「そんな、いきなりリバスト護衛騎士隊長の代役を務めろだ何て言われても困ります!」
あの後ヘルガに呼ばれたジョルジュが、お母様から説明を受けてる最中に驚いた表情を浮かべながら言葉にする。
「そうは言っても、リバストの変わりになるのはジョルジュ、あなたしかいないのよ?考えても見て頂戴、マリウスとリバストからの評価が高く、そしてジルベール子爵の三男坊とはいえ立派な貴族よ?充分だわ」
「で、ですが……私の騎士としての実力は、そこにいるヘルガと比べたら余りにも差がありすぎます、上に立つ以上はそれ相応の能力もなければいけないと思われます」
「……そんなことを言ったらジョルジュ、私なんて平民の出なので上に立ったらあなた以上に反発を受ける事になると思う」
ヘルガが護衛騎士隊長の代役になってしまったら、私の護衛が出来なくなってしまう。
そうなってしまったら、王都に着いて学園に同行する事が出来なくなってしまうから、私個人としてはジョルジュに是非なって貰いたい……だからここは後押しをしてみようか。
「んー……まぁ、ピュルガトワール領の騎士に貴族主義の奴は少ないから大丈夫だと俺は思うんだけどなぁ」
「あの……ジョルジュ、私からもお願い出来ますか?」
「マ、マリス様まで?」
「えっと、ダメですか……?お父様やリバストが評価をしていらしたのでしたら、私も安心して任せられると思うので……」
それでもまだ悩むような仕草をするジョルジュを見て、決めるなら早くして欲しいと思う。
護衛騎士という立場なのに優柔不断な態度に何とも言い難い気持ちになっていると、アーロが私の前に立つ。
「ジョルジュさん!俺からもお願いします!俺から見ても昨晩の指示を出す姿はかっこよかったですし、その姿を是非参考にしたいと思ったので!」
「……皆まで言うのなら分かりました、アデレード様、護衛騎士隊長の代役の方謹んでお受けいたします」
「その言葉に二言は無いわね?」
「はい、ここまで言われて辞退するような事があれば、それこそ我が家名に泥を塗る事になりますし、何よりもピュルガトワール領の騎士としての誇りに傷がつきましょう」
「……それが分かっているのなら問題無いわね、ただジョルジュこれだけは覚えておきなさい、上に立つ者に実力は必要だけれど、最も必要とされるのは人をまとめあげる統率力よ、私達はあなたにそれがあると信じているの、努々忘れ亡きよう心に刻み代役を務めなさい」
お母様はそう言うとジョルジュに話し合いを再開するように指示を出す。
それに従い騎士達に号令を出すと、集まって来た者達に自身がリバスト護衛騎士隊長の代役を務める事になった事を伝える。
「……リバストさんが亡くなった事は残念だけど、ジョルジュさんなら安心して任せられる」
「承知いたしました!よろしくお願いいたします!」
「リバストさんの分も俺達で頑張って、マリス様とアデレード様を無事に王都に送り届けましょう!」
皆が思い思いにジョルジュに対して声を掛けるけど、どれも否定の言葉ではなく。
彼を受け入れる言葉しかないのを見て、本人がいくら自信が無さそうにしていても信頼されている事が分かる。
もしかしたら、お父様とリバストは彼のそういう彼の真面目で面倒見の良い人徳を知っているから高い評価をしていたのかもしれない。
「……皆ありがとう、亡きリバスト護衛騎士隊長の名に恥じぬよう立派に代役を務める事をここに誓う!」
「……熱くなるのは良いけど、アデレード様が話し合いを再開する為に指示を出したのだから、忘れないようにね?」
「あ……、も、もちろん覚えてるさ、という事でマリス様、これから道中の護衛に対して大事な話し合いをするのですが、ご参加いただけますか?」
ジョルジュはそう言いながら許可を求めるようにお母様の方を見る。
すると私の方を見てゆっくり頷くのが見えたけど、本当に参加して良いのだろうか。
「え……お母様、私が参加してもいいの?」
「構わないわ、これも将来ピュルガトワール領を継ぐのに必要な経験になるだろうから、参加して経験を積みなさい」
「お母様、ありがとうございます」
こう言う事には慣れていないから意見を出したりとかは出来ないかもしれないけど、経験を積ませて貰えるならその心遣いに甘えさせて貰おう。
そう思っていると、ジョルジュが一人で居心地が悪そうにしてるシルヴァ王子へと近づいていく。
「……出来ればシルヴァ王子にもご参加願いたいのですが、よろしくですか?」
「俺も参加していいのですか?」
「はい、王都までの旅路を共にする以上はシルヴァ王子の意見も必要だと判断致します、それにセレスティア王女の事に関しても話をしたいので……」
「そう言う事なら分かりました、よろしくお願いします」
「ご理解いただきありがとうございます、では……話し合いの場なのですが、陽の当たる場所で行うよりも、屋内で行った方が良いでしょう……従騎士達に告げる!今すぐ小屋に向かい清掃及び、話し合いの場に適した環境を作るように!」
ジョルジュが従騎士達に指示を出すと、返事をしながら小屋へと走っていく。
そうして暫くすると、アーロが一人で戻って来て作業が終わった事を告げ小屋へと私達を案内した。