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誤解

ー午前6時

「ん……むっ……苦し……」

目覚めてすぐに違和感に気づいた。

「むにゃ……ふぐぅ……」

「あ……そうだ……アミィがいたんだっけ……」

アミィがすぐ目の前で寝息を立てている……。

「ね……アミィ……離して……離して……」

「ん~……?」

アミィは僕の首の後ろに腕を回してしっかりと僕にくっついている……。

「息が……くすぐったい……」

「……んぁ……はっ!」

「あ……アミィ……起きた……?」

アミィは自分の格好を見て固まった。そしてみるみるうちに顔が赤くなっていった……。

「わ……わわわ……っ!」

手をバタバタと動かして体勢を変えようとするもアミィの腕は僕に絡まってなかなか取れなかった……。

「あ~っ!ごめん!ごめんねアルくんっ!」

「落ち着いて……アミィ……」

落ち着かないから……ますます取れない……。

「わ~っ!」

「あ……っ!危な……!」

……結局腕を回したままベッドから落ちた……。

「いった~……」

「うぅ……」

アミィが僕の上でぼやく。

「ご……ごめんごめんごめん!……も~!ボクってほんとに寝相悪くて!ごめんね!」

「ううん……いいよ」

「じゃあとりあえず朝ごはんにしよ!」

「また作ってくれるの……?」

「じゃぁ~一緒に作りましょ!」

「ん……楽しそう……」



ー午前7時

「さぁできた!」

「渾身の……サンドウィッチ……!」

「タマちゃんの卵、ボク食べるの初めてだよ!」

「とっても……おいしいよ……」

ひととおり料理を食べ終えた……。



ー午前8時

「じゃあ……畑とどうぶつのお世話……しなきゃ……」

「ん!そうだね!」

「アミィは……どうする……?」

「ほんとはず~っとここにいたかったり~……なんてね!あははっ!」

「楽しいから……退屈な時は……いつでも来ていいよ」

「ほんと?!うれしいな!」

「僕も……やっぱり誰かがいてくれた方が……楽しいから……」

「わかった!じゃあまた一緒に遊ぼうね!」

「うん……!ありがとう……!」

アミィは帰っていった……。



ー午前10時

「あらかた終わったね……。

やることもないから村を歩きに行こう……。

「あ!アルさん!」

前方からシャルがやってきた。

「あ……シャル……」

「この間はほんとにすみませんでした!」

顔を合わせるなりシャルは頭を下げる……。

「んーん……いいよ……。そんな大したことなかったし……」

「いえ……その……聞きました……ごめんなさい……」

「…………」

「私、その……あのあとお兄ちゃんにも怒られて……ほんとに……勝手なことして……」

「ビットが……」

「え……?」

「ビットが……なんでシャルを怒るの……?」

「あ……アルさん……もしかして……」

「それはちょっと……おかしいね……」

「い、いえいえ!その……ほんとにそんな大したことじゃないので!」

「ううん……ちょっと……シャル……。ビットのところに……行こうか……」

「う……はい……」

シャルとともにビットのところへ行くことにした。



ー午前11時

「……ビット」

「のわっ!なんだアル!えーっと……まさかお前なんか……怒ってない……?」

「怒ってるのは……ビットだって……」

「ごごご、ごめんなさいお兄ちゃん!その……えっと……この間のことで……」

「あれはもう解決したんじゃ?!」

「うん……それは……ね……。でも……きいたんだ…。…シャルのこと怒ったって……」

「なっ……!シャル!」

「ひっ……!」

「いやいやいや!ちょっと待ってくれ!今だってそうだけど!別に俺はシャルのことをそんな怒ってなんて……」

「こ……怖いです……アルさん……」

「シャル……!お前わざとやってないか……?」

「……ん……なんか……ちゃんと説明して……?」

「ふぅ……やっと落ち着いたか……」

「ごめんなさいアルさん……怒られたってのはその……別にアルさんと……なんていうか……その……えっと……そーいう関係になったんじゃないかって話じゃなくてですね……先輩としてなら……俺を頼れ……って……」

