この日、勉強を教わるフリで兄の部屋へ押しかけた後、自室へ戻り溜息をつく
今日のお兄ちゃん、久しぶりに『あの遠い目』だった……。またあの頃みたいになって欲しくない。何時も私に手を差し伸べてくれるのに私に出来る事は少ない。でも、だからこそ……。
嘗て
お兄ちゃん……普段の至れり尽くせりサ―ビスはしあげたくてしてるだけ。でも少くとも近くには居てあげられる。ウザイかもだけど一人きりになってはダメ。
だってあの直後などは一週間もろくな食事も出来ず皆を心配させた。風の便りでは百合愛ちゃんもそうだと聞いた。
どれだけ想い合ってたんだろう。あまりに早熟なのも困りものだよ。でも仕方ない。
―――何せあの二人は「運命の人」だと思い込んでいたんだから……。
そう、とても相手思いの二人はそれぞれがいつも極自然に気遣い合って息の合う感じだった。不思議な事に、電話が来るとか話そうとした事が何となく先まわりして分かるとか、言葉がハモッたりする事も多く、考え方もとても近い。
「多分ここに来れば会えるよ」
一番驚いたのは時間と場所の指定も無しで何となく集合、なんて神技を『何度も』やってたこと。
そうした偶然を一種の必然として『シンクロニシティ』とか言うらしいけど、そう言うには余りにもドンピシャかつ何度もだったから、本当は潜在意識下で完全に繋がっているんだって何度も思ってた。
特に兄に対する
一番近くで見てた私だからこそ分かる、あれはきっと『ツインレイ』……1つの魂を二人に分けてしまった的なヤツ。
でなければ別人性双生児とでも言うか、或いは精神だけ夫婦……みたいだった。そう、とても小学生とは思えない、何か特殊な二人だった……
でも早熟だった二人にとってその感覚は本気だったのは間違いない。それが引き裂かれたのだから大変な事だった。
聞いた話ではその後、
……でも何で二人はそこまで?……けど……このままじゃお兄ちゃんまで……何とかしなきゃ……
「お兄ちゃん……あの人が大事な人だったって分かる。私も悲しい……でもそんなにしてたら体が……せめて少しは食べて……」
「ボクは!……誓っていたのに……救ってあげられなかった……」
吐き捨てる様にそう言って、頭を抱えながら涙を流し出した。その兄の深刻さに息が止まる
……誓っていた……?……何を?……
もっと色々と聞きたかったが、そこに触れてはいけないものを感じ口をつぐんだ。
それからである。『
あざとく妹に気を向けさせようとしてる風を装う事で、実はあの人を忘れさせる元気づけ行動だと悟られたくなかったからだ。
子供の頃、近くの民営コートに親の趣味でよく連れられて家族で遊んだ経験から、親に話してコートを取ってもらい兄を引っ張り出した。
気持ちが塞ぐ時は体を動かすのが一番。少しは気が晴れるらしくプレイ中は輝いていた。テニススクールに一緒に通ってた頃の様に無邪気にプレー出来て楽しめた。
もっと他にも気晴らしを、として再び自分の楽しめたマンガを渡す。
「これ、なかなか面白かったよ。読んでみて」
「ありがとう。――――――――う…… 」
しまった! 少女マンガだからどうしても恋愛要素が……そもそもお兄ちゃんは私のコレクションで恋愛ものに傾倒していったんだっけ、かえって思い出すだけか。
これはマズイ!……
急いで他の事を探す