夕陽に染まる草原に、何十本もの木製の十字架が、所狭しと道に沿って並んでいる。
その下全て赤く染まっているそれは、不思議と太陽の光と上手く調和が取れていた。
十字架には、何かがくぐる括り付けてあるが、残念ながら逆光でよく見えない。
いや、これ以上はもう見なくていいと、もうここにはいない誰かが、“逆光”という名の目隠しを、外へ出された者達にしたのかもしれなかった。
さて、年の頃10才前後の少年が、背が高い兵士2人に付き添われ、その場所に姿を現したのは、丁度日が傾き、オレンジから紺色に変わるか変わらないか微妙な時間帯である。
道すがら少年は、広場へ続く一本道の左右に突き刺さっている、何本もの十字架に興味を持った。
そして、立ち止まって十字架を良く見ようと目を凝らして見つめるも、薄暗くて何が何だか良く分からない。
すると、右手に槍を持った兵士が、“まだ分からないのか?”と言わんばかりに
「あれは
と、淡々とした口調で説明する。
「
教えてくれた槍の兵士を見ずに、オウム返しに呟く少年。
まだ何かを訊きたかったが、幼いせいか言葉が上手く出てこなかった。
「いつまで見ている!」
今度は盾を持った兵士が、興味深く観察している少年に痺れを切らし、歩くよう促す。
「止まるな」
「さっさと歩け!」
度重なる兵士の罵倒が、少年のあらゆる思考を停止させ……
少々顔に不満の意を表して、少年は言われるがままに再び歩き出した。
この目の前に現れたそんな光景は、彼にとって人生の最期まで忘れぬ
そして、彼はまだ他人と違う感覚を持っていることに気付いていないのか……
思わず“綺麗だ”と呟く。
「紂おうさまにも是非味わってもらえたら……」
少年は瞳を輝かせて、未来の紂王の姿を脳裏に焼き付けた。
いや、彼が描いたのはそう遠くない未来である。
その刹那、そうなるように今、時がゆっくりと動き出した。