ギガフロートに到着したのを確認して俺はフェリーを降り、周囲を見渡す
やはり人工島というだけあって自然は殆ど無く、海に面している場所もほぼ全てコンクリートのようだ
周辺の建物はやはりデュエル学園がある場所だからかDaL関係の施設だらけであり、飲食店や服飾関係の店ですらデュエルフィールドを設置しているレベルだ
この広大な敷地の全てがそうなのだとしたらデュエル学園はどれだけのレベルなのだろうか……
俺は一端学園から貰った地図を開き学生寮へのルートを調べる
「…………港から100kmて」
流石ギガフロートというべきなのかその敷地は異常な広さであり、デュエル学園はそのギガフロートの中央にある学校というだけあって普通に距離がまだあった
近場にリニア新幹線が通っている様なので俺はそれに乗ってデュエル学園の学生寮へと向かう事にした
ここに来てからますます思うがこの世界ってもしかしなくても前世よりも科学力発展してないか?
『国立デュエル&ライバルズ学園前〜国立デュエル&ライバルズ学園前〜』
っと着いたか
俺はリニア新幹線を降りて改札へと向かう
なんとなく予想してはいたがかなりの量の人が同じ駅で降りており、この人々の大半が学生なのだろうと予想が出来る
改札を出てすぐ、俺を含めた新入生と思われる人物達の大半がその歩みを思わず止めた
今俺の目の前に映るデュエル学園の本校舎の大きさだけでも一般的な高校の十倍以上だろう
そして俺は思わず渡された地図を見てこの学園がどれだけヤバいかを改めて理解する
「これでほんの一部とかなんの冗談だよ……」
そう、これだけの大きさを誇る校舎ではあるがデュエル学園の敷地上この校舎は精々敷地面積の2割にも満たないのだ
この本校舎を中心に様々な施設が敷地内に設置されており、俺達生徒が寝泊まりする学生寮もその一つだ
下手したらあのギガフロート全体がデュエル学園に関係しているって噂も強ち嘘じゃないのかもしれない
ただ……本校舎がこのレベルとなると学生寮もなかなかヤバそうだな
しばらく呆気に取られていたせいで忘れていたが俺は本校舎を後にして地図を頼りに学生寮に向かう……というかもう進行方向に明らかに馬鹿でかい建物があるせいでもう察しがついてきた
地図に沿って移動しているとやはりというかなんというか……やたらと目立っていたあの大きな建物が学生寮で合っていたようだ
若干顔が引きつるのを感じながらも俺は寮の入り口へと向かっていく
入り口に入ると受付と思われる人物がおり、そこにちょっとした列が出来ている
どうやらあそこで入寮手続きを行うようだ
列に並び始めて30分程で俺の順番となり早速受付の方まで向かう
「こんにちわ、入寮手続きでよろしいでしょうか?」
「そうです」
「承りました、学生証のご提示をお願いします」
俺は受付の人の指示に従い事前に送られてきていた学生証を提示する
「『浅麦 誠』様……ID:37564番……お待たせ致しました。
こちらが寮のお部屋とその鍵になります」
「ありがとうございます」
「もし何か分からない事がございましたらまたこちらまでお越しください」
「分かりました」
事前に殆どの手続きは澄んでおり、学生証を提示して本人確認とデータの入力等をするだけですぐに終わった
まぁ人数が多いからこそここまで簡略化しないと回らないんだろうな
俺は部屋の場所と寮の地図の乗っている紙と自室の鍵を貰い、早速部屋へと向かっていく
この寮はどうやら400人は入れるようになっており、特に男女で棟が分かれていたりは知ないらしい
正直どうなんだろとも思わなくも無いが別に部屋が二人部屋とかいう訳でもなく完全な一人部屋だからあまり気にしていないのかもしれない
風呂はかなり巨大な露天風呂が用意されており、男女別で日によって男女の風呂が入れ替わるらしい。
その辺に関してはちゃんと入り口にかなり大きく書かれており、稀にそれを確認しそびれて事故を起こす場合もある為に注意するようにとあった
そこまでするくらいなら完全に分けたままにしとけよと思わない訳でもないが時間帯ではなく日付で入れ替えている為一応対策はしているのだろう
「839号室……839号室……っとここか」
流石に全寮制な上に人数がただでさえ多いだけあって寮は9階建てに加えて1F以外一つの階ごとに個人の部屋が50部屋ずつ用意されていた
俺は早速カードキーを差し込み部屋の鍵を開けて中に入る
部屋に入ると部屋の中にもカードキーを差し込む場所があり、そこにカードキーを差し込むと室内の明かりが点灯する
どうやら一部のホテル何かとまったく同じタイプのようでカードキーそのものがちょっとしたブレーカーとしての機能も持っているようだ
入寮手続き自体はもう終わっており、後は明日の入学式に備えるだけなので俺は荷物をタンスやクローゼット等に次々と収納していく
部屋にどうやらデフォルトでテレビやパソコン等も揃えられているようで正直寮の部屋としてはかなり豪華な部類だろう
