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妹のままでいさせて
深宙 啓
現実世界ラブコメ
2024年12月06日
公開日
68,941文字
連載中
生来の謎めいた死への願望を持つ妹。それを抑える不思議な力を持つ兄に救われ続け、その淡い想いはやがて育ち、暴走し……。
時にコミカル、時にシリアスに描かれた、可愛くて、オタクで、少し変態で、そしてとても健気な妹の物語。
―――愛と感動の青春ものをお探しの方にぜひ。

<あらすじ>
妹が物心がついた時にはすでに存在していた謎の自害衝動。 それを抑えることができる不思議な力を持つ兄。 幼少期、常にその衝動に悩む妹はある日、誰の目も届かぬ間に身投げを図る。 それを寸前で見つけ、命を張って制した兄は二度とそうならぬよう生涯を貫く魂の約束を誓い、心を打たれた妹はそれを受け入れて約束を結ぶ。
以来、妹は兄のために生きる事を誓う。

だが兄は順調に妹を守り続けるも、中学1年のとある出来事から絶望を抱え込んでしまい、苦しみ続けていた。
それを知る妹は負担にならぬように明るく振舞いながら懸命に尽くして兄を支え、善き兄妹関係を続けていた。

そこへ兄を慕う存在がいよいよ恋のアプローチを図ろうとした時に、妹は初めて気づいた。
兄に恋人や結婚相手になりうる存在こそが、生涯見守り続けるという魂の約束を脅かすであろう事に。
妹は兄を慕うあまり自分の想いが禁断の恋と自認しつつも踏み出す決心をする。 

一方、誰と付き合おうとも妹をその不思議な力で守り続ける約束を絶対に破るつもりのない兄は、一時的な感情となりがちな恋愛の目で妹を見ることを避け、禁断の恋から遠ざかろうとし、妹に諦めさせるつもりで普通の恋に進もうとする。 

だが逃げれば追いたくなるのが恋。

妹は必死に兄を追うも、追われる程に妹の恋慕を遠ざける兄。 思い遣りと恋慕、隠した真の想い。
それらが交錯する二人に次々起こる運命の荒波に翻弄され、やがてとんでもない状況へと巻き込まれ……。

兄は妹を守り切れるのか、妹は死なずにその衝動を乗り越える事が出来るのか。



―――――この作品タイトル『妹のままでいさせて』
これが主人公のセリフとして作中5回現れますが5回ともその時々で異なる心の声となっていて、その違いをこの少女になったつもりで噛み締めてみて貰えたら。

※公募に出した時には妹の重さに『怖さすら覚えた』と審査員から言われたほど、メンヘラ少女かもしれません。

全話で文庫本1冊強程度。 完成済なので結末を大事にする方もご安心ください。

第1話 プロローグ





 もしも身近に一生を誓い合った唯一無二の人が居たとして。


 当然結ばれると信じて生きて来て。


 それがある日、意識した時に……


 そう、例えば今この瞬間、兄妹だったと知ったら……



 ―――その時、あなたはその想いを諦められますか?







◆◇◆


 いつもの朝。永遠園とわぞの家の温かい団欒が始まる。


「はい、お兄ちゃんの大好きなロイヤルミルクティー。今日は特別に茶葉多め、ミルクも特濃タイプだよ」


「それは嬉しいな。澄美怜すみれ、いつもありがと」


 そう言われて微笑みながら頷く妹。そして優しい眼差しで兄を見ながら想う。


 このはにかんだ笑顔がただ見たくて――――

 深く優しい人。そう書いて深優人みゆと。それが私の掛け替えのない兄の名。

 その名の通り、とってもとっても優しい人なのです。1歳年下の中3の私と、そして私より3歳年下・小6の蘭ちゃんをスッゴク可愛がってくれるのです。


「はい、パンが焼けたよ。あ、バターは塗っといたから。それとハイッ、ハチミツ、あ~、あとヨーグルトと食後のフルーツも出しとくね」


 極ありふれた収入世帯の一家。ありふれた朝食。ただ普通と違うのは、まるで子を溺愛する母のごとく甲斐甲斐しく兄の分まで給仕する妹達の存在。


 兄・深優人みゆとは自分でやるから、と遠慮気味だが妹達は意に介さずサービスする。それを微笑ましく見守る仲睦まじい父と母。その父母を含め五人で暮らす穏やかで、ややオタク系の家族だ。



「お姉ちゃんばっかズル~い! ハイ、らんからも。シナモンスパイス。ミルクティーにど―ぞ」


 小6の妹・らん。3年前の姉の生き写しと呼べる程似てる。姉のする事を何でも真似したがるブラコンかつシスコン少女だ。どちらかと言えばお姉ちゃんが好き過ぎて真似したがるのと、お姉ちゃんのライバル気取りで構われたくて兄に親切してる様でもある。


「全くお姉ちゃんの『お兄愛』は行き過ぎなんだから!」


「フフ。今さら何言ってるの? それに蘭ちゃんだってそうじゃん」


 クスッ、蘭ちゃんたら張り合っちゃってカワイイ。まあ確かに私のお兄愛はチョットね。……にしても……

『愛』って、何ですか?―――

 なーんてそれを求めて彷徨う少女の名作アニメがあるよね。私達も大好きな……。

 ともあれ、そんなの私も分かりませ~ん。お兄ちゃん、教えて下さい……なんちゃって。


 そうした妙な事をしばしば考えつつ、優しげで愛らしい笑顔を絶やさずに兄をぼぉっと見つめて食事をする澄美怜すみれ




 ……でも愛なんて、確かに分からない。―――だって私達、普通じゃないから。




「あの……お兄ちゃん、今日も大丈夫かな?」

「もちろん」


 遠慮がちに一緒に登校する約束を確認する。


 ……そう、私にとってこの人は、かなり『普通と違った意味』で特別な人なのです。

 だって、のです。



―――間違いなく、文字通りに。



 ああ、昨日もを少し見た。私はいずれあの夢に命を奪われると予感している。でも今はまだ、消えたくはないのです。消える訳にもいかないのです……



 そんな風に想いながら少し瞳を曇らせる澄美怜すみれ


 だからお兄ちゃん、いつかその日が来てしまう迄は、せめていつも私の事、見ていて貰えますか……

 そしてもし奇跡が起きて、消えずに済む道があるのなら、どうか神様、どんな目に遭ってもいいから教えてください。



 ぁ、ヤバ……また変な目で見てたの気付かれたかな……。お兄ちゃんは決して口には出さないケドこんな私の事、『ヘンタイ』 とかって思ってるに違いない。だってそんな目をしてる時がある。

 まぁ、別にいいけどね。いや、良くないか……フフフ。




   : + ゜゜ +: 。 .。: + ゜ ゜゜ +:。. 。




 それでもいつでもちゃんと見守り続けてくれる兄。そのお陰でこんな特殊な私でも『生きる事』を選べた。



 互いを大切にすると共に、絆を深めて―――。



 でも恋の季節が淡い想いのままを許さず、全てを変えて行ってしまう事に、この時の私達はまだ何も気付いていなかった。




   : + ゜゜ +: 。 .。: + ゜ ゜゜ +:。. 。




 これは、優しい兄と、そして少しオタクで可愛くて一途でアブノーマルな妹の、奇妙で深い愛の物語。









< continue to next time >






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