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第2話 『スン・デレ』な妹との困った日常




 いつも通りの穏やかな朝食時。ボンヤリとした目でパンを頬張る深優人みゆと


 この澄美怜すみれの兄は実は相当なイケメンだ。だが本人は単なる地味系の冴えない男と思っている。


 実際余り自分を飾ろうとしない。モテようと思ってもいない。


 現状に満足だからだ。もちろん自身の見た目ではなく、今の幸せな状況にである。ただただ愛らしい妹を幸せそうに眺めると、妙な感慨に耽る。



―――俺の妹は兄の贔屓ひいきを差し引いても可愛い。清楚にして可憐、そして俺好みでもある。下の妹はまだあどけなさも残っているが嘗てのすみれにソックリだ。

 とても兄妹思いのオットリ型の平和な一家。この平穏、ずっと続いて欲しい……。



 この兄妹達は小学校~大学のエスカレーター式学校に通っている。成績はやや上位といった所の深優人。部活に入っていないこともあり、安穏と学生生活を過ごしている。


 妹二人はお互い溺愛状態。下の妹が出来た時から可愛くて仕方ない様で、お姉さん風を吹かせていつも遊びやお世話、そして勉強を教えてあげたりで、とても懐かれている。

 そのせいで末っ子は相当お姉ちゃん子になってしまった。でもそれが嬉しくてもっと仲良くなって、という好循環を微笑ましく見守る兄。


 その澄美怜すみれは、元々小学校低学年まではひどく内向的な子だった。ところが小学3年生のある『事件』をきっかけに変化が訪れる。以来、常に兄想いの優しい子になった。


 母が体が弱い為、家事をよく手伝う事もあって料理は特に得意だ。そのため朝から兄の弁当まで作っている。

 何か手伝う事が無いか、困り事は無いか、等いつも気にかけていて、風邪をひいて休めばずっと看病したがる程だ。


 兄の為ならどんな時でも甲斐甲斐しく行動する健気な女の子。そして、とても仲の良かった隣人の超美人お姉さんを追いかける様に、次第に可愛く、そして淑やかで美しくなっていった。


 その兄の深優人みゆとのちょっとした困り事、それは、この1才年下の妹・澄美怜すみれの言動が近年おかしくなって来ている事だ。

 中学に入ってから愛らしさだけでなく、非常に内向的だった性格まで少々朗らかになってきて、と言うと聞こえは良いが、何やら妙な所がチラホラと……


 そんな妹を見て今日も兄は思う。


 ……この子って本っ当に優しくて良い子で、最近は少し積極的でチョイお茶目さも加わって更に魅力的……だけならいいんだけど、う~ん……

 何かまるで俺専属のメイドか?! ってぐらい至れり尽くせりなんだよな。

 食事の用意に始まり、皿下げ、部屋の片付け、掃除、洗濯物は引出しに仕舞い、フロの着替えまで用意されそうになった時には流石に丁重に断ったが……。


 過ぎたるは何とか。さすがに気がひける今日この頃。もっともこうした言動は冗談混じりのシスコン・ブラコンがちょっと度を越しただけ、位に思う様にしている深優人みゆとだった。





◆◇◆

「お兄ちゃん、夕飯出来たよ~」

「今行くー」


 深優人みゆとは小学生の頃からかなり早熟タイプだった。どちらかと言えば本を読むのが好きなインドア派。


 少年期に夢中になるバトルもの等のコンテンツも人並み程度に見ていたが、それらに興味は薄く、音楽もクラシックが好き。


 尤もそれは隣人の幼馴染みの女の子がピアノを習っていたために関心が向いて、父親の大量のCDコレクションに手を付けた事がきっかけで詳しくなった。


 こんな感じに、よくあるアニメ主人公男子の様な超鈍感なタイプとは全く逆の性格である。洞察力も有り、それ故、色々分かってしまうのだ。


「お兄ちゃん勉強捗ってる? ちょっと教わりたい所があって。後で部屋に行っていい?」


「ああ、いいけど」


「じゃあ食後はエスプレッソにする? 勉強するなら眠気醒ましにもいいし」


 う……またしても世話焼きメイド……何か最近の澄美怜すみれのブラコン度は余りに……いや俺だって端から見れば充分シスコンだろうけど、どちらかと言えばまだ節度のあるシスコン……

 ま、自分で言うのも何だがムッツリシスコンとでも言うか、実に奥ゆかしいものだ……と思いたい。


 でも最近の澄美怜すみれは堂々と恋人か良妻の様な、そんな言動が目に付く感じで、兄としてはどう対応して良いやら戸惑うのであった。







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