「ふう……」
軽く一段落が済んでから俺はベッドに横になり一息つく
「…………何処からツッコむべきか」
正直ここまでのレベルとは思わなかった
いくら国立とはいえ日本という国一つでやるにはあまりにも出来すぎてる
それにこの学園……あまりにも情報がなさ過ぎるんだよなぁ
その辺がどうにも胡散臭い……というかキナ臭い
とはいえこの学園は入るのと入らないのでは将来への道が大きく変わってくる
ひとまず消灯時間ギリギリまではデッキの調整と『フィクスシャッフル』の習熟に勤しむとしよう
一方その頃、デュエル学園本校舎生徒会室
「…………これにて本日議題を終了と致します」
デュエル学園生徒会一同は新入生への対応や一部の問題への対策、入学式の事前準備等の議題について話し合っており、たった今粗方の問題を片付けた所だった
生徒会の行う業務や処理しなければいけない議題はかなり多い
そんな中副会長だけは疲れ切っている生徒会の面々の中で唯一楽しそうにしていた
「どうしたんスか副会長?」
「いつもは退屈そうに会議をする貴方が随分と珍しいですね」
「んん〜?いやぁ今年の新入生は大荒れしそうだなぁって」
「大荒れですか?」
「何か面白そうな生徒でもいたんスか?」
2人のそんな質問にも副会長は楽しそうに笑みを浮かべながら頷く
「君達はArseneというプレイヤーに聞き覚えはあるかい?」
「あるせーぬ?誰っスかそれ?」
「聞いた覚えがあります。
確かネット対戦界隈で有名なプレイヤーでしたよね?」
「え?その人って確か勝つためには手段を選ばない卑怯者って話じゃなかったでしたっけ?」
「いえ、彼はルールそのものにはまったく違反をしていません。
ただ特殊勝利や相手を嵌めるような戦法中心に戦うプレイヤーの為マッチングしたプレイヤーからの批判が相次いでいる人物だったかと」
Arseneの名前を聞いて更に一人の生徒会員が反応を示した。
だがその人物の言葉にもう一人が反論する
「そう、実はちょうどフェリーでこっち来てた時に彼と会ってさ!
この学園に入学してくるらしいんだよ!」
「それでそこまで楽しそうに……しかし貴方程の人がそこまで注目するようなプレイヤーなのですか?」
「そうっすよ、あのネット対戦って使えるカードめちゃくちゃ限定されてるじゃないっスか!」
「確かにね、個人専用みたいなカードは基本あの対戦じゃ使えないしレアカードなんかも結構使える物はかなり限られている……専用職業も使えないしね
でも僕がちょくちょくアレに潜っているのは知っているだろう?」
すると全員が一度首を傾げた
「ええ、確かに知っていますが……」
「実はココだけの話僕は彼と一度対戦した事があってね……しかも一番大暴れしていたあの時期に」
「そんなに副会長に食い下がれる程の実力者だったんスか?」
「いや?コテンパンにやられてしまったよ。
手も足も出なかった……まさか1ダメージもプレイヤー側にダメージを与えられずにパーフェクトゲームなんて始めてだったさ」
「「「なっ!?」」」
彼はケラケラと笑いながらそう答えるが彼の強さを知る生徒会の面々からすればそれは冗談にしても質が悪かった
「副会長か……負けた!?」
「いくらなんでもそれは……!?」
「事実だよ〜?あまりにもプレイングがヤバかったから思わずその時の対戦映像を録画しちゃったよ。
流石に現実側ならまだ対応出来る分どうにでもなると言いたいけど彼が準備を整え終わるまでに倒しきれなければ現実でも無理だろうねあれ」
「それは一体どういう……?」
「単純な話、彼が一番得意としているのは盤面を無視したデッキだからさ。
正面戦闘なら少なくとも有利に立ち回れるだろうけど彼の対戦の記録を見る限り彼は殆どの試合で相手のHPを盤面を無視して30以上削るような立ち回りをしているんだよね」
そのあまりにもな言葉に全員が言葉を失う
「まぁ逆に言えば何してくるかさえ途中で察することさえ出来れば結構簡単に彼の戦術に穴を開けられる。
逆に気付かなければそのまま蟻地獄のように引きずり落とされるのさ」
「そんな人物が入学……ですか」
「なんつう……というかたぶんあの馬鹿共が喚きませんか?」
「だろうねぇ……だから言っただろう?"荒れる"って」
「はぁ……頭痛の種が増えましたよ」
「まぁもっとも上級生相手じゃ通用する相手も少ないだろうから今後彼がどう成長するか見物だね」
彼は愉快そうに笑いながらそう言う
そしてそんな中沈黙を貫いていた生徒会長は……
「…………zzZZZ」
最近の疲れからか座ったまま寝ており、話を聞いてはいなかった
だがこの場にいる全員が思う……聞いていなくて良かったと
何故ならこの学園における生徒会長とは最強の証であり、この学園においてもっとも多く戦っている戦闘狂の問題児でもあったからだ
「「「はぁ…………」」」
今年は騒がしくなりそうだと予感した面々は思わず溜息をついたのだった