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第7話 入学式と最強の証明

「ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピッ!ピピpi……』




もう朝か……


「ふぁぁぁぁぁあ」


俺は欠伸をしながら目覚ましのアラームを止めて起床する


それにしても……


「まさか個人の部屋に台所に大型の冷蔵庫、テレビにレンジに各種食器類、その他トイレにシャワー室に洗面台て……とはいえこの人数が一度に生活する寮だから一箇所は数箇所程度だとめちゃくちゃ混むんだろうな」


正直最初に感じた部屋の印象としてはもはやホテルにしか見えなかった


俺は歯を磨きながら、一先ず今日の入学式の事について考える


「…………ペッ。

入学式……正直この学園の事だから初日からなんかありそうなんだよなぁ……。」


この学園の制服はプレザーやスラックスが黒とか紺ではなく何故か青なんだよなぁ……アニメとかだと稀に見るカラーリングだがいざ現実で自分が着るとなるとちょっと気恥ずかしさがあるな


事前連絡で今日は通学用のバッグと文房具、それとデッキ等のDaL関連の周辺機器含めた道具以外は要らないとの事なので俺はバッグに文房具と簡易デュエルフィールド、それからポケットにデッキケースを複数入れておく


俺は相手を上手く嵌める都合上常に複数のデッキを持ち歩いてある程度手の内がバレても問題ないようにしている


まだ少し時間があるな……


身支度と着替えが終わった俺は部屋に備え付けてあるコンピューター端末を操作してディーチューブというこの世界ではポピュラーな既視感しか無い動画サイトにアクセスする


「さて、公式戦の映像とかは……あったな。」


俺は早速目的の動画を発見したので再生する


俺が探していたのはこの学園の生徒会長の対戦記録であり、実際にどのような戦いをするのかをしっかりと確認し、念の為対策を立てておきたかった




序盤から中盤までの動きは比較的他の奴らとそこまでは変わらない。

ただ動きの傾向としてプレイヤーが攻撃に加わることが出来るようになる武器カードを常に装備し、召喚時に消費したアビリティポイントとは別口に指名された数値分アビリティポイントを増加させる効果である《アビリティブースト:n》を多用しているように見える


若干厄介なのが会長自身が積極的に相手プレイヤーのユニットを攻撃しているため反撃によるダメージが会長に入ってはいるが盤面が常に有利を取られている


だが一番恐ろしいのは別にあった


『私はコストとしてMPを6支払って《神速の聖剣》を装備!職業アビリティ《勇者の雷》によって《神速の聖剣》をこのターンの間攻撃力+3し、《超貫通》を付与する!』


6コスト武器である《神速の聖剣》、これの効果はプレイヤーを狙った攻撃が出来ない変わりに1ターンに《2回攻撃》を可能とする武器で攻撃力は1と低いが耐久が4ある2回攻撃を最大2ターン続けて行うことが出来る武器だ。

これが生徒会長の職業である《勇者》の職業アビリティ《勇者の雷》によって攻撃力が4となり、後列と相手のプレイヤーにまで全く同じダメージを与える事の出来る能力である《超貫通》が付与される


こんな攻撃をされた側としてはたまったものじゃない、少なくとも2列の最大4体のユニットが最低でも4ダメージを受け、プレイヤー側には無理矢理8点ダメージを押し付けるのだから


しかも《アビリティブースト:n》のせいで《神速の聖剣》を装備する頃にはアビリティを2回は連続して使える程のアビリティポイントが貯まっている。

流石に2ターンで防ぎようのない16点のプレイヤーへのダメージは俺でも無視できない


流石に他にもデッキは用意してあるのだろうがこのデッキの脅威度は凄まじかった……しかも会長の入れているユニットの中にはダメ押しとばかりに召喚時に装備している武器の攻撃力と耐久値を増やすようなユニットまで存在していた


