「いい
「あたしってナンパされやすいのかしら。どうして?」
「いつも道の隅をおっとり歩いているでしょ。それでいていつもキョロキョロしているし」
「だって、なにか面白いものがあるかもしれないじゃない」
「それにその地味な服」
恵梨香は麻由の黒いスカートに白いブラウス姿を眺める。
「まじめな女子大生っていう感じ・・・・・・だけど、靴のヒールがすり減ってる」
「男の子って、そんなところを見るの?」
「そうよ。彼氏がいなさそうで、ちょっとだらしなさそうな女の子は格好の餌食だよ」
「そうかなあ。恵梨香の方がガンガンにナンパされそうに見えるけど」
「そう思うでしょ。あたしみたいな派手な女子は、最初から彼氏がいると思われて手を出して来ないんだよ」
「ふうん」
「ちょっと、そこの彼女」
その時、若い男の声がした。
「こっちに来ない?」
振り向くと、若者が二人、恵梨香と麻由の方を見ている。
「どうする?」
麻由が恵梨香の顔を見る。
「ああいうのタイプなの?行ってもいいけど、最初は連絡先を教えるぐらいにしておきなよ」
「わかった」
「絶対最後まで行ったらだめだからね。よく相手を見極めることが大切なんだから」
「あのう。ごちゃごちゃ言ってないでこっちに来たら」
「うるさいわね。放っといてよ!」
「いいけど・・・・・・この船そろそろ沈むよ。救命ボートに移った方がいいんじゃないかなあ。ぼくたち嵐で難破してんだからさ」