「あ……そっち……なんだ……」

「ち、ちちちげーからな!べ、別に悔しかったわけじゃないし……」

「ごめんね……シャルを誘ったのは僕なんだ……」

「いえいえ!私がそう言うように仕向けたようなものですし!」

「ま、なんだ。この1件に関しちゃもう悪いやつはいないってことにしようぜ!」

「ビットがそう言うなら……」

「混乱させちゃってごめんなさい!」

「あ、でもな、アル。」

「……ん?」

「そのー……シャルって言ってることについて、ちょっと、いいか……?」

「は……はわわ……それも……私から……」

「シャル……やっぱりお前……」

「そんなことないですー!先輩にはもっと距離を縮めてほしかっただけですー!」

「まぁでも……呼びやすいよね……実際……」

「くそう……俺だけが呼べる特別感が……」

「なんか……言った……?」

「いや!もうお前はその呼び方でいい!はい、解散!」

「ごめんなさいアルさん。でも私のことで怒ってくれて、嬉しかったです」

「そんな……恥ずかしいよ……」

「また教えてくださいねっ!」

「……うん……」

「はい!さっさと帰れ!しっ!しっ!」

「またね、ビット……」

手を払うような仕草をしながら、ビットは満面の笑みだった……。



ー午後0時

ハングリーラビットにきたよ……。

「あ、トーマス……」

「む、アルですか」

トーマスの近くに座る。

「ききましたよ。ビットのところに殴り込みに行ったって。無茶しますね、君も」

「待って……なんか違う……。それ……誰からきいたの……?」

「チェリッシュです。男らしくビットのところに乗り込んでいくところを見たって」

「チェリッシュ……今度は君か……」

「まあその様子では本当じゃあなさそうですね。君も大変ですね。この間からそんなことばかりでしょう」

「うん……なんかね……色んな人に構ってもらえるのは嬉しいんだけど……ちょっと疲れちゃうね……」

「……少し、贅沢な悩みですけどね」

「手厳しいね……トーマスは……」

「はは、悪く思わないでください。君のように悩みたくても悩めない人は多いんですよ。ましてや人間関係においては……縁が多いだけ幸せってものでしょう」

「まあ……1人よりは……全然いいね……」

「そうでしょう?」

「うん……」

「なに、別に私は意地悪を言おうとした訳じゃないですからね」

「ん……わかってる……ありがとう、トーマス……」

「時に、アミィとなんやかんやあるって話も聞いてるんですが……」

「えっ……!」

「図星……ですね……」

「誰かに見られてたのかな……?」

「まあ、私は何も言いませんけど……ビットが羨ましがってますからね……」

「そこでもビットが……」

「君はただでさえ女の子との話が多いので……ね」

「確かに……贅沢な悩みだったかも……」

「そう思えたのなら結構です」

「ありがと……トーマス」

「何もしてませんよ」



ー午後5時

見回りや整備をしてたら夕方だった……。

どうぶつたちをしまって……またハングリーラビットにきたよ……。

「あー!アルくん!」

「あ……アミィ……」

「また会ったねぇ!にっしし……昨夜は楽しかったねぇ……!」

「ちょっと……!誰かに聞かれたら……」

パターンっ!

「はっ……!」

「ど……どういうこと……?」

そこにはミカが立ち尽くしていた。持っていたであろうメニューが足許に転がっている……。

「ミ……ミカ……」

「あ~……」

「ちょっとアル!説明しなさい!それってそーいうこと?!それともどーいうこと?!」

突然意識を取り戻したかのように大慌てで僕に詰め寄ってきた。

「お……落ち着いて……えっと……その……一昨日ね?あーいうことがあったでしょ……?」

「う……う」

「あの日……僕……なんにも食べてなくて……その……昨日……倒れちゃったの……」

「えー!ちょっと!大丈夫なの!?」

「それがね……アミィがいてくれたから……大丈夫だったの……」

「うん、ちょっとそこがわかんないんだけど!説明して!」

「これこれ、これだよ~」

アミィが懐からアミィエールを取り出した。

「うげぇ……なにそれ……」

「飲んで……みる……?」

「いやいやいや!絶対飲むものじゃないでしょ!」

「んーん!飲むものだよ!」

「も……もしかして…」

「うん……あれを飲んだんだ……。薬……だって……」

「むしろ体調崩すんじゃ……」

「そんなことないよ!」

「そうだよ……。なんと全回復……。すごかった…。ちょっと……怖かったけど……」

「それなら確かに……昨日ってのは納得……誤解してごめんね」

「わかればいいんだよ~!」

「でもアミィって……寝相がひどくて……」

「…………え?」

「あ…あはは~そうそう!看病してる最中についついうたたねしちゃって!ね!ちょ~っとだけね!ね!」

「う……うん……」

「なんか怪しい…まあいいわ!アルにはアミィちゃんを丸め込めるほどの器用さはないもんね!」

「う~ん……それは確かなんだよねぇ~……」

「……そう?」

「そうだよ!……ちょっとは察して欲しかったりするんだから……!」

「んー?小声で何言ったのかなー?ア・ミ・イ・ちゃん?」

「んも~!鉄壁だよこの子~!」

「うちのアルくんはほっとくと簡単に落ちちゃうので簡単には落とさせません!」

「なんでさ~!」

「それはまあ……あたしが構ってもらえなくなるから……ごにょごにょ……」

「ほら~!やっぱり自分だって~!」

「……何話してるの?意外に仲良しなんだね……二人って……」

「あっはは~!そうでしょ~?」

「ねー!仲良しねー!」

「ね、ミカもアミィのこと……家族みたいに思ってあげてね……」

「え、どういうこと?」

「あ……別に………そういう意味じゃないよ……?ただ……僕がアミィだったら……そういう風に接してくれる人がいたら……嬉しいと思って……」

「ふーん。それでアミィとよく一緒にいるってこと?」

「まあ……それも……あるよね……」

「そうじゃないって理由も~?!」

「……。まあ……ある……よね……?」

「はっぁあ~!もう!邪魔できるような関係じゃないんじゃない?!」

「……やっぱりボクたちの邪魔するつもりだったんだねぇ……」

「……?……ミカも一緒だから、邪魔できないってこと……?」

「あーやっぱりアルはそーいう関係とは意識してないみたいよ?アミィちゃん?」

「ぐぬぬ……もうちょっとなんだから……!」

「とりあえず……ご飯食べよ……」



ー午後7時

食事も終えてお家に帰ってきたよ……。

「今日はなんか……ごちゃごちゃした話ばっかりで……頭痛くなっちゃった……。人間関係って……ほんとに大変……。でも……僕みたいなのにかまってくれる人がいるってだけで……嬉しいのかも……」

意外にも人に恵まれていたことを再認識させられた……。でもやっぱり疲れちゃうのも事実だよね……。今夜はもう……おやすみなさい……。

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