ちょっとコレは生半可なデッキじゃ対策すらままならないな


動画を視聴し終わる頃には朝食にちょうどよい時間となっていたので俺は食堂で食事を軽く済ませてから少し早い時間だか学園へと登校することにする


「よっと……早速向かうか」


俺はカードキーを抜き取り部屋の電気を全て同時に消した後本校舎に向けて移動する


通学路となる寮から本校舎にかける道には俺と同じような人物が何人もおり、新入生も何人かいるのだろう


本校舎に到着するとまだ入学式までは時間がそこそこあるのにそれなりの人数がすでに本校舎に入っているようだ


俺は1年生のエリアから自分の分の下駄箱を探してそこに靴を入れ、支給されていた下履きに履き替える


確か新入生である俺たちは教室ではなく講堂に集合だったか


俺は校内の地図が描かれている場所を見つけたので講堂を探してみる……が


「…………見つけたのは良いが広すぎないかここ?」


正直外から見たときも大きいとは思っていたが地図で詳しく見てみると想像以上に大きかった


一先ず場所は分かったので俺は講堂へと早速向かうことにした




「新入生はこちらでーす!座席表の通りに座ってくださーい!」

「2年生3年生は席気をつけてー!場所変わってるからちゃんと見なさいよー!」


講堂の前では上級生達が誘導を行っており、俺はその指示に従い座席票に描かれている自分の席に向かう


まだ始まるまでそこそこ時間はあるがやはりそれなりに人数は揃っている


入学式開始までの間はしばらく時間が空いているので俺は一端仮眠を取ることにした


しばらくすると時間になったようでブザーが鳴りながら正面の暗幕が開き、演説台に4〜50代くらいと思われる男性が立っている


『新入生諸君!入学おめでとう!

私がこの国立デュエル&ライバルズ専門学園校長"戦葉 たける"である!

さて、君達はこの学園に強さを求めて入学してきた者も多いだろう、中には此処に入る事そのものを目標としてきた者も居るだろう。

そんな君達の前で長話をした所で退屈にしかならないだろう。』


校長からの話は基本長話になることが多いが随分と思い切った発言だな……


それにしても戦葉……?

その名前ってたしか……


『この学園では強さこそが全てだ。

強い者はより戦う為の環境を整えられ、このギガフロートでの生活にもある程度影響してくる。

何故そのようなシステムになってるかと言われれば単純だ、より貪欲に強さを求めさせ、お互いを研磨しあい、高みを目指す為である。

弱い立場が嫌ならば貪欲に強さを追い求めろ!ルールに則っていればどんな手を使っても構わん!


私が君達に望むのはただ一つ……戦い、学び、そして勝て!


私からの話はこれで以上だ』


そう来たか……やってくれる


この学園の寮に来た殆どの生徒はあの生活環境を1日でも味わったのならこの環境を悪くしたくないと思うだろう。

そしてこれがもっと良くなると聞けば俄然やる気が出てくる者も多い……だから全寮制な訳だ


明言はしてはいなかったがおそらくは負け続けていれば確実に生活環境は悪くなるのだろう


完全にこの学園は何故ここまでして強さを求めているんだ?


『続きましてデュエル学園生徒会会長"戦葉 優希"会長』


生徒会会長……あいつらが話題に出していたな

そうか、何処かで聞いたことあると思ったらあの校長苗字がこの人と同じなんだ

おそらくは血縁なんだろう


生徒会長は壇上に立って演説台に向か……あれ?


「きゃっ!?」


な……なにもない所で躓いて転びかけた?


すると彼女は何事も無かったかのように取り繕い、そのままマイクの前に来てキリッとする


…………なんだろうかこの残念感は


『新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。

私はこの国立デュエル&ライバルズ専門学園生徒会会長の"戦葉 優希"です。』


さっきの事を完全にスルーして話し始めた……


『貴方方の中には生徒会と聞いても実際どのような事をするのか等ピンと来ていない方々も多い事でしょう。

そして我が校の生徒会というものは一般的な学校の生徒会とは大きく違う点がいくつかございます。


我が校における生徒会とは"最強の証"でありその証明……私から伝えたい事はただ一つ』


そして彼女はクールなその様子からは想像も出来ないほど好戦的な意思を持った瞳で笑みを浮かべる


『私に勝てる程の強さを目指しなさい。

私という最強を超えて見せなさい!

貴方達のうちの誰か一人でも私に勝つことが出来たのならそれこそが最強の証明です。

世界には私よりも強い者達も居るでしょう、ですが私にすら勝てないのなら最強の証明など夢のまた夢。

ただひたすらに己を磨き、削り合いなさい!

私からは以上です』

『戦葉生徒会長ありがとうございま……』

「きゃっ!?」


あ、演説台に足が引っかかった


「…………コホン」

『あ、ありがとうございました』


なんだろうか……激励に見せかけた宣戦布告だったはずなのに彼女のドジで皆が微笑ましい物を見るかのような表情になっている


とはいえ彼女のあの威圧感……最強の証明って言うだけあって伊達じゃないんだろうな


おそらくあの言葉も実力至上主義者達が多いのを理解しているからこそだろう


今まではリスクが高かったのとこの世界の環境をあまり調べきれていなかったから避けていたが今は違う


確かにリスクは高いだろう、だがこれはちゃんと確認等を取れば別に十分避けられるリスクだ


勝つだけならやり方なんていくらでもある


「最強の証明か……」


この世界で転生した当初は普通にいい就職先見つけて平凡に生きられれば良いと思ってたんだがな……ずっとこの世界で生活してきたせいで俺もだんだんこの世界に染まってきているらしい




勝ち進んでやる……あんな事言われて黙っていられる程俺は我慢強くはない


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