俺は会場の受付で受験の手続きを済ませてスタッフの指示に従い試験会場へと向かっていく
しばらく進むと広大な体育館のような場所に『DaR』専用のゲーム台『デュエルフィールド』が無数に設置された場所に出た
俺は受付で手渡されたタブレット端末型の受験票に書かれた番号と同じ『デュエルフィールド』を探してその場所へと向かう
2037番2037番……あった
このデュエル学園での試験は基本的にデュエルに関する事のみであり、座学よりも実技の方が圧倒的に優先される
とはいえ座学は何も考慮されていないのかと言うとそう言う訳ではなく、実技の成績が悪くても座学次第では全然どうにかなるようになっているらしい
まぁ学園の中でやっていけるかは別問題らしいがな
しばらく会場で待っていると受験生全員が揃ったようで俺の『デュエルフィールド』の正面にも同じ受験生と思われる成金臭いのがいた
『只今より2046年度国立デュエル&ライバルズ学園の入学試験を開始させていただきます。
本日の試験内容は至極簡単です、お手元の受験票の画面をご覧ください。』
俺はアナウンスの指示通りに受験票を見る
すると受験番号が表示されていた画面が切り替わり、画面上部に小さく受験番号が表示され、その下に『1000』という数字が大きく表示された
『只今お手元に表示されました数字は貴方方の持ち点でございます。
こちらの持ち点はデュエルにて勝利を収めた際に相手の方から半分の点数が譲渡されます。
持ち点が3000点になった時点で即時合格、逆に500点以下の方が負けた際には持ち点の全てを譲渡して頂き残念ながら失格、退場となって頂きます。
受験者の人数は只今3560名、定員は150名ですのでおよそ4.2%の方が合格となります。
今年は受験生が比較的少ないので気楽に頑張って行きましょう。』
気楽に言ってくれるな……
『もちろん勝敗のタイミングという物もございますので定員になった際にデュエル中かつ勝利によって条件を満たす方に関しましても合格とさせて頂きます。
定員を上回った際には同じ順位の方から座学の成績を合わせた点数で再度順位を決めさせて頂き150位未満の方は残念ながら不合格とさせて頂きます。』
あくまでも実技が優先、だが座学がいらないかと言われるとそうでもない、普通の受験として見ればかなり特殊な部類だが実力も座学も見てはいる。
それに実技で落ちても座学次第では入れる場合もあるとは聞くがどうなのやら
まぁ勝負は基本実力とはいえ時の運も絡む以上は座学だけでも合格ラインを用意しているだけよく考えられてはいるか
まぁ合格ラインは噂だと95点以上らしいからどうなるのやら
『現在皆様の『デュエルフィールド』の対面側には別の受験生様がいらっしゃると想いますので最初のデュエルは対面の方と皆様同時に行わせて頂きます。
それでは皆様、デッキケースをフィールドにセットしてください。』
俺はフィールドにあるデッキケース接続用の端末に自分のデッキケースを差し込み、デッキ情報を読み込ませる。
お互いのデッキケースが読み込み終わると『デュエルフィールド』が光を放ち、その中央にコロシアムのような石造りの建物が現れ、俺の意識が一瞬暗転する
どういう原理なのかは知らないが『デュエルフィールド』でのデュエルでは自分の身体がフィールドに取り込まれ、それぞれの職業の装束を身に纏ってフィールド上に実体化する
俺はコロシアムの門をくぐり、決闘場へと足を踏み入れる
「ハッ!同じ受験生だから警戒してたが盗賊かよ!
