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第41話

 アーロの事に関して納得した後、ヘルガや他の護衛騎士達に寝ずの番をして貰って私とシルヴァは眠りについた。

そして朝になった後、予定通り魔族の討伐へと向かう時間になり……


「マリスの血統魔法により判明した事を話すわね、私達が討伐に出た後の事なのだけれど……魔族の手により存在を作り替えられたリバスト護衛騎士隊長及び、彼に同行し行方不明となった護衛騎士達と遭遇し戦闘が発生するわ」


 お母様が集まった護衛騎士達に向かって、これから起きる事を説明していく。

サラサリズによりリバスト護衛騎士隊長達が敵になってしまっている事、討伐に同行するという事は彼等を殺さなければいけないという辛い現実を聞かされた護衛騎士達は、受け入れる事が出来ないのか、それぞれが困惑の表情を浮かべたり、眼の端に涙を浮かべて泣き崩れてしまう者が出て来る。


「……お母様、ちょっと変わって貰っていいかしら」

「……?えぇ、良いわよ、けど何を話すの?」

「サラサリズを使い魔にするという事を彼等にも話そうと思って……」

「そう?あなたが話したいと思うなら話して見なさい……、これから私の娘であり次期ピュルガトワール領の領主マリス・シルヴィ・ピュルガトワールがあなた達に話があるから、そのだらしない態度を直して聞きなさい」


  私から話がある、そう聞いた護衛騎士達が表情を引き締めて話を聞く姿勢を取る。

その姿を見て、愛欲のサラサリズを使い魔にする事を本当に話していいのか、一瞬言葉に詰まる。

だってここにいるのは、魔族を討伐する覚悟を決めた人達だ……だからお母様の話を聞いた後に使い魔にすると伝えたらどう思うのか。

もしかしたら私の考えを受け入れて貰えないかもしれない、そう思うと怖いけど……ここでしっかりと伝えなければ、皆に言いたい事が伝わらない。

だから勇気を出して、たどたどしい話し方になってしまうかもしれないけど、ゆっくりと伝えていく。


「……つまり、愛欲のサラサリズをマリス様の使い魔にする事が出来れば、リバスト護衛騎士隊長達が元に戻るかもしれないって事ですか?」

「可能性は低いけど、出来るかもしれないわ」


 私の話を聞いた護衛騎士の一人がポツリとそう呟く。

可能性があるとは返したけれど、正直言って可能性は極めて低い。

だって、自分が自分のままに他の存在と溶け合って、ゆっくりと別の存在へと作り替えられていく。

溶けあう意識の中で、自分ではない何者かが入り込んで来る不快感、けれど……何処か心地よい感覚。

それだけじゃない、存在が上書きされる中で、愛欲のサラサリズを娘として当然のように愛し、彼女に求められるがままに望むだけ無償の愛を捧げ、そして必要とされたら応え、あの子の元になった産まれる事が出来なかった、産まれても愛される事がなく生涯を終えてしまった存在達の、死して尚、魔族へと形を変え新たな生命に生まれ変わっても、永遠に満たされぬ渇きを満たすために、魂レベルで作り替えられてしまう。


「なら、俺達で命を掛けてでもリバスト護衛騎士隊長達を取り押さえます!だから、……魔族の対処をお願いします」


 護衛騎士の一人が頭を下げると、騎士剣を抜いて天に掲げる。

そしてまるでタイミングを合わせたかのように、他の騎士達も抜剣し同時に掲げると、護衛騎士隊長代理のジョルジュが彼らの前に立ち。

覚悟を決めた表情で私達を見て、自身の胸に手を置くと……


「護衛騎士隊長代理であり、ジルベール子爵家の三男であるジョルジュが、尊き血と名に誓います!この戦いにてマリス様の身を命を掛けてお守り致します、そして討伐……いや、愛欲のサラサリズの捕獲作戦といいましょう、その作戦において参加する護衛騎士にこれ以上の犠牲が出ないように、全力を尽くさせて頂きます!皆!こんな未熟な俺だけど、信じてついて来て欲しい!」


