「人の入ったことの無い未開の地ってやつかなぁ。」
うっそうと茂る木々を見下ろしてリーシャはつぶやいた。
「ねぇ、本当にここにいるわけ?」
『もちろん!でも気を付けてね。もう騎士団の連中が森には入っているみたいだから。』
どこからか風にまじって人の声が聞こえる。
「まっかせなさい。」
言葉と同時にリーシャは断崖へと飛び込んでいく。
「なんでこんなめに……。」
森の中を走りながら少年はつぶやく。
「いたぞっ!」
「青い髪に赤い瞳、手配書の特徴とと一致している!」
「子供のドラゴンも二匹連れている!間違いない!」
「捕まえろ!」
後ろから迫ってくる白い服の男たちから逃げつつも、少年は初めて見るその生き物に興味を持つ。
(正確には俺以外の人間だけど。)
ずっとここで生きてきた。
いつからそこにいたのか覚えていない。
ただ、気づいた時にはそこにいて、イーサに拾われて育ててもらった。
『レガリア、とにかく隠れよう。』
『あの茂みの飛び込め。』
「わかった。」
そばにいる子供ドラゴンに促されて茂みの中に隠れる。
「どこにいった!」
「すばしっこいやつめ。」
「まだ遠くには行っていないはずだ!」
「探せ!あっちだ!」
バタバタとした足音が遠のくのを感じると、少年は胸をなでおろす。
「なんだってオレを追い回すんだ……。」
自然と漏れた言葉は無意識だった。
(イーサがいたら……。)
イーサは落ちていたオレを拾って育ててくれた。頭もよくて、何でも教えてくれた。生きることもこの世界の事も。そんなイーサは自慢で太陽のような存在だった。
けど、イーサは動かなくなってしまった。イーサはいなくなってしまったんだ。
「いたぞっ!」
「こんなとこに隠れていやがった。」
「生きていればかまわん!骨の二、三本追ってやれ。」
考えることに集中していたせいか、囲まれていることにも気づかなかった。
(やられるっ1)
ドゴォッ!
『!?』
「よしっ!無事到着!よかったよかった。」
突然空から降って出た少女と、その下敷きになった不憫な白服の男が状況の変化を物語っている。
(ってか、めっちゃ踏んでますけど……。)
内心そんなツッコミを入れつつ、少年はその少女を見つめた。いや、正しくは突然の出来事に目がそらせなかった。