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ファミコン

「だめよ。ゲームは30分だけって約束でしょう」

 1983年(昭和58年)任天堂から『ファミリーコンピュータ』が発売された。

 コンピュータとは言っても、ただのテレビゲーム機だ。しかし、これにより当時の子供達の遊びの形態が変わってしまったと言っても過言ではない。

「あと少し」

「だめよ。1日30分だけの約束でしょう」

「だけど、もう少しでクリアなんだよ」

「いいからやめなさい!」

 無情にも電源を切られてしまった。


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「あなたがあんな物を買い与えるからいけないのよ」

 妻が夫を責めた。

「だからって、いきなり電源を切ることないだろう」

「ああでもしないと、あの子は言うことを聞かないの」

「かわいそうになあ。すこしは子供の身になって考えろよ」

 かつてインベーダーゲームで100円玉を積み上げて遊んでいた経済学者の夫は、ファミコンがいかに経済的であるかということを力説した。たしかにゲームセンターに入り浸られることを考えれば、目の届く範囲で遊んでくれるのも親にとって安心ではある。

 だからと言って、親として子供に無尽蔵にテレビゲームをやらせておくわけには行かないのだ。

 妻は言った。

「ちょっと浩ひろし、こっちに来なさい」

「なに?」

「いいから・・・・・・」


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「あと少し」

「だめ。30分だけの約束でしょう」

「もう少しでボスを倒せるから」

「ひどいやママ。ちょっとだけ貸してっていうから使わせてあげたのに」

「いいじゃない、ケチ!」

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