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第21話 本当はあんなに仲良かったのに






 ……最近は自分の事で不安定だ。あの力で助けてもらってばかり。それもこれも薊さんと上手くいかなくなったから。


 薊さんは百合愛さんと違って、気兼ねなく何でも言える人だったからこそこうなった。きっと言いたいこと言っちゃうんだ。


 でもそれって甘え?……本当はあんなに仲良かったのに。そう、あの頃……




  : + ゜゜ +: 。 .。: + ゜ ゜゜ +


        +: 。 .。: + ゜ ゜゜ +:。. 。.





「と、言うわけで私的に好きなシーンはこれとこれで、とにかくここでのお兄さんの活躍が最強なんだよね-。どう思う?」


「うんうん、私も~。妹も必死に『お兄様』を助けに行って、ホント健気ですよね」


 あざみの部屋でオタク話に花が咲く。薊が中2、澄美怜すみれが中1の仲の良かった頃の事。


「あ、今度続編が作られるって発表があったの知ってる? 今から楽しみで」


 好きなアニメの話しに興じつつ、やがて恋の話へと。


「ねえ、スミレちゃんのクラスとかに好きな人とかいる?」


「え? うちの男子? ちょっとなんていうかまるで小学生ぽいって言うか……う~ん、そう言う風に見れる人はいないかなー」


「ふーん、そうなんだ。うちのクラスもほとんどそんな感じだけど例外もいて……ねぇ、お兄さん、付き合ってる人とかいるのかな?」


「えっ、あ……ああ、今はいないかな。只、運命の人なら居たんですけど」


「えっ?!  な、何それっ?……」


「ここに住んでた同級生。百合愛ゆりあさんって言う妖精みたいな人。それはそれはお互い好き合ってて。何か大人の人同士みたいに。でもご家族の仕事の都合でアメリカに行ってしまって、そのせいでお兄ちゃんは家にいるとずっと塞ぎ込んでしまう様になって……」


「……そうなんだ。…… 早く傷が癒えるといいね」


「うん。今、色々元気付けようと妹の蘭ちゃんと試行錯誤でやってるんだけど、表向きは爽やかに『ありがと』って何やっても感謝してくれるけど、ふと気づくと遠い目になってて実は上の空なのが分かっちゃうから多分しばらくは誰とも付き合えない気がする」


「……そっか。じゃあ、友達からお近づきになろうかな?」


「え、既にあんなに親しげじゃないですか。……てまさか、薊さん、お兄ちゃんの事……」


「ああ、あんまり気にしないで。もうちょっと仲良くなれたらそれでいいんだ」


―――薊さんてお兄ちゃんの好みのタイプとは違うから、まさか……ね


「じゃあ、せめて友達としても相性悪いんじゃ良くないから、ここは占いでもしてみようか。じゃーん、タロット占いアプリ」


「そんなのあるんですか」


「まあ、遊び半分ね。けど友達が、凄く当たるって」


「えっ興味ありますっ」


「ではでは。 え……と、 ん? 心を落ち着けて気持ちが定まるまでシャッフルボタンをタップ、だって。カンタン過ぎ~」


「ほー」


「トン、トン、トン、トン、もひとつトンって。はい、結果発表……えーと、『あなたを取り巻く今――― あなたは今、恋を待つ入口に立っています。このカードは、今はまだじっくりと無理せずにゆっくり恋に向かってゆくと良いことを意味しています。

 深く状況を見つめる程あなたの魅力は深まり相手がそれを認めてくれる様になるでしょう』 だって!」


「ナルホドー、なんか、いかにもって感じですねー」


「あの人の状況と愛され方――― この復活のカードは彼が長い苦悩を越えたあと、別人の様になってもう一度喜びを得られる事を暗示しています。

 接し方のアドバイスは素直にあなたの方から接っし、友達感覚で遠まわりでも自然体でいることが大事です。

 ホゥ!

 もし彼が傷心ならそれは重い関係が原因です。そうした恋愛は得てしてその後の気兼ね無いやり取りが出来る人にこそ心底癒され~! 心を開き~!、やがて魅了される事になるでしょうううっっっておおぉぉぉ~~~~っ! 当てはまるぅ~っっキャハハハハーッ」


「あ、薊さんっ、落ちついてっ」


「よし、まずは深優人みゆとくんと友達になろ―っ!!」


「ァハハ。もう薊さんたら。やっぱお兄ちゃんの事を……」



―――ああ、女の子って好きな人が出来たらこんな風に一生懸命になるんだ。私は生まれた時から何となく好きな人がずっと側にいて、淡い想いだけでボヤッとしてやって来た。


 そして何となく何時かはその想いが届くんじゃないかと思い違えて生きてきた。いつか恋人とかになれたら、なんてただ漠然と。でも、今日、初めて色々分かった。


 想いを伝える為の地道な努力ってとても大事なんだってこと……。




    : + ゜゜ +: 。 .。: + ゜ ゜゜ +:。




 そんな風に回想から戻る澄美怜すみれ。もう戻れないのかな……と瞳を曇らせながら。





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