目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第11話 未開の森1

「人の入ったことの無い未開の地ってやつかなぁ。」




 うっそうと茂る木々を見下ろしてリーシャはつぶやいた。




 「ねぇ、本当にここにいるわけ?」




 『もちろん!でも気を付けてね。もう騎士団の連中が森には入っているみたいだから。』




 どこからか風にまじって人の声が聞こえる。




 「まっかせなさい。」




 言葉と同時にリーシャは断崖へと飛び込んでいく。








 「なんでこんなめに……。」




 森の中を走りながら少年はつぶやく。




 「いたぞっ!」




 「青い髪に赤い瞳、手配書の特徴とと一致している!」




 「子供のドラゴンも二匹連れている!間違いない!」




 「捕まえろ!」




 後ろから迫ってくる白い服の男たちから逃げつつも、少年は初めて見るその生き物に興味を持つ。




 (正確には俺以外の人間だけど。)




 ずっとここで生きてきた。


 いつからそこにいたのか覚えていない。


 ただ、気づいた時にはそこにいて、イーサに拾われて育ててもらった。




 『レガリア、とにかく隠れよう。』




 『あの茂みの飛び込め。』




 「わかった。」




 そばにいる子供ドラゴンに促されて茂みの中に隠れる。




 「どこにいった!」




 「すばしっこいやつめ。」




 「まだ遠くには行っていないはずだ!」




 「探せ!あっちだ!」




 バタバタとした足音が遠のくのを感じると、少年は胸をなでおろす。




 「なんだってオレを追い回すんだ……。」




 自然と漏れた言葉は無意識だった。




 (イーサがいたら……。)




 イーサは落ちていたオレを拾って育ててくれた。頭もよくて、何でも教えてくれた。生きることもこの世界の事も。そんなイーサは自慢で太陽のような存在だった。


 けど、イーサは動かなくなってしまった。イーサはいなくなってしまったんだ。




 「いたぞっ!」




 「こんなとこに隠れていやがった。」




 「生きていればかまわん!骨の二、三本追ってやれ。」




 考えることに集中していたせいか、囲まれていることにも気づかなかった。




 (やられるっ1)




 ドゴォッ!




 『!?』




 「よしっ!無事到着!よかったよかった。」




 突然空から降って出た少女と、その下敷きになった不憫な白服の男が状況の変化を物語っている。




 (ってか、めっちゃ踏んでますけど……。)




 内心そんなツッコミを入れつつ、少年はその少女を見つめた。いや、正しくは突然の出来事に目がそらせなかった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?