目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第3話 《受験》 初見殺し

「な、なんだよそのカード!?見たことも聞いたこともねぇぞ!?」


このカードを持ってるのはおそらくだが俺一人だけだ

この世界におけるカードのレアリティにはコモン、レア、スーパーレア、そして異常なまでに出現率が低く、世界でもほんの一握りの人間しか引き当てていないユニークレア


現状同一のユニークレアを引いたという情報は見つかっていない、もしかしたら隠されているだけなのかもしれないが世間一般的な認識はそうなっている


噂だと他の誰もが試そうとしなかった事に挑戦しようとし、諦めなかった物にのみ引き当てられるなんて話も聞くが正直そっちはあまり信憑性が無い……というかおそらくだが認識がズレている


俺が試そうとした戦術は過去を遡ればやろうとしている人は何人か見つけられたから完全に前例がないという訳では無いのだ


おそらくだがこれは『デュエル世界』でどれだけその人間が注目されたか、もしくは『デュエル世界』で力を持つものの気まぐれといったような物が正しいのだろう


俺の場合はおそらく前者だ、今の環境では盗賊はあまりにも冷遇され過ぎていてネット対戦ですら使用率0%台だ。

そんな中で盗賊のデッキを使って初見殺しとはいえかなりの数の勝利を荒稼ぎしているのが目についたのだろう


事実俺の引き当てたユニークレアはコレだけではなく随分とクセの強い盗賊カードを何枚か引き当てていた……どれもかなりピンポイントにしか使えなさそうなピーキーな性能をしてるがな


「《呪われし宝物》の効果で俺の職業アビリティを《冥界の呪い》に変更し、代償としてHPを10と全アビリティポイントを支払う」



《浅麦 誠》HP30→20


俺がデメリットカードを率先して有効活用していたせいか俺が引き当てたこれもかなりキツイデメリットがある。

だがそれを加味してもその効果は凄まじくデメリットを弱めたとしたら10コストでも納得なレベルの効果だ


本来武器カードには相手を攻撃する度に消耗する使用回数と武器の攻撃力がある

ただこのカードは使用回数が1の攻撃力0となっており、普通に使う分には何の約にも立たない


「ったく驚かせやがって、攻撃力0の使用回数1とか雑魚武器もいいとこじゃねぇかよくだらねぇ!

俺のターン!MPを6支払い《将軍ゴブリン》を前列中央に召喚する!」


相手の前列中央に攻撃力4、HP6大型ユニットが現れる


「ターンエンドして《将軍ゴブリン》の効果を発動!山札からランダムなゴブリンと名のつくユニットを召喚する!」


すると前列左側に攻撃力5,HP3のホブゴブリンが召喚される


コストを踏み倒した召喚は確かに強い、ただその程度では俺の戦術には響かなかった


「俺のターン、コストを4支払い、アクションカード《代償の天秤》を使用する」


《代償の天秤》のカードを握り潰し、背後の6つの結晶のうち4つが光を失う


俺達の前に先攻後攻を決める際に出てきたものとは違い、秤に禍々しい炎を放つ黄金が乗せられている


「俺は代償として手札からカードを二枚捨てて《ホブゴブリン》の攻撃力を0にする」


《ホブゴブリン》5/3→0/3


「チッ!」


ついでに言えば俺が今捨てたカードはどれもアイツから奪ったカードだ。


実質こちらに対するデメリットは無いような物だ


だがこの代償を払うという行為がトリガーとなり、もう一つのカードの効果が発動する


「代償を支払った事で《呪われし宝物》の効果発動。

敵味方含めた場にいる全てのユニットの攻撃力を−1して相手の場に《封じられたミイラ》を召喚する」


今度は相手の場の前列右側に攻撃力0,HP1という邪魔にしかならないユニットが出現する


〜相手の場〜


前列


左∶《ホブゴブリン》0/3

中央∶《将軍ゴブリン》4/6→3/6

右∶《封じられたミイラ》0/1


後列∶無し





右、中央、左の3箇所に列関係なくユニットが揃ったことによって相手プレイヤーに攻撃することは不可能になるが狙い通りなので問題ない


「続いて残ったコストを支払い、アクションカード《脱力の呪い》を使って《将軍ゴブリン》の攻撃力を−3し、ターンエンド」


《将軍ゴブリン》3/6→0/6


「てめぇ!攻撃する気がねぇとか舐めてんのか!?」


相手はまだ状況がわかっていないらしい


木偶の坊が3体場を埋めているという事がどれだけリスクがあるのか


「俺のターン!コストを7支払い《ゴブリンキング》を後列中央に召喚してゴブリン族全員の攻撃力+1だ!《将軍ゴブリン》と《ホブゴブリン》で攻撃してターンエンド!」

「くっ……!」


《ゴブリンキング》5/5

《将軍ゴブリン》0/6→1/6

《ホブゴブリン》0/3→1/3



《浅麦 誠》HP20→18



相手のターンエンドと共に今度は攻撃力3、HP4の《ゴブリンファイター》が現れる


さらに《ゴブリンキング》の効果で攻撃力が上昇し、4/4という能力になった


俺は手札にあるカードを見て完全に相手がハマりきったのを確信した


「クッ……ククッ……アッハハハハハハハハハハハハ!!!」


俺はあまりの可笑しさに腹の底から笑い声を出す


「あぁ!?何が可笑しいんだよ!?」

「いやいや、おかしいに決まってるじゃん。

態々網を張ってるところに自分から入りに来てくれたんだからな……何も警戒しないとかホント笑えてくるわ」


俺はターバンを外して邪魔だった前髪を後ろへと回し、オールバックにする


あぁ……良いねぇ……楽しくなってきた


「俺のターン!」


俺はコンボを確実に決める為にデッキの一番高いコストのカードとして入れていた俺のデッキの中でも7コストとかなり重いカードを発動させる


「アクションカード《捨て身》を発動!

