた魔法陣から赤黒い光を放ちながら黒いコートにペストマスク、羽根付きの帽子を身につけた長身の男が現れる
俺がこの世界に生まれて初めて手に入れた最初のユニークレアであり、ネット対戦での俺の名前の由来となったカードだ
「攻撃力めHPも2?ユニークレアだからビックリしたが随分と雑魚じゃねぇか!」
「《強欲なトリックスター・アルセーヌ=グリード》の召喚時効果発動、このゲーム中に手札に加わったデッキ外のカードの枚数に応じて様々な効果を得る!」
アルセーヌの効果で得られる物は加わった枚数5枚で攻撃力及びHPに+3、7枚で先制攻撃、そして10枚の場合それらに加えて更にある効果を得る
《強欲なトリックスター・アルセーヌ=グリード》2/2→5/5《先制攻撃》
「デッキ外のカードが10枚加わっている場合相手のデッキから3枚のランダムなユニットカードを奪って空いているマスに召喚し、このターン中召喚された全てのユニットに《先制攻撃》を付与する!」
「なっ!?」
『このお宝達は吾輩が有効活用させていただこう!』
デッキから3枚のカードがアルセーヌによって引き寄せられ、空いている前列右側、前列左側、後列右側によって召喚される
《ソニックバード》3/1《先制攻撃》
《力自慢のドワーフ王》7/6《先制攻撃》
《戦う鍛冶師》1/2《先制攻撃》
よし、これなら当たりだ
どうしてもこの盗むカードはランダムな為カードパワーが弱いユニット3枚なんてのも珍しくはないがこれだけの攻撃力なら十分にリーサル圏内だ
「そ、それならギリギリ耐えれる!
まだ終わっちゃいねぇぞ!」
「いいや、リーサルだ!
コストを支払わず後列中央に『古の山賊王』をもう一枚召喚する!」
『ォォォォオオ!!!!』
「なっ!?だがそいつには《先制攻撃》は……まさか!?」
「そのまさかさ!アルセーヌの効果は《古の山賊王》にも適応される!」
そう、コレが《古の山賊王》がこのデッキ最大のエースとなっている理由だ。
アルセーヌによる《先制攻撃》付与によって2枚もの2回攻撃持ちがノーコスト召喚されて殴ってくる
「さぁ!俺含めた全員でプレイヤーにダイレクトアタックだ!」
「ふ、ふざけんなよ!なんだよそれ!
インチキにも程があんだろがぁぁぁぁぁぁぁああああ!?!?!?」
《財前 益男》HP21→18→15→8→7→4→1
『それでは……ごきげんよう』
アルセーヌは財前の額に銃口を向け、その引き金を引いた
→−4
winner
《浅麦 誠》