最初のデュエルから数戦行い、なんとか一度も敗北すること無く無事に試験を突破する事が出来た
基本的に序盤はあまり動かない相手が多い為に最初からユニットを展開したりして速攻を仕掛けるだけでも相手側は常に後手に回る為に対処自体はそこまで難しくはない
まぁ全体除去や攻撃力を下げても意味がないカード効果によるダメージ、プレイヤーにも直接攻撃出来るタイプのアクションカードなんかはこっちのデッキに対してちょっとしたメタカードになるためこちら側も全てが全て楽勝だったかと言われればそうではなかった
一番焦ったのは最後の試合で相手側はユニットを殆ど出せずにアクションカードやユニットのカード効果でガンガンこちらの盤面を無視してこっちにダメージを与えて来た為に運が悪ければ負けていた可能性があった
幸い手札を溢れさせることによるデッキ破壊やカードを盗む事によって相手の攻撃カードを早めに枯らした為なんとかなったが相手の手札の引き次第では簡単に負けていただろう
やはりまだこのデッキには穴が多い……まだまだ改良が必要か
試験終了までの間定員の人数が突破するまで別室で待機しながらデッキのバランスを調整していると何やら部屋の外が騒がしい
「クソっ!離せ!離しやがれ!」
「てめぇ!そんな卑怯な手で勝って楽しいかよ!?」
「ふざけんな!俺は負けてねぇ!負けてねぇんだよ!!」
外に出て騒ぎを見に行くと先程から俺が戦った対戦相手達……と言っても最後に戦った人以外の殆どが負けを認めたくないのか暴れ始め、試験会場の職員達に取り押さえられていた
というか取り押さえるの専用の効果を持ったカードによって拘束されていた……どんな原理なんだあれ?
とはいえ原因が俺であることに変わりは無い、だがルールは別に破っている訳でもないし特に気にする必要性もないだろう
試験後に俺は試験官から呼び出しを受けて事情聴取をされることになったが結果としては俺の戦術は害悪ではあるがルールを守っている上になんの非もないとしてすぐに解放された
これはそれなりに後で知った事なのだがあの時の試験で俺が突破した順位としては56位だったらしい
やはり試験を速く突破した人物の大半はユニット大量展開による一発逆転や全体的にコストの低いカードで構成されたアグロデッキによる速攻で相手が本格的に動き出す前に勝負を決めていたようだ
俺の場合はキーカードが引けないと試合を長引かせかねないのでそこまで順調にというわけにはいかなかった
とはいえ一敗も知ていなかった者は結構少数らしく、そこに入り込めたのは結構大きいだろう
入学試験から一月後、デュエル学園からの合格通知が家に届いた
合格通知には入学試験での成績表が同封されており、俺は座学5位、実技56位でそこそこ順位は上を取れていたようだ
さらには実技の試験官からの個人的な評価も書かれており、そこには『相手を完封するデッキ構築の腕は評価出来るがあまり相手を嵌めるような戦術を続けていては実力至上主義者から標的にされかねないので注意するように』と書かれていた
続きを読んでいくとやはり学園にもかなりの数の実力至上主義者達が存在しているらしく、あの時の試験官や教師陣にまで食い込んでいるらしい
なぜそのような状況に陥っているのか甚だ疑問だが考えられる原因はろくでもないものばかりであった為に俺はこれ以上考えるのをやめにする
やはりというか実力至上主義思考に染まった試験官は俺を排除しようとする動きを見せていたらしいが俺の入試成績がそれなりに上だったのでなんとかなったそうだ
これは入学後も難癖つけられそうだな
家族に入試に合格した事を伝えると全員が自分のことのように大喜びしていた
俺は大袈裟だなと一瞬思わなくもなかったがよく考えてみればあのデュエル学園は国立の学校だ、そんな所に入学出来たとなればそりゃ親としては相当嬉しいのだろう
今はゲーム版のDaRを通して知り合った学校の友人らもかなり驚いていたが俺の使った戦術を聞いてほぼ全員がドン引きしていた
デッキ破壊は確実性の高い初見殺しで、対処法は序盤からガンガンユニットを無視してプレイヤーへ攻撃を仕掛けるか自分の盤面を破壊してユニットを絶えず新しく出すくらいしか対処法が無いのだ
さらにデッキ破壊の厄介な点としてデッキのカードを盗む、又は手札オーバーにより破棄させるという点もある
コレによってキーカードを失う者も結構多く、ネット対戦の方だと通信切断や降参をする人が何人も出ていた
「お前それ全員にキレられたんじゃねぇの?
