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天気図

「そんな馬鹿な・・・・・・」

 気象予報士のわたしはその日、自分の目を疑っていた。

 どう考えても、その天気図には不備があった。いや、不備があるとしか思えなかったのである。

 天気図には、“等圧線”という線が張りめぐらされている。この線は4ヘクトパスカルごとにひかれているのだ。そして、等圧線の間隔が狭ければ狭いほど風速が強いということになるのだが・・・・・・。

 それにしても今日の天気図の等圧線は異常であった。線と線の間隔がほとんどないに等しかったのである。

 これは異常気象としか思われない。


 わたしはフラフラする頭を抱えて報道局に電話をかけた。

「大変なことになった。いいですか、すぐに屋外での行動を禁止させてください。え、風速ですか。猛烈な風は優に85メートルを超えてくるでしょう。もはや一刻の猶予もありません」わたしは受話器を握りしめて言った。「電柱は倒れ、家屋は倒壊、トラックは横転、自動車は宙に舞うし、電車も脱線してします!」

 そこへ家内が外から戻ってきた。

「こんな時に、どこへ行っていたんだ!」

 わたしはつい妻に声を荒げてしまった。怪訝けげんな顔をして妻はテーブルの上になにやら小さな箱を置いた。

「どこへってあなた・・・・・・」あきれた顔で妻が言った。「ゆうべ酔っぱらって帰ってきたかと思ったら、天気図の上に夕飯の“イカ墨パスタ”をぶちまけちゃったでしょう。|一本一本がすの大変だったんですからね」

 妻がコップに水を浸してテーブルの箱と一緒にわたしに差し出した。

「ハイ、二日酔いの薬。・・・・・・だいじょうぶ?あなた顔色が悪いわよ」

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