声は風にのってどこまでも飛んでいくような気がした。耳に入るのは風の音、草の揺らめき。土の香りが心に染みる。こんなに浮足立った心と同時に何かが刺さって抜けない。
「今日は哀愁漂ってますなぁ。」
「リーシャちゃん……。」
「喜びの歌が葬送曲にしか聞こえないわよ。」
丘に座るリジュナの横に立つリーシャは間延びした声で言う。
「……もういくの?」
「うん。本当はあいつら叩き出してから行きたいとこだけど、急ぎって言われてるからねぇ。」
急いでるとは言いつつも、その態度は全く急いでいるように見えない。
「ごめんね。」
「リジュナが謝ることじゃないでしょう。」
「うん……。」
「反対されたのがショック?」
「え?」
思わぬ言葉にリジュナは友人を仰ぎ見る。どう答えていいかわからず、俯くしかできなかった。
「リジュナの立場なら喜ぶとこでしょ?当主が反対ならこの婚約は向こうの責任で破棄されるだろうし。セントラルからここに移るって話したとき、四人の中で最後まで悩んでたのはリジュナだったのに、婚約話が出たとたんに決意して、家出みたいな形できたけど。やっぱそれだけ嫌だったんでしょ?」
「うん……。」
「それとも……。単純に自分を認めてもらえなかったことがショックだったのかな。好きだったとか?」
弾けたように顔を上げたものの、どう反応していいのかもわからずうろたえる。ただ言葉になったのは思い出話だった。