目次
ブックマーク
応援する
4
コメント
シェア
通報
諜報員からの連絡

 月曜日、組織の本部に郵便物が届いた。

「隊長、園田そのだ隊員から郵便物が届いております」

「うむ。中身は何だ?」

「それが、タバコひと箱であります」

「タバコがか。何の意味だ」

「わかりません」

「なにか意味があるはずだ。しっかり考えろ!」

 ここは国家の諜報活動組織である。

 一週間前から、隊員の園田勝雄かつおには敵国の潜入任務に当たらせていた。敵に動きがあったら、なんらかの形で連絡をする手筈てはずになっていたのである。

 しかし、これはなんだろう。

「タバコ、タバコ・・・・・・シガレット・・・・・・もしかすると」

「なんだ!」

 隊長が色めき立つ。

「滋賀列島に爆弾を落とされる危険があるとか・・・・・・」

「そんな列島はない」

「・・・・・・ですよね。しかし、敵国は“人工地震兵器”を開発したはずです。必ず近いうちに使ってくると思われます」

「うむ、それがいつなのか。園田め!タバコだけじゃわからんぞ!」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 そうこうしているうちに、木曜日に大地震が発生した。市街地は完全に崩壊、交通機関も通信機能も麻痺状態となった。

 そこへ園田がほこりにまみれながらふらりと帰還してきた。いやに涼しい顔をして笑っている。

「隊長、お役にたてましたかね。ぼくのメッセージ」

「なんだと、さっぱりわからなかったぞ。あれは何だ」

 隊長は渋い顔をしている。

「え、せっかく事前にメッセージを送っておいたのに」

 園田はあきれ顔である。

「あのタバコのことですか」と伍長が訊く。

「そう、ちゃんと“水(曜日)過ぎに注意しましょう”て書いてあったろうに」

 隊長のカミナリが落ちた。

「わかるか!」

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?