「ねえお兄ちゃん見て、この決壊2ndのトレイラーとMAD。あとこれも、決壊:星間鉄道。……私、鳥ハダ立っちゃった」
「おー、マジエモい! この動画どこで見つけた?」
楽しさ半分、仲良い兄妹って余所でもこうなの?……と戸惑う
「俺もプレイリストに追加しとくよ。こっちもこんなのみつけてさ……」
穏やかなひと時。でも兄の気持ちは少しいたたまれなかった。自分は本当にあの失恋から癒えているのだろうか、と密かに瞳を曇らせる
あの日の
だが悲しいという感覚がかなり薄くなったのも事実だ。それはきっと
その横顔を見る
――― お兄ちゃん、私、少しでも近づきたくて……
だからせめていつも良くしてくれている事への恩返ししたかった。だって私を救えるのはお兄ちゃんだけだから。 その為に私がどんなに
だけど、もうそろそろ必要なさそうだね……あの時折見せてた悲しい顔は今は殆ど無い。時間は優しくて残酷。
なのに今までよりもお兄ちゃんに近づこうとしているのは薊さんのせい。
嫌だ!
『あの病』で私が取り乱しておかしくなる度、どんな時も
この人は私の命……それが別の何かに染められてゆく。
それを誰より近くで見てなきゃならない。それってこんなにえぐられる事なんだ……。
恋する年頃になって分かって来た。自分の命の様に大切なものが遠くに行ってしまう事の意味。私の中の大前提がうずき、ざわめく。
―――だったら消えてしまいたいと……。
ただ自分の経験や知識ではどうすべきか分からない。だって私は妹。それ以上になれない。でもいっその事、真正面からぶつかってみようかなんてムチャなこと考え始めてる。
世間的にはやっぱり異常なんだろうな―――――
◆◇◆
その夜、永遠園家の隣家では、ベッドの中で悶々と寝付けずに寝返りを繰り返す
延々と恋の悩みに耽り込んでいた。
……私は
高校に入っても仲良くいられたら、いよいよ彼女になるために告白するって決めてた。そのために今まで友達として大事に温めて来た。
関係が壊れる事を躊躇してたんじゃない。いつでも話せば意気投合出来たしその上楽しいのに落ち着ける。顔立ちだって私好みだ。そして私の事を可愛いって言ってくれる。
もう昔の彼女への思いに縛られていない事もこの三年で感じ取れる。
私にとっては多分これが本当の初恋だ。ずっと友達っぽくやって来て、最高に仲も良い。だけどやっぱり恋愛は成就させたい。
薊はその小さな額に手の甲を載せ、溜息を一つ。
自分の人生、青春時代。思い出作り。出会いと別れ。どんな楽しい事、辛い事があるのだろう。初恋なんて普通は上手くいく方が少ない。
それでも……例え涙したとしても振り返った時、何も言えずに終わってしまう後悔だけはしたくない。
でも正直なところ、ダメだった時の事を考えると怖くて仕方ない。フラれたらめちゃくちゃ泣くんだろうな。あのシスコンぶりも気になるし。
だけど自分は単純で前向きな所が長所だ。いい高校時代だったって、そう思えるようにしていたい。
ああ、自分はどんな風に切り出すのだろう。向こうから告白してくれたらどんなに楽で嬉しいだろう。でも待っていても変わらないだろうから、切り出し方も考えなきゃ。
――― 最近はこんな事ばかり考えている。寝ても覚めても。