笑わせてくれるぜ、こりゃ最初のデュエルは楽勝じゃねぇか!」
俺の装束は対刃性の高そうなロングブーツに動きやすそうな薄手でのズボン、武器の隠しやすそうな上着を羽織り、手には指ぬきグローブ、頭から首にかけて長いターバンが巻かれており、腰にはナイフがある
まぁまさに砂漠とかにいそうな盗賊って感じだな
対する相手は赤い軽鎧に身を包みバトルアックスを背負っている
成る程、相手は攻撃的なカードが多く、プレイヤー自身も攻撃を行う戦士か
「御託はいい、さっさと始めるぞ脳筋。」
「てめぇ……調子に乗ってんじゃねぇぞ雑魚の分際で!」
まずは挑発成功っと、カードゲームにおいて冷静さを欠くのはあまり良くないというのに随分とプライドが高いようだな
『それでは決闘を始めてください。』
俺達はアナウンスに従い掌に生成されたデッキを目の前に現れたホログラムフィールドに設置する。
「「デュエル!」」
俺達との間に巨大な天秤が現れて揺れ動き、相手側に傾く
これは先攻か後攻かを決める演出であり、今回は俺が後攻のようだ
お互いの背後、コロシアムの壁に設置されているクリスタルの一つが光を放ち、お互いのMP,カードを使うためのコストが表示され、俺と相手の背後にHPである30の数字が大きく表示されていた
お互いにデッキの上から5枚が浮遊して手札に加わり、デュエルが開始される
「まずは俺のターンからだな。
自分のMPをアビリティポイントに変換してターンエンドだ。」
アビリティポイント……職業にそれぞれあるアビリティは自分がカードを使った際に消費したMP分、又は自分のターンに一度だけMPを1だけ消費してアビリティポイントを2増やすというルールにより増加するポイントだ
一部例外もあるんだが基本この世界では低コストカードを数多く採用することによる速攻を狙うアグロが広まっていない為に最初の1〜2ターンはこれで様子見をするパターンが多い
俺のターンになり山札から一枚が浮遊した手札に加わる
俺の手札は一部を除いて全体的なコストはかなり低くなるように仕上げてあるためこの序盤でも動けるのが大きい
「俺のターン、前列左に《荒ぶるサンタ》を召喚してエンド。」
俺は手札から一枚ユニットのカードを引き抜いてフィールドに描かれた2列3枠ずつの計6マスの枠のうち前列左側にそのカードを設置した
ユニットカードにはコスト、攻撃力、HP,そして能力の4つがあり、俺が出したカードはコストが1で最初のターンにも出せるユニットであり、攻撃力は2,HPは4となっている
プレイヤーの最大HPを考えるとコストに対して強すぎると思われるかもしれないがこのユニットはデメリットとして攻撃する度に相手に山札から一枚カードを引かせるという物がある
相手の手札を増やすのは普通に考えればあまりにも大きすぎるデメリットにはなる
ただ俺の今回のデッキコンセプトとの相性が良かった為にこのカードはデッキに入れられる同種カードの最大数である二枚ずつ入っている
場に出したばかりのユニットは一部例外を除き召喚されたターンには動けない為行動は出来ないのでターンエンドとなる
「プッ!あっはははは!バッカじゃねぇの?そんなカード入れてやがるのかよありえねぇ!」
このカード自体はレア度は確かに低くありふれた物だ
効果も比較的知れ渡っているが価値は無しと見出されている
「これなら俺の勝ちは決まったも同然だな。」
いい具合に舐められてるな、これなら上手く決まりそうだ
相手の結晶が先程と違い2つ光り始める、1ターン経過するごとに最大MPは1ずつ増えていき、最大10まで増えていく
「俺のターンだな、MPをアビリティポイントにしてエンドだ。」
まだ様子見か……というよりこいつおそらく1〜2コストのカードを殆ど入れてない可能性があるな
それぞれの職業のアビリティは各職業各アビリティごとに消費するアビリティポイントが違う
例えば戦士は比較的要求アビリティポイントが重いが強力なアビリティが複数あり、余ったMPをアビリティポイントにガンガン回して最速でアビリティを使い続けるってタイプの可能性もある
俺の場合はアビリティの効果はそこまで強いものではないがその代わり必要アビリティポイントが低く、ガンガン回すことが出来る
俺のデッキはカードをどれだけ回せるかも重要だがアビリティの重要性も高い、使うタイミングとかも考えないといけないな
「俺のターン、《スラム街のどろぼう》を前列右側に召喚する。」
俺のフィールドの前列右側に召喚した《スラム街のどろぼう》は現れた瞬間にすぐさま相手のプレイヤーへと走って行き、通り過ぎる
すると元の位置へと瞬時に戻り、俺の手札に一枚盗賊でも共通カードでもない戦士専用のカードが加わる
このカードは能力としては攻撃力もHPも1しかないが召喚した瞬間相手のデッキからカードを一枚奪って手札に加えるという効果を持つ
奪ってきたカードは8コストの強力なユニットカードだ
やっぱりな、コストが重いが単純なパワーの高い脳筋カードを採用してたか
「テメ!?俺のカードをよくも!」
「悪いがこのカードは貰ってくよ、いらないけど。
《荒ぶるサンタ》でプレイヤーにダイレクトアタック。」
『きっひひひひひひひ!!!』
[うぐっ!?]
《荒ぶるサンタ》は耳障りな笑い声を上げながら対面の相手に斬りかかる
すると背後に大きく表示されたHPが29、28と減っていった
そして《荒ぶるサンタ》の袋が開いて相手の山札から一枚が手札として渡る
「ターンエンドだ。」
残り山札22、俺の手札からしても最大MPが上がりきるまえに決まりそうだな
「俺のターンだ!」
そこから5ターン目までは本格的に相手側ユニットを出してきたのもあり、お互いにユニット同士で削り合い、プレイヤーへの攻撃は無かった
俺の場合はあまり優先してプレイヤーのHPを削る理由がなかったからユニットの処理を優先していたというのもある
俺はようやくデッキのキーカードを出せるMPになったのであるカードを召喚する
「俺のターン、《呪われし宝物》を装備する。」
俺は《呪われし宝物》をフィールドではなく俺の手で握り潰し、俺の今使える全てのMPを消費して禍々しいオーラを放つ黄金の短剣を装備する
あぁ、楽しみだ……!上手く嵌まってくれよ?