トレーニング中、兄の脱ぎたてのシャツを適当な理由をつけて持ち出した
やった~、アイテムゲット~! 私はお兄ちゃんの匂いが大好き。表現が難しいけど、そう、それはまるでお兄ちゃんが愛飲してるあれ、あの青く美しいブルーエ(矢車菊)の花びらがたくさん入った兄お気に入りのフレーバーティーの香りに似ている。
様々な果実、バニラ、そしていくつかの花で香り付けされた、あの甘い香りにも似た何とも落ち着くけど抱きしめたくなる様な感じにウットリしてしまうのです!
最近の
清潔なのはいいけどちょっと神経質なんだよね。洗たく物もさっさと洗濯機へと入れられちゃうし。ん? て事はこれ、私的末端価格、プライスレスってヤツ? このまま封詰め……いやそれは流石にマズいか、でもすぐに洗濯機ヘって言うのもちょっと惜しいし。
キョロキョロ ――――誰も居ないよね……。
廊下に一人佇み、おそるおそる鼻を近づけると、スンスン、スンスン。
ああ、これ! 高純度兄フェロモンがまさに濃縮されてて自分史上最強! マジヤバイかも。今迄に無い甘い香りと汗のハ―モニー。う~最高過ぎる―。あーもったいない~……
やっぱりもう一回だけ。永遠園澄美怜、次は思いっきり顔から行きますっ!
……ガバッ
はうぁあ~
……正にこれはアニメのシーンならピンクのグラデの背景にソフトフォ―カスで天国的なミスト、そこにシャボン玉が飛んでるってヤツだよね―。
『ハァ―――幸せ……』
だらしなく緩みきった顔を上げると、そこには物陰から半身で覗き見る妹・蘭の姿が。
「……ら!! 蘭……ちゃん……」
「あ、いえ、私は何も」
「ちょっと! どこに行くの!」
「おフロへ……」
「この事は……」
「はい、何も、いえ、誰にも……」
「やっぱ見たのねっ!」
「ひっ」
「ちょっと来なさい。そんなに怖がらなくていいのよ~。お姉さんがちょっとだけ、蘭ちゃんにも大人のヒ・ミ・ツ、教えてあげる」
「あ、いえ」
「遠慮しなくていいのよ。 ほんとは興味あるんでしょ~」
「実は……(お姉ちゃんのマネしたがり屋の私としては) 少しだけ……」
「まあ、物分かりがいい事。それならこちらへ。さ、一緒にドーゾ」
姉妹同時に、スンスン ……スンスン、「んはぁ―」 と顔を赤らめ恍惚とした表情の二人。どう? と聞かれ、デレーっとしながら、
「お姉ちゃん……これがスン・デレってものなのでしょうか」
「何それ?……でもそうね」
「何かちょっと幸せになってしまいました。お姉ちゃんこれ、やばいかもです」
「でしょー、蘭もこれで大人の階段を一段登れたね。でもま、初心者はこの位にしておきましょ。あ、取りあえずこの事は二人だけの秘密と言う事で」
はい、お姉様、と少し酔い気味で部屋へと向かう蘭。『あ、鼻血が……』とフラつきながら去って行った。
こうしてヘンタイ姉のささやかな秘め事の口封じは成功。
だがその後洗濯機に入れる前に名残惜しさに負けてもう一回悦に入ってしまった
**
フロ上がり、部屋で髪を乾かしながら物思いに耽る澄美怜。
う~ん、よくよく考えれば蘭ちゃんにヘンな教育をしてしまったのでは? さすがにちょっと自分でも変態ぶりが心配になってきた。こんな人間、どんだけいるのだろう。
アニメではクンクンしてる女の子キャラとかいたけど、サスガにあれはかなり誇張してるはず。そうだ、ネットで調べて見よう!
オタク
ハイスペックノートpcを颯爽と開き間髪入れずカチャカチャカチャ……
「どれどれ、……え?! ……こ、これは、こんなに居るんですか? うそーっ、これじゃまるで世の女性はヘンタイだらけじゃん。
うっわー、この掲示板、凄い数の人がカミングアウトしてる。あ、嗅いでるところの動画アップしてる人まで(笑)
世の男性の皆さーん! この件は絶対に調べないで下さいねー。私程度は可愛く見えてしまいますヨー 」
そして更に深掘りして行くと……
「え―と、何々? 匂いが好きな理由の解説サイトまである。その訳は……」
●女性が嗅ぎ取っているのは、男性がフェロモンとして分泌する白血球に含まれるHLA遺伝子であり、嗅覚重視タイプの女性はその能力でチェック……
『やっぱフェロモンてあるんだぁ』
●体臭をいい匂いと感じる相手とは、遺伝子レベルで相性がいいと言える。 基本的に最も異なるタイプの遺伝子ほど……
『相性がいいとイイ匂いに感じるのかー』
●女性はもともと子孫繁栄の為に多様性を残せる良いパートナーを嗅ぎ分ける能力を持っていて、そのため近親者の匂いは好きになりづらくなっているという……
『ん?……てことは私達は結局変態ってコトー?……アタタ』