俺の手札から足りないアビリティポイント分のコストになるまでカードを代償として捨てて俺の職業アビリティを強制発動する」


効果は単純でコレだけだ。

7コストというかなり重いコストが原因でこれも嫌煙されがちだが、職業アビリティがかなり強力な職業の人は好んでデッキに入れているカードだ。


俺の現在溜まっているアビリティポイントは6


変化した俺のアビリティ《冥界の呪い》の要求アビリティポイントは18……俺は足りていない12ポイント分のコスト合計になるまでカードを捨てる為、コスト4のカードを一枚、3のカードを二枚、2のカードを一枚捨てる


「職業アビリティ《冥界の呪い》発動!相手の場にいるユニットの数分ランダムな攻撃力1以上のユニットに攻撃力−2を付与する!」


相手の数場にいる5体であり、そのうち1体は攻撃力0


そうなると4体のユニットに対象ランダムな攻撃力ダウンが5回飛んでいくわけだが上手く行けばこの時点でほぼ勝利が確定する


例え失敗したとしてもほぼ詰みだ


結果としては


《ゴブリンファイター》×2

《ゴブリンキング》×2

《将軍ゴブリン》×1


に攻撃力ダウンが飛んでいく形になった


結果として現在攻撃力が残っているのは《ゴブリンキング》、《ホブゴブリン》の2体だけになるのだがこの2体ののこり攻撃力は1しかない


「カードを代償として支払った為 《呪われし宝物》の効果発動、全体の攻撃力を1下げて残った場に《封じられたミイラ》を召喚する」


現在相手の状況としては


〜前列〜


《ホブゴブリン》1/3→0/3

《将軍ゴブリン》1/6→0/3

《封じられたミイラ》0/1


〜後列〜


《ゴブリンファイター》4/4→0/4

《ゴブリンキング》5/5→1/5→0/5

《封じられたミイラ》0/1




となっている、つまり相手にはもうユニットを召喚するための枠は一つも残っておらず攻撃力が全員0でこちらがユニットを出していないので邪魔なユニットを処理する手段がなくなったのだ


「て、てめえ!?そんなの卑怯だぞ!?」

「あからさまに攻撃力ガッツリ下げてこっちからわざと攻撃しなかった事に気が付かなかったのが敗因なんだよなぁ?」

「う、うるせぇ!

体力ならまだ俺の方が上なんだ!お前はこの状態から俺を削れるってのかよ!?」

「さてな」  

「クソ!オレのターン!MPをアビリティポイントに変換してターンエンド!」


8ターン目、相手はついに何も動けなくなる


現在相手の山札はのこり11枚、対するこっちは17枚。

一気に畳み掛けるか


「オレのターンコストを2支払い《スラム街のどろぼう》を前列右側に召喚」


相手の山札からさらに一枚奪い、これで山札の枚数差は7になる。

相手は基本カードを1ターンに1枚くらいしか出して無かったのもあり、手札は現在8枚程ある


「さらにコストを3支払いアクションカード《リスク&ドロー》を使用、お互いのプレイヤーはカードを3枚引く」


俺と相手は山札から3枚のカードを引き、相手は手札が10枚を超える枚数となった為に3枚目がゲームから消滅する


この『DaR』では手札は10までとなっており、それ以上を引こうとするとゲームから除外されるようになるのだ。

これはただ墓地に行くのとは違い、復活すらも出来ない


「クソ!手札が!?」


「コストを更に3支払い、後列右側に《マヌケなどろぼう》を召喚。

代償としてこちらの手札から二枚を捨てて相手の山札から3枚を奪う。

更に代償を支払ったことで全体の攻撃力を1下げ、ユニットはこれ以上召喚する場が無いため召喚の効果は無い」


俺はまたしても相手から奪ったカードと今の状況だと出す意味のないカードを捨てて相手のデッキからカードを盗む


気が付いた物もいるかもしれないがこのデッキのコンセプトは相手の攻撃力を0にした上でのデッキ破壊だ


このゲームはデッキが0になりこれ以上引けなくなった際に引く度に1ダメージずつ増加するペナルティダメージを受ける。

例えばデッキがなくなってカードを一枚引けば1ダメージ、2枚目は2ダメージとどんどん増えていくのだ


相手のHPは現在28,山札の残りは4枚であり、次のターンて3枚となる


あと10回相手側山札を引けばHPが全損する計算だ


「オレのターン!……クソ!何もだせねぇ!」


やっぱり典型的なユニットだけの型か、今まではそれでも通用したんだろうがな


「攻撃したくても相手もこっちも攻撃力が無いから意味がねぇじゃねぇか!てめぇまともにやりやがれよ!こんな事して楽しいかよ!」

「何言ってるんだよ?」


俺は勝利を完全に確信し、笑みを深く浮かべながら答える


「楽しいに決まってるじゃんか?

相手が自分の作戦にこんなに綺麗に嵌まるんだから!」


「ちくしょう!ターンエンド!」

「オレのターン……いや、ファイナルターンだ!

コストを6支払いアクションカード《一攫千金》を使用する!

お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて山札から同じ枚数を引く!」


俺は山札から四枚ほど捨てて引きなおす、だが相手は手札を10枚捨てて、残った山札3枚とペナルティダメージを7回受ける


28→27


「や、やめろ……!」


27→25


「こ、こんな勝負認めてたまるか!」


25→22


「ふ、ふざけんな!止めろ!止めろ!」


22→18


「ほれ、残り3枚だ」


18→13


「あ……あぁ……あああああ!?!?」


13→7


「この卑怯者がぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」


7→0


相手のHP全損によって俺の勝利だ



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?