ネット対戦でもかなり批判多かったやつじゃん」
「俺も一度使ってみたけどあまりにもお怒りのDM多すぎてやめたんだよなぁ……」
「通信切断多かったよなぁ。」
「まぁ大半の奴らは暴動起こしかけてたけど別にルールはちゃんと守ってたぞ?」
「「「いやお前のそれ結構黒寄りのグレーだから!?」」」
解せぬ
「まぁそれでもあのデュエル学園に合格したんだろ?
やっぱりお前って昔っからすげぇよなぁ……戦術はともかくとして」
「そういや誠一ってネット対戦とかだと戦場を荒らし回ってたけどリアルでの対戦とかあんまりやってないよな?」
「というか一度も見たことないぞ?」
「あぁ、俺としてはリアル対戦の方は賭け事が出来てしまうからあんまりやりたくないんだよ。
リスクは少ないほうが良い」
「「「いやお前の実力なら別にそこまで警戒しなくてもいいだろ……」」」
また揃ってツッコミを貰ってしまった……
「デュエル学園かぁ……確か今在学中の生徒でもかなりの実力者揃いなんだろ?」
「俺は実力至上主義者が多いって聞いたなぁ……やだやだ」
「僕は今回の生徒会長がかなり美人だって聞いてます」
「生徒会長……確か勇者の職業の人だっけか」
勇者……確かデュエル学園生徒会長である『戦葉 優希』が戦士から派生させた上級職……それも彼女のみにしか派生していないユニーク職だ
彼女のスタイルはプレイヤーにまで武器を持たせて攻撃して速攻を仕掛けるタイプだったか
「そうそう、1年生にも関わらず生徒会長に抜擢される程の実力者!
浅麦君が入学する頃には2年生だろうけど多分卒業まで会長で居続けるんじゃないかな?」
「ユニーク職とか羨ましいよねぇ……あそこって確かユニーク職に派生してる人が相当多いんだっけ?」
「俺も調べて見たんだけど結構イロモノも多かったぞ?
少なくとも調べた限りでは『教師』、『アイドル』、『女王様』、『オネェ』とかあるみたいだし」
「出たよ浅麦君の謎すぎる情報網!?」
「『教師』とかは分かるけど『オネェ』とか『アイドル』ってなんだよ!?」
「『女王』とかならまだしも『女王様』となるとなんかSMっぽい予感がしてくるんだけど……!?」
正直俺も調べててなんだコレってなったわ……
「確かユニーク職ってその人しかやらないような戦い方を続けていると成れるようになるんだっけ?」
「そうなると誠一とからユニーク職になりそうだよな」
「浅麦君の場合は……なんだろ?トラッパー?」
「いやそこは素直に罠師で良くないか?」
俺は基本特殊勝利や所謂OTKデッキ……ワンターンキルデッキを中心に組んでいる
一応普通にユニット主体で戦うデッキもあるが相手のカードを盗みまくるタイプのデッキなのでまぁまともなタイプではない
「デュエル学園に入ったってことはいい加減浅麦もリアルでのバトルを本格的にやるのか?」
「ん?まぁ流石に避けられないしな。
出来る限り保身には走るが余程の事が無い限りはリアルの対戦になるだろうな」
「お?なら俺等とも1回やってこうぜ!ネット対戦は何度かやってたけどリアルのはやってなかったからな」
「確かにな〜、ちょっとこの間組んだ浅麦対策のデッキがどこまでやれるかも見てみたいし」
「あ、なら僕もやりたいです」
俺がリアルでの対戦を極力避けてたのを察して皆はずっと俺とのリアル対戦の話を持ち出そうとしなかっただけで皆バトル好きだからな……今思うと少し申し訳ない気持ちもある
「なら俺も調整してきた新しいやつで行くか」
そして俺たちはしばらくの間ずっと対戦を続けていたのだが……
「デッキ破壊対策してきたのに自分側のデッキアウトを条件にした特殊勝利ってなんだよ……」
「エースカード盗まれた上に何故か0コスト化してる大型ユニット2体も同時に出てきた……」
「罠だけで、ワンターンキルされた……」
全員がなんか精神的にダメージを受ける結果となっていた
やり過ぎたか……