「あぁ……一也様……」
私は一也様の忠実なしもべ。
その麗しき主である一也様の唇が私を激しく攻め立てる。
あぁ……なんて。なんて素晴らしいの。これが。これが一也様の……
そのあまりの激しさに、私はそれだけで、それだけで……果ててしまいそう……
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私と一也様の出会い。それはそれは運命的でございました。
私はいつものように店の入り口近くに腰掛け、ガラス越しに外を眺めていたのでございます。そこにあるのは、いつもの光景。通り過ぎる人。人。人。
そんな通り過ぎるだけの人の波を眺めていた時のことでございます。不意に店内に一人の男性が入っていらっしゃいました。するとどうでしょう。店内が、色とりどりの花を散りばめたような芳醇な雰囲気に満たされたではありませんか。
私は思わず息を呑んでしまいました。
こんな方にお仕えすることができたなら……
しかし私など見向きもされないに違いない。そう。誰だどう見てもみすぼらしい私など。そう思って諦めかけていた時。なんと店のオーナーがその男性を私の元へと誘ったではありませんか。
私は震えました。罵倒されるのではないかと。
しかし何としたことか。その男性は私を、私を選んでくださったのです。そう、その男性こそ我が生涯の主。一也様。
その後どこをどう歩いたかも分からず、気がつけが一也様のお屋敷に。
そこで私は、大事に大事に磨き上げられていったのです。そして、とうとうこの時がやってまいりました。一也様に奉公するこの時が。
そして……そして……
一也様が情熱的に私を攻め立てます。
あぁ……
一也様……一也様……
そして、とうとう私にその時が訪れたのです。
「あぁ…… 逝く。逝っちゃう。ああああああああ……」
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「よぉ一也。最近始めたサックスの調子どうよ?」
「ん? あぁ最初は調子が良かったんだけどよ? やっぱ中古だな。最近音の鳴りが悪い感じがするな」
「そっか。まぁ練習用だしな」
「ああ。本番は新品のあの子でいこうかと思ってる」