 彼の言葉の後に、誰かが小さく吹き出す。

それに続いて騎士剣を鞘にしまう護衛騎士達が伝染したかのように笑い出して


「信じてついてこいだぁ?そんなの当たり前だろ!リバスト護衛騎士隊長の代理が出来るのはおめぇしかいねぇんだ!」

「ちょっとだけ優柔不断な所はあるけど、誰もおまえが代理になる事に文句を言わなかったって事は認めてるって事だろ?だから堂々としてろ!」

「だぁもう、痛いからやめろって!」

「ばぁか!おまえが未熟な俺とか、自分を過小評価してるからだよ!黙って殴られろ!」


 と言いながらジョルジュの肩を叩いたり、頭を小突く護衛騎士達を見ると、さっきまでの私の不安は何だったのか。

そう感じてしまって、私まで笑いそうになる……それは後ろに立っているシルヴァやヘルガも同じようで、二人の事が気になって振り向くと、小さく笑みを零していた。


「分かった、俺が、俺が悪かったよ……」

「分かればいいんだよ分かれば」

「ったく……、じゃあ分かって貰ったついでにヘルガ!君に言いたい事がある!」


 ……この流れはもしかして、死に戻り前でジョルジュがヘルガに対して行ったプロポーズをこのタイミングでしようとしてる?


「俺……いや、私はヘルガの常に自信有り気で、芯がぶれないところを尊敬してる、平民育ちでありながらも従騎士になり、一生懸命努力して来た姿を見て……えっと、正直こんなタイミングで言う事じゃないのは分かってるんだ、だけどもしかしたら魔族に遭遇したら、犠牲を出さないと誓いはしたけれどこれで最後になるかもしれない、だから伝えておきたいと思って、だから、あの!……お互いに生き残れて、マリス様と共に学園にお前が行った後、無事に卒業してピュルガトワール領に戻って来たらその時は一度、俺の故郷に一緒に来てくれないか?」


 あぁ、やっぱり以前とは場所が違うけど、以前と同じような事を言っている。

このままだと再びサラサリズに勝つことが出来ずに終わってしまうかもしれないと思いながら周囲の様子を確認すると、護衛騎士達が『やっと言えたな!』、『おめでとう!』とジョルジュに対して声を掛け始め、お母様も扇で口元を隠しながらも眼が笑っている姿が見えて、更に不安が心に満ちて行く。


「……話しが長いけど、それってつまりプロポーズをしてるの?」

「はは、勿論ヘルガ、おまえがそういうのに疎いのは分かってい……え?、今プロポーズって」

「そんな言い方をしたらさすがに分かりますよ?……そうですね、ジョルジュの実家は海に面していて、美味しい海の幸が食べれる事で有名でしたね」

「あ、あぁ……そうだけど」

「一緒に来てくれという事は私に対して魅力を感じて一緒に居たいと思ってくれたという事ですし、私も従騎士であった時期にあなたに色々と助けて頂いたので悪い気はしませんので、マリス様が学園をご卒業なされたらあなたの好意を受け止めさせて頂きます」


 ……あ、違う、この流れは以前とは違う。

前はヘルガがジョルジュの思いに気づいていなかったのに今は……、私が死に戻りの秘密を話して以前の出来事を伝えたおかげで、流れが変わったんだ。


「でも、そうですね……、そういう大事な事は次から人前でやるんじゃなくて、二人きりの時にしてください、恥ずかしいので」

「……それは何て言うかすまない」

「とりあえずプロポーズしかし話しはこれで終わりですか?それなら早く森に行きましょう、そして……あなたが言ったようにお互いに生き残り、私達の成すべきことを成しましょう」

「……そうだな」


 二人で見つめ合いながら無言で頷く。

そうして野営地での話し合いが終わった後、それぞれがこの戦いに様々な思いや覚悟を巡らせながら、森へと向かい歩き始めた。

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