飛竜は自由と言う無限の思想であり、
竜騎士は飛竜と共に大空を
神速で疾駆することにより、
真の自由と救いを得ることができる。
そんな古の教えを噛みしめながら
今日も神速を極めんと空を舞う。
雲一つ見えない澄み切った空の
濃い青みが視界全体に焼き付く。
それは美しいと思ったのは
一瞬のことで、
すぐに俺の意識は呼び戻される。
「フレッチ、フレーーーッチ!」
愛竜のいつものあだ名を喉が
千切れるくらいに叫ぶ。
スピードを出し過ぎたツケだろうか、
俺は運よく渓谷から突き出た
老木に引っかかった。
先ほどの空のように青い飛竜が
渓谷の最奥の中へと墜落してゆく。
愛竜は、遂に谷の間へと消えていった。
フレッチャー。
俺はいつもフレッチの名で
その名を呼んでいる。
空色の勇壮な体躯と優しい黒の瞳を
持つ美しい竜。
その名を再び呼ぼうとして、
俺の意識は途絶えた。
その時をもって、
永久に俺は空から追放されたのだ。