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第9話 最初の授業と売られた喧嘩

入学式の翌日、俺は少し早めに起きて朝からデッキ構築を調整し始める


正直初日からあそこまで因縁つけられた以上下手に確実性の低いデッキで戦うとまた因縁つけられる可能性がそれなりに高く、はっきり言って相手するのが面倒くさい事この上ない


そうなるとこちらとしての対処法としてはぐうの音も出ないほど完璧に叩き潰すのが一番の方法であり、今回は特殊勝利やデッキ破壊は無し……いや、一応2回戦以上やる可能性を考慮してこっちも持っていく必要はあるか


俺は入学祝にと工作が得意な友人から貰った回転式の携帯用デッキケースを展開して特殊勝利型とデッキ破壊型のデッキをセットする


残り2つには先程組み終わった罠型デッキとデッキの中には入っておらず、カード効果によって入ってくるカードを軸に戦うトークン型デッキをセットして腿に着けているデッキケース装着用のベルトに取り付ける


時間を見るとまだそれなりに時間はある為俺は軽く身だしなみを整えつつ食堂で朝食を済ませてから寮を出る


少し早いくらいの時間に寮を出たのだが学校への通学路にはかなりの数の生徒が既に歩いており、今日の授業が楽しみと言った声やどんなデッキのやつがいるのだろうと言った声が多い


「…………やっぱり一つか」


俺は周囲にいる生徒達を見て回ったがやはりというべきかデッキケースを一つだけしか装着していない生徒がかなり多く、俺のように複数のデッキを同時所有している人物は一人も居なかった


これもこの世界の若干理解し難い考え方の一つなのだがこの世界の人々は基本的に一つのデッキを調整し続けて強くなることを至上とする考え方が多い。

理由としてこれもデュエル世界が関わってくるのだがカードに愛着を持てば持つほどそのカードを依代としてデュエル世界を超えて現実世界で会うことが出来るという眉唾物な噂話が存在している


一応ずっと使い続けていたエースカードがユニークレアへと変化した等という例も無いわけじゃないし実際にカードの存在がこの世界に実体化した例は存在する


だがたった一つのデッキしか使わずに勝ち進める事が出来るほどカードゲームの環境は甘くない


カードゲームと言うのは俺の前世の世界じゃどうしても環境デッキと言うのが複数存在する。

簡単に言ってしまえばそのデッキさえ使っていれば今の環境ならかなり勝ちやすいと言う風に言われるシナジー、カード効果、バランス等が最高クラスのデッキの総称だ


基本的にランキングの上位帯の人物はその環境デッキをそのまま使うかそれを主軸に自分が使いやすいようにカードバランスを若干組み直したデッキを使う人物が多い


それ故に同じコンセプトの環境デッキ同士がぶつかり合うという所謂ミラーマッチというのも珍しくは無かったのだがこの世界だとそれが全くと言っていいほど起こらない


理由としてはカード総数が多すぎる上にカードパックの種類も相当豊富であり、前世だと公式ルールて使って良いカードの範囲がある程度定められていたがこの世界ではそれが存在しないというのも理由の一つだ


ある程度どのカードが使われやすいかみたいなのは調べがついてるしやろうと思えば環境デッキも作れなくは無いだろうがカードの価値が異様に高いこの世界でそれを公開してやるにはちょっとデメリットがあまりにリスクが高く、下手したら買い占めや高額転売、強奪等ろくなことにはならないだろう


