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第3話 籠の外

 夕陽に染まる草原に、何十本もの木製の十字架が、所狭しと道に沿って並んでいる。


 その下全て赤く染まっているそれは、不思議と太陽の光と上手く調和が取れていた。


 十字架には、何かがくぐる括り付けてあるが、残念ながら逆光でよく見えない。


 いや、これ以上はもう見なくていいと、もうここにはいない誰かが、“逆光”という名の目隠しを、外へ出された者達にしたのかもしれなかった。


 さて、年の頃10才前後の少年が、背が高い兵士2人に付き添われ、その場所に姿を現したのは、丁度日が傾き、オレンジから紺色に変わるか変わらないか微妙な時間帯である。


 道すがら少年は、広場へ続く一本道の左右に突き刺さっている、何本もの十字架に興味を持った。


 そして、立ち止まって十字架を良く見ようと目を凝らして見つめるも、薄暗くて何が何だか良く分からない。


 すると、右手に槍を持った兵士が、“まだ分からないのか?”と言わんばかりに

「あれは西戎羌族セイジュウキョウゾクの死体だ」

と、淡々とした口調で説明する。


西戎羌族セイジュウキョウゾク……」


 教えてくれた槍の兵士を見ずに、オウム返しに呟く少年。


 まだ何かを訊きたかったが、幼いせいか言葉が上手く出てこなかった。


「いつまで見ている!」


 今度は盾を持った兵士が、興味深く観察している少年に痺れを切らし、歩くよう促す。


「止まるな」

「さっさと歩け!」


 度重なる兵士の罵倒が、少年のあらゆる思考を停止させ……


 少々顔に不満の意を表して、少年は言われるがままに再び歩き出した。


 この目の前に現れたそんな光景は、彼にとって人生の最期まで忘れぬ光景モノになったはずだ。


 そして、彼はまだ他人と違う感覚を持っていることに気付いていないのか……


 思わず“綺麗だ”と呟く。


「紂おうさまにも是非味わってもらえたら……」


 少年は瞳を輝かせて、未来の紂王の姿を脳裏に焼き付けた。


 いや、彼が描いたのはそう遠くない未来である。


 その刹那、そうなるように今、時がゆっくりと動き出した。




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