「ほんと物騒な世界だ……」


俺は思わずそう口にしてしまった


考えれば考えるだけ嫌な考えが頭に浮かぶ。

この世界はあまりに治安が悪いの


そんな事を考えながら歩いているとすぐに学校へと到着した




教室に到着してから授業用タブレットにインストールされているデータを読んで軽く勉強しながら時間を潰しているとすぐにチャイムが鳴って担任の葉風先生が入ってくる。

どうやらホームルームの時間のようだ


若干数名からの視線が若干気にはなるがこの辺は気にしても仕方ないだろう


「お前ら〜静かにしろ〜ホームルームが始められんだろうが」


先生の言葉で先程までワイワイと授業の事等で盛り上がっていたクラスメイト達が口を閉じてようやく静かになる


「さて、今日の授業は事前にインストールしといたデータでわかっていると思うが早速『実技』の授業から入る。

これには少し理由があって単純にまずお前らの強さをお互いに把握させる為ってのが目的の一つだ」


やっぱりか……とはいえここはデュエル学園、流石にそれだけということはないだろう


「もう一つの目的……いや、最大の目的はお前達にこの学園最大の制度であるバウンティシステムを実際に体験させることにある」


バウンティ……どう考えても意味は賞金稼ぎの方だろうな。

嫌な予感しかしない


「実際にどういうシステムなのかは実際の授業で教えることになっている。

一先ずまだお前たちはこの学校の設備やらはまだ把握しきれてないだろうからまずはデュエル用の実技棟へ向かうぞ」

「「「はい」」」


俺達は先生に言われて荷物としてタブレット端末を制服に備え付けられている専用のポケットへと入れて向かう


授業がこのタブレットメインなのもあってこの手の教室移動では持っていく必要のある荷物が少なくて済むのはかなりありがたいな




教室を出てしばらく移動をしていると一端教室や職員室等が集中している座学棟を出て実技棟へと入った。

実技棟は5階立ての建物であり、そのすべてに大量のデュエルフィールドが設置されている


おそらく全生徒がこの棟のデュエルフィールドを使ったとしてもある程度は余るだろう


そして地下にはドーム状の地下空間が広がっており、大量の観戦用の席と中央には超大型のデュエルフィールドが設置されており、かなり臨場感のあるデュエルが見られるらしい


正直この学園の設備にどれ程の金がかかっているのかを考えると絶対にとんでもない桁の金額が消し飛んでいそうなので俺は途中で思考を放棄する


実技棟の1回のある部屋に入ると、そこには10台のデュエルフィールドとモニターが設置されており、正面にある大型モニターの前には実技の教師と思われる人物がいた


「諸君初めまして。

俺が実技担当の教師の一人である『荒木健二』だ」


モニターに荒木先生の名前が表示され、いくつかのプロフィールが表示される


「さて、入学早々で悪いが君達には今から二人組を作ってもらい何回か組み合わせを変えてデュエルを行ってもらう。

事前説明はある程度葉風先生から行われていると思うが今回の授業ではこの学園の仕組みの一つであるバウンティルールを疑似体験してもらう。

君達のタブレットにあるデータを送信しておいた、確認してくれたまえ」


俺はポケットからタブレット端末を取り出して送信されたデータを早速確認する


『実技用バウンティシステム』という物が新たに追加されているのでおそらくこれのことだろう


早速それを起動するとタブレット端末にバウンティポイントという表示と2000という数字が表示される


なる程な……入試の時のアレと似たような感じか


「君等には見ての通り2000のバウンティポイントが支給されているだろう。

これは入試でやった事に近いが、このバウンティポイントはお前達の賞金でもあり、持ち点でもあるお前達のうちどちらか一方が勝てば相手が持っているポイントの半分を奪える。

本日与えるポイントはあくまでも仮のものであり授業が終わった後には消失する。

だが今日の授業でどれだけのポイントを稼げたのかは我々の評価に関わるので積極的にバトルの回数を稼げ」


今回は入試と違って目標値が設定されていない変わりに制限時間内にどれだけポイントを稼げるかということか。


「あぁ言い忘れていたがお前達の持ち点は常にこちらの大型モニターに表示される。

基本的に持ち点の多いやつ程狙われやすくなるから注意しておけ」


荒木先生がそう言うとモニターに俺達クラス全員の名前と持ち点が表示される


狙われやすいとは言うがこれ持ち点の多いやつ程むしろ逆に稼ぎやすい気がする。

とはいえ持ち点の少ない側からすれば一発逆転のチャンスであり、元々の持ち点が少ないやつなら例え負けてもデメリットは少なく一発逆転が狙える分かなり大きいメリットがあるか


そんな事を考えていると昨日突っかかって来た奴がこっちに強い敵意をまた向けてくる


はぁ……分かっていたがやはり喧嘩を売ってきたか、予定通り完膚無きまで叩き潰すとしよう


「おい盗賊野郎!俺とデュエルしやがれ!

テメェがこの学園に相応しくないってことを俺が証明してやる!」

「はいはい、御託は良いからさっさとセットしろ。

時間が勿体ないしオマエに時間をかけてる意味がない」

「テメェ!」


はいチョロい、挑発に簡単に引っ掛かる奴程基本的に冷静な判断が出来るやつは居ない。

場の状況のコントロールと読み合いは今回は楽に済みそうだ


そして俺は軽く挑発しているうちに既にデッキケースを一つ取り出してデュエルフィールドに接続し読み込みを終わらせた。

こちらの準備が完了した所で相手もデッキケースをセットする


デュエルフィールドが光を放ち俺の意識が一度暗転し、また闘技場のような場所へと飛ばされる


どうにもこの感覚は慣れないな


闘技場の門をくぐり、中に入場してから少しすると相手のプレイヤーも入場してくる。

見た所服装は武道着にハチマキ……つまりは格闘家か


格闘家は比較的全体的なコストが低い為にユニットが多く出てくる事が多い


アビリティに関してはドロー加速+デッキ外の格闘家専用トークンカード入手や複数回ダメージ、味方への火力アップの3択になってくるがドロー加速型は要求アビリティポイントが極端に低い為地味に凶悪だったりする


さて、相性は良さそうだが上手く嵌まってくれよ?


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